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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
105.到着
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報告を聞きながら精霊妃小鳥美としての表情や口調に移行して、警戒を強める。
王城の門番に一度馬車を止められて、簡単な検査を受ける。
同性の騎士にポスポス叩かれて、薬の持ち込みがないか聞かれたくらいかな?
「魔術具の持ち込みはありませんね?では……」
「いえ、これ魔術具です。」
なんとか普通に一心を魔術具呼びして、騎士の方へ押し出す。
「……?ご冗談を。」
「いえ、本当に。一心、疑似皮膚外して。」
「かしこまりました。」
ズルリと皮膚がずれて出てきたのは、金属と大量の細いコード。
彼らにとっては見慣れないものだろうが、ひとまず人外という事は伝わったらしい。
「?!……?!」
「………持ち込みたいのですが、許可を頂けませんか?」
静寂が落ちた場に、声を一滴落とす。静かに響き渡った声は水面が広がっていくように騎士を正気に戻し、騎士達から発せられる動揺と命令する声があたりに響いた。貴族の騎士らしく、怒号ではなかったけどね。
「青の騎士団員を呼んで来い!」
「いや、精霊妃様に関することだ。青の騎士団長を!」
「急げ!」
バタバタと動く周囲をよそに、ゆったりと歩いてきたのは一人の老人。
(………………?たしか公爵のどっちかだよな?)
うろ覚えだが書類で見覚えのある顔で、何をしに来たのか分からない。よく見れば後ろにヤドゥールがいる。
「団長!」
私の検査をしていた女性騎士が、背筋をビシッと伸ばして声を上げた。
「精霊妃様の検査で戸惑うと思ってな。先に事情の説明に来たつもりが、遅くなったようだ。こちらで引き取ろう。」
「はっ!ありがとうございます。しかし、精霊妃様が持ち込み許可を申請している魔術具はいかがいたしましょう。」
「それについては、私の責任で持ち込む。精霊妃様を待たせるわけにはいかぬのでな、早く頼むぞ。」
「はっ!ではこちらの書類に署名をお願いいたします。」
見知らぬ老人は、やはり公爵のどちらかのようだ。そうでなければ、危険物を個人の責任で持ち込み許可を出すはずがない。……まぁ、個人と言う名の家名だろうが。
正装の格好で老執事を従えて署名をした老人は、署名を終えるやいなやこちらに来た。
「ご挨拶が大幅に遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。セルバ家当主を務めております、オガリス=セルバと申します。どうぞオガリスと名でお呼びください、精霊妃様。」
「お久しぶりでございます、精霊妃様。ヤドゥール=ガディアでございます。先日は私の部下が大変失礼いたしました。」
そう言って、膝を折った二人。
ヤドゥールが昨夜ぶりとか言ったらどうしようと思っていたが、さすがに貴族として対応ができていたようで一安心だ。
そんなことを思っている間にもザワザワと騒ぐ辺りを丸っと無視して、微笑む。
「ヤドゥール様、お久しぶりですね。まだまだ貴族の規則すら知らぬ小娘ですが、よろしくお願いしますわ、オガリス様。」
「異世界より参られたと聞きました。それならば致し方ないかと存じます。これから学ぶ姿勢が今は何よりも大事なのです。」
そう言ってオガリスは一度区切って、偽精霊妃に公爵が膝を折ったと煩い羽虫を睨み言い放つ。
「異世界より我が世界の為来てくださった精霊妃様に、貴族の規則を求める方がおかしなことですから。右も左も知らぬ赤子に、貴族の規則がなっていないと騒ぐ輩はこの国におりませぬ。」
…………うっわぁ。言い切ったぞこのオジサマ。
まったく関係がないならかっこいいと思ったけど、噂を利用して敵を屠りたい私からすると……ねぇ?
「マスター。お待たせいたしました。」
「お帰り一心。持ち込み許可出たから、行きましょ?」
「かしこまりました。では、僭越ながら私がエスコートをさせていただきます。」
「フフッ。お願いね、一心。オガリス様、案内をしていただけますか?」
「もとよりそのつもりでございます。では、どうぞこちらへ。」
そう言ってようやく一心と共に王城に入ることができた。
(…………………………。)
シレッと顔パスで入れたウィール様と精霊王達がちょっとだけ羨ましくなった。
(うちの息子いい子よ?優秀で有能だよ?………入れてくれたっていいじゃん……。)
王城の門番に一度馬車を止められて、簡単な検査を受ける。
同性の騎士にポスポス叩かれて、薬の持ち込みがないか聞かれたくらいかな?
