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2章
4 別れ
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ニアが目の前に来ると、嬉しそうに駆け寄って抱きついた二人の子どもは、ニアの太もも辺りまでの身長しかない。人なら五歳くらいだろうけど、獣人だとどうなのか。彼らの頭には角がある。まだ小さくてふわふわの髪に隠れているけど、角のある種類だとわかる。尻尾は小さくて短いやつ。ぴこぴこして可愛い。
「おかえり、ニア」
ニアがマティアスと教えてくれた美人が綺麗な笑顔を見せている。志津木は顔には出さずに驚いている。耳が尖っている。肌に透明感があり、青白く見えるほど。目の色が薄い緑色で、シルバーの額飾りにダイヤがはまっている。形は雪の結晶のようで、日に輝いている。
「ただいまマティアス。元気そうで良かった」
足に子どもを纏わりつかせたまま、マティアスと抱擁を交わしたニアは、志津木の目にとても美しい光景として刻まれた。本当に良かったと思う。あちらでは傷だらけで首輪をされて繋がれていた。記憶も飛んでいてチップで感情を抑えられていて。本来のニアに戻れたのだと思うと安堵が広がる。
「彼は?」
マティアスの問いに体を離したニアは、後ろを振り返って志津木を見ると、マティアスから離れて志津木の方を向く。
「名をヨウと言う。彼を住み込みで雇う事はできないかな? 帰る場所が無くて困っている」
「ヨウです。迷惑にならないよう小屋の片隅にでも置いて貰えたら有難い。迷惑ならすぐに出て行く。しばらくお願い出来ないだろうか」
「おじちゃん、だれ? どこから来たの?」
「いっしょにくらすの?」
「ハクとメイ、私はマティアスと言います。力仕事を手伝って頂けたら助かります」
髪が短い子がハクで、髪が肩まで伸びている子がメイだ。服は同じ、背格好も同じだから双子なのかも。男女は見た目では分からない。成長によって変わるのかもしれない。
「ありがとうございます」
マティアスの案内で教会の様な建物へ向かう。マティアスとニアがどんな関係かは分からないが、親しいというのは、お互いを見る視線と表情で分かる。募る話もあるだろうと、志津木は取り入れる途中の洗濯物を、ハクとメイの指示を貰って取り込み、室内へ持ち込んで、一緒に畳んだ。ハクもメイも何時もお手伝いをしているのだろう。畳み方も片付け場所も完璧だった。
「ありがとうございました。お茶を淹れたのでどうぞ」
マティアスに呼ばれて着いて行けば、ニアがドアを出る所だった。
「もう行くのか」
「行くよ。じゃあね」
寂しく思うのは志津木だけの様で、ニアは軽く手を振ってから戸惑いもなくドアを出て行った。窓から外が見える。外には馬車が停まっていた。馬車だけど引いているのは馬ではなく、ヤモリが馬サイズになったような動物で、この世界で言う従獣なのだろう。二頭が馬車を引いている。
「本来であれば私など声も掛けられない程のお方なのですよ」
「ニアは王子になったの」
「もういっぱいあそべないの」
ハクとメイがベソベソし出したから、マティアスが屈んで二人を抱きしめた。
「ニアに元気で会えた事を喜ばなくてはなりません。泣いてしまってはニアが心配をしてしまいますよ。ほら、笑顔で手を振って見せてあげて下さい」
マティアスがそう言うと、二人は涙を拭う。マティアスに抱き上げられて、窓から外を見て、二人で大きく手を振り始めた。
「おかえり、ニア」
ニアがマティアスと教えてくれた美人が綺麗な笑顔を見せている。志津木は顔には出さずに驚いている。耳が尖っている。肌に透明感があり、青白く見えるほど。目の色が薄い緑色で、シルバーの額飾りにダイヤがはまっている。形は雪の結晶のようで、日に輝いている。
「ただいまマティアス。元気そうで良かった」
足に子どもを纏わりつかせたまま、マティアスと抱擁を交わしたニアは、志津木の目にとても美しい光景として刻まれた。本当に良かったと思う。あちらでは傷だらけで首輪をされて繋がれていた。記憶も飛んでいてチップで感情を抑えられていて。本来のニアに戻れたのだと思うと安堵が広がる。
「彼は?」
マティアスの問いに体を離したニアは、後ろを振り返って志津木を見ると、マティアスから離れて志津木の方を向く。
「名をヨウと言う。彼を住み込みで雇う事はできないかな? 帰る場所が無くて困っている」
「ヨウです。迷惑にならないよう小屋の片隅にでも置いて貰えたら有難い。迷惑ならすぐに出て行く。しばらくお願い出来ないだろうか」
「おじちゃん、だれ? どこから来たの?」
「いっしょにくらすの?」
「ハクとメイ、私はマティアスと言います。力仕事を手伝って頂けたら助かります」
髪が短い子がハクで、髪が肩まで伸びている子がメイだ。服は同じ、背格好も同じだから双子なのかも。男女は見た目では分からない。成長によって変わるのかもしれない。
「ありがとうございます」
マティアスの案内で教会の様な建物へ向かう。マティアスとニアがどんな関係かは分からないが、親しいというのは、お互いを見る視線と表情で分かる。募る話もあるだろうと、志津木は取り入れる途中の洗濯物を、ハクとメイの指示を貰って取り込み、室内へ持ち込んで、一緒に畳んだ。ハクもメイも何時もお手伝いをしているのだろう。畳み方も片付け場所も完璧だった。
「ありがとうございました。お茶を淹れたのでどうぞ」
マティアスに呼ばれて着いて行けば、ニアがドアを出る所だった。
「もう行くのか」
「行くよ。じゃあね」
寂しく思うのは志津木だけの様で、ニアは軽く手を振ってから戸惑いもなくドアを出て行った。窓から外が見える。外には馬車が停まっていた。馬車だけど引いているのは馬ではなく、ヤモリが馬サイズになったような動物で、この世界で言う従獣なのだろう。二頭が馬車を引いている。
「本来であれば私など声も掛けられない程のお方なのですよ」
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「もういっぱいあそべないの」
ハクとメイがベソベソし出したから、マティアスが屈んで二人を抱きしめた。
「ニアに元気で会えた事を喜ばなくてはなりません。泣いてしまってはニアが心配をしてしまいますよ。ほら、笑顔で手を振って見せてあげて下さい」
マティアスがそう言うと、二人は涙を拭う。マティアスに抱き上げられて、窓から外を見て、二人で大きく手を振り始めた。
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