上 下
3 / 30

3話

しおりを挟む
今日も大森原 花子を警戒しながら帰ろうとしたその時、まさかの人物に話しかけられる。

「小山くんは今帰り?」

「あ、天野さん。そうだけど」 

「小山くんて南口方向だよね? だったらさ、一緒に帰らない?」

「え? 天野さんには足立くんがいるでしょ?」

「あぁ、隼人は部活だから」

「いやいや、彼氏がいるんだから他の男子と帰るのはまずいでしょ」

「大丈夫大丈夫、隼人には私から言っておくから」

どういうことだ? マドンナがなぜ俺に…

「足立くんには誤解のないようにちゃんと言ってね。それが条件」

「小山くんて用心深いんだね。良いよ、隼人にはちゃんと言っとく」

そんなこんなで何故か俺は天野めぐみと一緒に帰ることになった。

学年でも有名な女子と一緒に校内を歩くと、やはり視線が集まる。俺だって謎だよ!


「小山くんは親の都合でこっちに来たんだっけ? どこから来たの?」

「○○○県」

「へぇ、そうなんだ~。小山くん頭良いんだね、進学校だったの?」

「一応そうだったけど、そんなに有名なところじゃないよ」

「でもすごいじゃん。うちの高校もそこまでレベル低くないのに」

「まぁ、普通にやってるだけだよ」

「ふーん。そっか~」

他愛ない会話をしながら帰っているその時、道の横に大森原さんが立っているのが目に入る。

これまで俺が誰かと帰っている時、それを確認するとそのまま一人で下校するだけなのだが今日は少し違った。

それまで俺と顔を合わせていた天野めぐみの視線がはずれ、大森原 花子の方へ向く。

それからすれ違うまでの間、長い沈黙…。

大森原 花子の方を向くと、蛇に睨まれた蛙のように立ち尽くしていた。

「…あぁ、ごめんね。ボーっとしちゃってた」沈黙が解け、天野めぐみが髪をかき分けながら話し始める

「ううん、そういう時あるよね…」

結局俺はどうして天野めぐみと帰ってるんだろう?

あれこれ考えながら2人で帰っているうちに、うちの生徒もすっかり視界からいなくなっていた。そんな時

「ねぇ、小山くん」

「なに?」

「私が付き合ってって言ったら、付き合ってくれる?」

「………。 はぃ!?」

「小山くんが良かったら、私と付き合ってみない?」

「いやいや、だから君には足立くんが…」

「君が付き合ってくれるんだったら、隼人とはすぐに別れるよ」

「何を…」

「私、小山くんみたいな少し幸薄そうな顔が好みなの」

何を言ってるのかわからない。恋人というのは好きな人同士がなるものじゃないのか?ていうか何だ?この学校の女子は不幸体質の男が好みな趣向でもあんのか?

まぁ、そんな事は置いといてこの言い方…、もはや足立隼人は天野めぐみの中で彼氏じゃないということか…?

それか、そもそもそういう考えで男と一緒にいないってこと…

「更にいうと、小山くん成績以外も頭が良いから将来出世しそうだし~」

天野めぐみの目に恐怖を感じる


『天野めぐみは危険らしいぞ』


昇の言葉が脳裏をよぎる。俺は必死にこの小悪魔の逆鱗に触れないような言葉を探す

「う~ん、ごめん。この前引っ越してきたばっかで、今は何も考えられないかなー。今は学校に行って帰るだけでも気苦労が絶えないからね」

「……。 まぁ、そうだよね~。まだこっちにきて全然経ってないもんね、いきなり混乱させるような事言ってごめんね。」

「いや、いいんだ…」

「じゃあ、私はこっちだから。気が変わったらいつでも言ってね♪」

天野めぐみはにっこりと笑って帰っていった。


俺は大きなため息をつき、天を仰ぐ。

まさか、俺にターゲットが向くとは思ってもみなかった。

この未曾有の危機に俺は居ても立っても居られずスマホを取り出し、昇とユイにラインでSOSを出したのだった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...