「魔術具の持ち込みはありませんね?では……」
「いえ、これ魔術具です。」
なんとか普通に一心を魔術具呼びして、騎士の方へ押し出す。
「……?ご冗談を。」
「いえ、本当に。一心、疑似皮膚外して。」
「かしこまりました。」
ズルリと皮膚がずれて出てきたのは、金属と大量の細いコード。
彼らにとっては見慣れないものだろうが、ひとまず人外という事は伝わったらしい。
「?!……?!」
「………持ち込みたいのですが、許可を頂けませんか?」
静寂が落ちた場に、声を一滴落とす。静かに響き渡った声は水面が広がっていくように騎士を正気に戻し、騎士達から発せられる動揺と命令する声があたりに響いた。貴族の騎士らしく、怒号ではなかったけどね。
「青の騎士団員を呼んで来い!」
「いや、精霊妃様に関することだ。青の騎士団長を!」
「急げ!」
バタバタと動く周囲をよそに、ゆったりと歩いてきたのは一人の老人。
(………………?たしか公爵のどっちかだよな?)
うろ覚えだが書類で見覚えのある顔で、何をしに来たのか分からない。よく見れば後ろにヤドゥールがいる。
「団長!」
私の検査をしていた女性騎士が、背筋をビシッと伸ばして声を上げた。
「精霊妃様の検査で戸惑うと思ってな。先に事情の説明に来たつもりが、遅くなったようだ。こちらで引き取ろう。」
「はっ!ありがとうございます。しかし、精霊妃様が持ち込み許可を申請している魔術具はいかがいたしましょう。」
「それについては、私の責任で持ち込む。精霊妃様を待たせるわけにはいかぬのでな、早く頼むぞ。」
「はっ!ではこちらの書類に署名をお願いいたします。」
見知らぬ老人は、やはり公爵のどちらかのようだ。そうでなければ、危険物を個人の責任で持ち込み許可を出すはずがない。……まぁ、個人と言う名の家名だろうが。
正装の格好で老執事を従えて署名をした老人は、署名を終えるやいなやこちらに来た。
「ご挨拶が大幅に遅れてしまい、大変申し訳ございませんでした。セルバ家当主を務めております、オガリス=セルバと申します。どうぞオガリスと名でお呼びください、精霊妃様。」
「お久しぶりでございます、精霊妃様。ヤドゥール=ガディアでございます。先日は私の部下が大変失礼いたしました。」
そう言って、膝を折った二人。
ヤドゥールが昨夜ぶりとか言ったらどうしようと思っていたが、さすがに貴族として対応ができていたようで一安心だ。
そんなことを思っている間にもザワザワと騒ぐ辺りを丸っと無視して、微笑む。
「ヤドゥール様、お久しぶりですね。まだまだ貴族の規則すら知らぬ小娘ですが、よろしくお願いしますわ、オガリス様。」
「異世界より参られたと聞きました。それならば致し方ないかと存じます。これから学ぶ姿勢が今は何よりも大事なのです。」
そう言ってオガリスは一度区切って、偽精霊妃に公爵が膝を折ったと煩い羽虫を睨み言い放つ。
「異世界より我が世界の為来てくださった精霊妃様に、貴族の規則を求める方がおかしなことですから。右も左も知らぬ赤子に、貴族の規則がなっていないと騒ぐ輩はこの国におりませぬ。」
…………うっわぁ。言い切ったぞこのオジサマ。
まったく関係がないならかっこいいと思ったけど、噂を利用して敵を屠りたい私からすると……ねぇ?
「マスター。お待たせいたしました。」
「お帰り一心。持ち込み許可出たから、行きましょ?」
「かしこまりました。では、僭越ながら私がエスコートをさせていただきます。」
「フフッ。お願いね、一心。オガリス様、案内をしていただけますか?」
「もとよりそのつもりでございます。では、どうぞこちらへ。」
そう言ってようやく一心と共に王城に入ることができた。
(…………………………。)
シレッと顔パスで入れたウィール様と精霊王達がちょっとだけ羨ましくなった。
(うちの息子いい子よ?優秀で有能だよ?………入れてくれたっていいじゃん……。)
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