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3章
22 新しい生活 (終)
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元気になったニアと共に隣国へ渡った。ニアは2歳で異世界へ渡ったので、その容姿を知るものはほとんどいない。
志津木の得た聖気も、ニアを抱いた時に離れたらしい。
聖域で薬草を摘み、山を下りて隣国へ渡る。隣国の国境を越えられなくて困った所を助けてくれたのはレイモンドだ。国境脇でキャンプをする者たちに紛れて一夜を明かす間に、ニアが助けの文を出したらしい。鳥に届けさせるのがこの世界の貴族間の文通方法だ。
偽造の身分証と、餞別だと資金をレイモンドの使いから渡された。有り難く受け取り、隣国へ入った。薬草を売る為に商人ギルドに登録し、ついでに冒険者ギルドにも登録した。本格的に異世界だと呟いた志津木に、ニアは微笑みで返してくれる。一緒に行き来した世界だ。気持ちを汲んでもらえる相手がツガイというのは、異世界にひとりぼっちだという意味もなく襲う孤独が薄らいで良い。
長く、長く旅をした。たくさんの薬草を刈り、魔獣を狩り、資金を稼ぎながら、宿に泊まり、それぞれの国の名物を食して巡る旅は楽しかった。
人という事は隠し、マントのフードを取る事は出来なかったが、ニアがいればそれで良かった。
幾つかの国を越え、人の情報を得ながら向かった先に、人と獣人が共に暮らす場所があった。それは大陸の南から船で数ヶ月旅した先にあった。アダマス国から遥か遠く。きっともう戻れない場所。それでも志津木とニアが何も隠さずに生きられる場所。
「遠かったね」
ニアが遠くを見て呟く。
志津木はニアの肩に手を置き、頷いた。
たどり着いた街で住民登録を済ませ、家を買った。庭付きの一軒家で、さほど広くはない。でもふたりなら狭い方がくっついていられるから良いねと、笑い合った。
「ニア」
名を呼んで、両手を引いて向かい合わせて立ち、両手を繋いだまま、志津木は片膝をつく。
「愛してる、ニア、俺のツガイになってください」
真摯にニアを見つめて見上げていると、ブワッとニアの目に涙が浮かぶ。
「いいの? ——……ほんとに僕でいいの?」
立ち上がってニアを抱きしめる。ヒクヒク泣き続けるニアを腕の中に収めて髪を撫で、可愛い反応に胸が軋む。
「ニアの側にいさせて欲しい。お互いの命が尽きるまで、一緒に生きて行こう」
「うん、うん、ありがとう、ヨウ、嬉しい、すっごく嬉しい」
キスをして、見つめ合う。
ニアの涙を唇で拭い、くすぐったいと言うニアの手を引く。
家の中は買った家具が入れられたばかりだ。カーテンはまだ付けていない。食器や細かい物も箱に入ったまま。でもベッドはある。布団はまだ出していないけど、愛し合うにはスペースがあれば良い。小さいけど浴槽のある風呂もある。一緒に入りたいから浴槽のある家を選んだ。
「抱かせて、ニア、お風呂も一緒に入ろう?」
ドアを開けて一緒に潜った。
ほんのり頬を赤らめたニアが可愛い。
もう長く一緒にいる筈なのに、ニアは最初にテレて見せる。初々しい表情は志津木を煽るだけなのだが——。
「可愛いニア、愛してる」
「うん、僕も、愛してる」
見つめ合って、キスをする。
新しい生きる場所。
幸せにすると誓う。
おわり
◇◇◇
長くお付き合い頂き、ありがとうございました。感謝しています。
志津木の得た聖気も、ニアを抱いた時に離れたらしい。
聖域で薬草を摘み、山を下りて隣国へ渡る。隣国の国境を越えられなくて困った所を助けてくれたのはレイモンドだ。国境脇でキャンプをする者たちに紛れて一夜を明かす間に、ニアが助けの文を出したらしい。鳥に届けさせるのがこの世界の貴族間の文通方法だ。
偽造の身分証と、餞別だと資金をレイモンドの使いから渡された。有り難く受け取り、隣国へ入った。薬草を売る為に商人ギルドに登録し、ついでに冒険者ギルドにも登録した。本格的に異世界だと呟いた志津木に、ニアは微笑みで返してくれる。一緒に行き来した世界だ。気持ちを汲んでもらえる相手がツガイというのは、異世界にひとりぼっちだという意味もなく襲う孤独が薄らいで良い。
長く、長く旅をした。たくさんの薬草を刈り、魔獣を狩り、資金を稼ぎながら、宿に泊まり、それぞれの国の名物を食して巡る旅は楽しかった。
人という事は隠し、マントのフードを取る事は出来なかったが、ニアがいればそれで良かった。
幾つかの国を越え、人の情報を得ながら向かった先に、人と獣人が共に暮らす場所があった。それは大陸の南から船で数ヶ月旅した先にあった。アダマス国から遥か遠く。きっともう戻れない場所。それでも志津木とニアが何も隠さずに生きられる場所。
「遠かったね」
ニアが遠くを見て呟く。
志津木はニアの肩に手を置き、頷いた。
たどり着いた街で住民登録を済ませ、家を買った。庭付きの一軒家で、さほど広くはない。でもふたりなら狭い方がくっついていられるから良いねと、笑い合った。
「ニア」
名を呼んで、両手を引いて向かい合わせて立ち、両手を繋いだまま、志津木は片膝をつく。
「愛してる、ニア、俺のツガイになってください」
真摯にニアを見つめて見上げていると、ブワッとニアの目に涙が浮かぶ。
「いいの? ——……ほんとに僕でいいの?」
立ち上がってニアを抱きしめる。ヒクヒク泣き続けるニアを腕の中に収めて髪を撫で、可愛い反応に胸が軋む。
「ニアの側にいさせて欲しい。お互いの命が尽きるまで、一緒に生きて行こう」
「うん、うん、ありがとう、ヨウ、嬉しい、すっごく嬉しい」
キスをして、見つめ合う。
ニアの涙を唇で拭い、くすぐったいと言うニアの手を引く。
家の中は買った家具が入れられたばかりだ。カーテンはまだ付けていない。食器や細かい物も箱に入ったまま。でもベッドはある。布団はまだ出していないけど、愛し合うにはスペースがあれば良い。小さいけど浴槽のある風呂もある。一緒に入りたいから浴槽のある家を選んだ。
「抱かせて、ニア、お風呂も一緒に入ろう?」
ドアを開けて一緒に潜った。
ほんのり頬を赤らめたニアが可愛い。
もう長く一緒にいる筈なのに、ニアは最初にテレて見せる。初々しい表情は志津木を煽るだけなのだが——。
「可愛いニア、愛してる」
「うん、僕も、愛してる」
見つめ合って、キスをする。
新しい生きる場所。
幸せにすると誓う。
おわり
◇◇◇
長くお付き合い頂き、ありがとうございました。感謝しています。
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