異世界情報収集生活

スカーレット

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異世界 阿呆の国編

17.精霊王達

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会議室に人数分の椅子を用意し、互いに自己紹介をする。

「改めて私はこの家の主、異世界人の千利だ。隣に控えるのは一心、ニア。どちらも私が元の世界にいるときに作成した人工知能だ。」

名前を呼ばれたと同時に軽く礼をする二人。

「堅苦しいのは不要じゃ。我々精霊は自然そのもの。堅苦しいマナーや礼儀は、人の子が勝手に作ったものじゃ。それにわしらは、地球にいたころのありのままの姫を知っているからのう。今更じゃよ。」

バレてら。じゃあ、いいか。

「ぶふっ。ば、バレてますよマスター。」

「笑うな一心。分かったよ。ったく調子狂うな。」

「ふふっ。着飾らない姫が一番よ。私は地の精霊王、主に土を使った魔法を使えるわ。これからよろしくね。」

そういったのは茶髪に茶色の目を持った美女。淑女、という言葉がぴったりな言動をしている。


「マスターとは反対のような人物像ですね。」

「……ニア、言うな。」

「姫は姫の良さがある、気にするな。私は水の精霊王だ。」
水の精霊王は水色の髪に水色の目。冷たそうに見えるが、実際どうなのだろう。

「僕が四大しだいの風の精霊王だよ!よろしくね、姫様!」
いい匂いがする~と、緑の髪に緑の目を持つ少年が言う。唯一の少年なんだな。

「しだい?四大とは何だ。」
相も変わらず抱き着いてくる風の精霊王をあやしながら?質問する。

……胸に布を巻いているから、柔らかくはないぞ。

「姫、『四大』は特に力が強い火、水、風、地の精霊王のことをさすんだ。私がその一人、火の精霊王だな。四大一人で他の精霊王二人分ぐらい力がある。」

「なるほど、覚えることが山積みだな。」

彼女はまさに女性騎士!といった感じだ。燃えるような赤い髪と目をしている。

「そうですぞ、精霊妃としての最初の役目が迫っておりますゆえ、すぐにでも覚えていただかねばいけません。改めて、森の精霊王じゃ。よろしくお願い申し上げる。」
教育係になるのだろう老人は、青々しい大樹の幹の様な不思議な色をした髪と目を持っていた。

私は、この世界のことをほとんど知らない。
だからこそ、努力と知識が大量に必要だ。逃げている暇などない。

「こちらこそ頼む、森の精霊王。精一杯努力をするので、厳しく頼む。」

紫の髪にオレンジ色の目をした少し幼い女性が、感動したように口を開いた。

「その意気ですわ姫様!わらわは九人いる中の、四大以外の精霊王で構成された五精霊の一人、雷の精霊王ですわ!わらわも覚えることがまだまだ多くあるのですので、わらわも一緒に努力いたしますわ。」

「同じく五精霊の一人、氷の精霊王だ。よろしく頼む。」
水の精霊王の髪や目よりも少し銀色がかかった色の髪と目に、鋭くとがった雰囲気。………警戒、ではなさそうだ。



えぇっと風の精霊王君?なぜ首にスリスリしてくるんでしょうか?
ああ、そうですか。いい匂いがそこからしますか。
いや、まぁ知っているけれども。私も鼻が利くんだよ。

「私が光の精霊王です。光の魔法の他に、身体に関わる回復や強化系の魔法を使えます。どうぞよろしく、我らが姫様。」

「俺が闇の精霊王だ。闇と精神に関わる魔法が使える。よろしく頼む。」

光の精霊は、礼儀正しい好青年といった感じだろう。
闇の精霊は、ぶっきらぼうな印象を受ける。……一心と気が合うんじゃないか。

明るい金髪金目に、暗い黒髪黒目。まさに反対、だな。





長い付き合いになりそうな彼らには、話しておこう。

「皆、よろしく頼む。知っているとは思ったんだか、一応言っておく。私は普段男装をしている。元の世界では、『隊長』として動くために、この世界では純潔を守るためだ。だから、直す気はないことを分かってほしい。また、一心やニアを家族として認めない奴と仲良くする気はない。これは譲れない。」

「マスター…………はぁ。上官、あなたの愛弟子はあなたによく似た馬鹿になりましたよ。」

「嬉しいです、マスター。ただ、対国の戦争はしないでくださいね。」

「それは相手の対応次第だよ、ニア。了承はできないな~。」

ニッコリ笑顔で言っておく。やだなぁ~冗談だよ冗談。1%はね。

「っていうか一心!一心上官死んでないから。あのクソじじいは生きてるよ、嫌なことにね。」
それを遮りピコン!とこれまた聞き覚えのある電子音が鳴る。

まるで異論するようなタイミングだな。それよりもこれは確かメールの……

「……マスター、上官からメールです。『死んでなくて悪かったな、バカ弟子。今何処いやがる1分以内に返事出せ。』だそうです……。」


ゾクッとしたのは私か、一心か。


……………………………
「……………異世界に来ましたと、メールを頼む一心……………。」







バケモノである上官に、逆らってはいけない。

我が隊の暗黙のルールに従い、最優先でメールを出してもらった。
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