異世界情報収集生活

スカーレット

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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

150.呆れるほどに古典的

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「何処で何の毒?」

『メイド長らしき部屋です。シフト帳が入った引き出しに塗布されていました。皮膚から侵入するタイプの麻痺毒です。』

手元でガチャリと音を鳴らしてドアが開かれる。鍵を内側から同じようにかけて、端から全ての書類目を通す。

「こっちと全く同じ毒だね。同じ犯人かは分かんないけど、確実に同じグループだ。」

『サンプルは取りましたので、ニアに解析を頼みました。』

「ニアにサンプルと同じ毒を量産するように頼んでくれる?解毒薬の試験用に少し欲しい。それで一心、思った以上に殿下が見下されいてる。」

『こちらでも隠すことさえせずに見下す発言がありました。ため息すら出ない状況です。』

「こっちも途中で食器棚が並んでる部屋に入ったんだけれどね?そこにある食器類の中で、爆弾様専用と言う名の毒食器棚があった。まったくふざけた話だよ。」

『では馬鹿共はまとめて締め上げるとして、書類整理が終わり次第落ち合いましょう。』

「うん。じゃあね。」

電話を切り、もう一度当たりを見渡すと本棚に違和感を見つける。

(…?)

6段の本棚の中、下の方にある本にだけブックカバーが付いている。

適当に一冊取り出して中を見れば、元の世界ならば確実に年齢規制が入るだろう絵が広がる。

(……がっつり私物を置くんじゃねぇええええ!!!)

子供に見せられないブツを置いている馬鹿の名前を頭にメモし、本を元に戻す。

(まぁ、これで本命の仕掛けを見逃すほど私は甘くないけどね。)

問題の本の3つ右にある本をきっちり45度で傾ける。

こんな古典であるあるな方法を取る奴がまさか異世界にいるとは思わなかったが、どうやら予想通り隠し部屋が隠れていたらしい。

(ここ一階だからまさかとは思ったけれどさ…………。まだ使う奴いたんだ、これ)

何とも形容しがたい感情に襲われながら、これまたテンプレートの階段を下りる。

念のために扉を閉め、遠くの方に置かれているらしいランプの光を頼りに進んでいく。

地下室に置かれていたのは十本ほどの試験管と無数のビーカー。

中に入っている液体はどれもこれも毒。

この部屋一帯の空気はもとより、壁に染み付いた毒の匂いに顔が歪む。

(これは麻痺毒……これは媚薬……これは…)

吸い過ぎないように警戒しつつ匂いで毒を確認し、引き出しに塗られていた毒と同じものを探していく。

しかし、なんとなく麻痺毒が多すぎな気がする。

この国で使われる主流の毒は麻痺毒ではなく、即効性の弱い毒。
主に苦しんでいる様を自分の目で見るために茶会などで盛ることが多いが、ここにある麻痺毒ではそういったことが出来ない。

(この系統の毒は確か、魔力の流れを滞らせるものじゃなかったか?即効性の強いものなら対人戦で効果を発揮するものの、遅効性のうえ蓄積して効果を得られるものばかり……。)

「!…これだな。」

匂いが全く同じ毒を見つけ、一応自分の腕で確認をする。

(塗った後の匂いも同じ…痺れてきたから麻痺毒で間違いないね。)

辺りを調べて量が管理されていないことを確認し、回収する。どうやらここの管理人はめんどくさがりらしい。

もうここに用はないが、直感のままに採っておいた方がよさそうな毒を回収しておこう。
何かの役には立つだろうし、無ければ無いで耐性を付ければいい。

(それにこれだけは必須………らしいな。)

今の私には全く分からないが、どうやらこの毒は必要らしい。

直感がはたらき最初に手に取った毒は、一定量摂取するとじわりじわりと魔力の流れを阻害する物。


この毒が、誰かに盛られている。


この毒をくらって一番効果があるのは、さて誰か。

そしてその毒で苦しみ対象が死亡した場合、誰が一番得をするのか。



………



(ひとまず、次だ。)

嫌な感じを飲み込んで、部屋を出た。
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