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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
69.異世界人の差別
しおりを挟む「ガストロ陛下、私はてっきりこの場にいる者だけでの小さな夕食会かと思っていたのですが、どうやら違ったようですね。一心、私が気付かない内に客が他にいることを言われていたかしら?」
「いいえ、そのようなことは仰っておりませんでした。」
一心がきっぱりと言い切ったことで、神様もこちらが言いたいことに気付いたようだ。
「ガストロ国王、貴方は他国からの評価も高く賢王と言われている。そんな貴方がこの状況を他の貴族が知った時、どう思うか予想できないとは言わせないよ?」
「そ、それは………。」
ガストロ陛下が口ごもると、すかさずカリストロ殿下が割って入る。
「そのような意図は決してございません。我らの非礼をわびるための夕食会でございます。」
「それをいったい何人の貴族が信じるでしょうか?」
「っ…………。」
(保護者・庇護者との夕食会に、分かりやすいエスコート。これらは全て婚約者に対して行う事であり、間違っても自分よりも身分が上の立場の人に行うことではない。)
国王と王妃と後ろ盾のない王太子。こちらは精霊妃である私と、私の後ろ盾であるウィール様と神様。
神様は他の貴族には認知されていないから、私の側近として見られる。
騎士団長は護衛として連れている以上、客には入らない。しかし、両者とも王太子の側近と認知されている。
これらの事から、ほぼ確実に今回のこの夕食会は王太子の今後に関するものだと思われるだろう。
主に、私と王太子の婚約についての相談会といった感じだろうね。
互いの側近と互いの後ろ盾が揃って、保護者もいる。私の婚約は言わずもがなだが、カリストロ殿下も婚約者候補はいるが婚約者はいない。
どう転んだって、これしか噂候補が無い。
「それで?私を王太子の後ろ盾にするために婚約者に据えて、他の貴族の盾にするとともに精霊の力を得る。……こんなところかしら?」
フフッと笑えば、罰が悪そうに目を逸らしたのは青の騎士団長。
情報屋として恩を売られたことから、罪悪感でも湧いたか?
「王妃を呼んだのは誠意を見せるため……と、見せかけてこちらを納得させること。それに加えて噂の候補を絞るため。本当に今回の件だけ話すのであれば、彼女は必要ない。後で共有すればいいだけだからね。……ああ、言い訳の内容は私と話をしたい、でしたっけ?」
武器でもある扇で口元を隠し、国王を見据える。
「ええ、妻がぜひ精霊妃様とお話しして、謝罪の意を見せたいと。」
「つまり、精霊妃よりも一国の王妃を優先したという事ですね。」
「ぁ……。」
黒いニッコリ笑顔でウィール様と神様が追い詰めていく。
「大陸の守護者たる精霊妃を一国の王妃と比べられては困るよ?それとも異世界人だからと見下していたのかな?君はどう思う?」
「それ以外に言い訳のしようがないんだよ。ああ、異世界人ごときに気付かれないと思った?」
「精霊妃として選ぶ人間が、馬鹿なはずないのにね。それとも僕ら精霊も見下していたのかな?君の目の前で加護を奪った人間がいたはずなんだけど。」
「目の前で効果がある物ではないから、実感がないのかもね。精霊は人間を生かしているというのに、ここまで人間が愚かになっていたとはね。人間がこんな状態なら、精霊達の加護を受け取る価値すらないかもしれないね。」
滅ぼすことも視野に最高神様に報告しておくねと、私の方を向いて言った神様。
わぁーおとってもいい笑顔。
「お願いします。」
こちらもいい笑顔で答えて、ゆっくりと振り向く。
さて、息子に色目を使う馬鹿も頭を冷やしてあげないとね。
「さて王妃様?」
ビクッとわずかに肩を揺らした王妃様。それでも、手は決して緩めない。
「異世界人であり精霊妃でない一心なら誘拐しても問題ない、なんて考えてないですよね?」
「そのようなことはございません!」
「そうそう王妃様。」
悲鳴に近い声にわざとかぶせ気味に言えば、足音を立てないように後ろに下がる王妃様。
「一心と私は、とても耳がいいんですよ!例えば……隣の部屋に男の人が大勢いることも分かってしまうんですよ~。…………ああ。後国王と話している間に、貴方が、一心の行動を調べ上げて誘拐してでも連れてくるように指示したことも、しっかり聞こえました。」
今度こそ絶句して佇む王妃様。その姿に笑みを深める。
(一拍でも間をあけた事。それが、何よりの証拠。でも、ギャラリーのためにもう少し大騒ぎしてもらうとしよう。)
ここからは当事者である愛しい息子に譲る。
「……………………。」
私よりも怒りが大きいみたいだしね☆
マスターである私からすれば、黙りこくっている一心ほど怖いものはないよ。
さぁて、お手並み拝見かな。
王族の皆様の、ね。
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