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5 勇気を出した所で日常は変わらない

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 ゲイっていったいどれくらいいるのか知ろうと思っても分かるわけがない。

 大学内で今まで気にもしていなかった他人の性的趣向に目を向けてみたが、いつも一緒にいる男×男がいるなと思った所で友人と恋人の差なんてわかる訳もなく、言うならば男女の関係ですら謎なのだ。

「え? マジで? 付き合ったの?」

 空き時間に行く構内カフェのテラス席で、一緒になった夕凪とお茶していたら、不意にブッ込んで来た、前回の飲みの席で一緒した知的女子が相手だと言う。

「おまえ消えるから」

 あーそれね。あんまり記憶に無いけど、ひとりがつまんなかったのは覚えている。

「っていうか最初に消えたの蓮池だろ?」

「蓮池もあの時の子と付き合ってるって」

 は? そんな簡単なもの? たまたま隣の席になって、誘って、飲んで、話して、それで数日後に付き合う話になるもの? 簡単すぎて俺には考えられない。

「といっても蓮池の場合は、何人目かの彼女だけどね」

「複数?」

 そう言うと夕凪が頷いた。

「蓮池は病気。でも男としての春を満喫中っていうか、一回はやってみたいと思うヤツが多いと思うけど、樋口は潔癖っぽもんな?」

「ううう、まぁ、複数っていう選択肢は俺にはないけど。夕凪のはお祝いするよ? すごく話、合ってたっぽいし」

 何の話だか真剣な表情で討論してたの覚えている。

「あーあれ? 残念ながら枝豆の茹で方についてだけど?」

 は? そんな話? ああ、でも、そんな話でも打ち解けられるかどうかは相性だとも思うし。他人には分からない良さがあるから違いがあるのだし。

「あーそう、何でも良いけど良かったね。っていうか、その彼女と蓮池の彼女と友人だろ? やりにくくないの?」

「別に。蓮池の彼女になるような女は、女の方もある程度分かってるんだよ。俺にはわからないけどね」

 なるほど。お互いが割り切っているのなら問題はない。

「五條は?」

 あの日の五條の行方は知らない。というか知りたくなくて早く帰ったんだと思う。

「五條? 酒強いからな、先に女酔わせてタクシーに突っ込んでたけど?」

「ぶれないね」

 と言っておく。内心は安堵のため息を吐いたけど、それは秘密。

「おまえが置いて行ったと愚痴ってたけど?」

「あーね、でもさ、俺、人気ないし。話し相手いなくて飲みすぎて気分悪かったし」

 言い訳はいくらでも出来る。

「五條の隣にいた子、どう? 樋口のこと気になるらしいけど?」

「え? 俺? っていうか顔も覚えてないけど」

「は? マジで? 樋口ってそういう所あるよな」

 え? そういう所ってどんな所?

「そういう、俺は関係ないですって線引く所? 自分とは合わないって判断すると、存在ごと切るだろ?」

「えーそうかな? 自覚ないけど」

 うわーバレてる。夕凪はよく見ている。存在切ると言うか、必要ないでしょって割り切っているというか。特に女との距離は遠いと思う。たとえば課題とか一緒になったりしたら受け入れるけど、終われば距離を取る。誰かの友人だったら、その場では仲良くするけど、個別に合ったら挨拶程度で終わらせる。

 だけど夕凪の急なこの話はどうなの? 彼女できたから、男友達とは距離を取りたいっていうフラグ? それとも今まで我慢してましたっていうアピール? 怖いんですけど。
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