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14 晩餐
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ビジネスホテルの前で黒塗りの車に乗せられた。ただ違うのは両手が拘束され、片足が車の床にある輪っかに繋がれている事だ。
窓は黒くて外が見えない。運転席と後部座席の間に板があって前も見えない。車の振動と体にかかる加速の重力で体が前後する。ここがいつもの場所なのか、獣人国なのかもわからない。不安だけが胸にある。せめて痛みが少なく気絶する様に死ねたら幸せかと思う。
車が止まる。そんなに長い時間には思えなかった。ドアが開き、足の拘束が両足に替わる。これでは罪人だよなと思う。さらに目隠しをされて視界を奪われた。外に引っ張り出された。風が頬に触れる。髪が流れる。草の匂いがする。ガチャガチャとした声が聞こえる。そうか獣人の言葉かと思う。
腕を引かれて歩く。階段を一歩一歩上らされる。エレベーターに乗り込む体感がする。甘い花の香りがする。高級そうな匂いだ。ゆっくり止まり、ドアが開き、腕が引かれる。食べ物の匂いと紅茶の匂いがする。椅子に座らされ、手と足の拘束が解かれ、目隠しを外された。
そこは高級なホテルの一室のようで、大きなテーブルの端の席に座らされている。
「お食事がまだだと伺っております。ワインなどいかがですか?」
人型の執事が人好きのする笑顔で聞いてくれる。黒い三揃いのスーツを着ていたから執事と思ったけど、ここがホテルだったら支配人かも。
「いえ、結構です」
「承知しました。では後ほどお部屋の方に用意させて頂きます。ごゆっくりお食事をお楽しみ下さい」
壁際にもスーツを着た人が立っている。男ばかりで女性はいない。広い部屋の天井には煌びやかなシャンデリア。大きな窓が二つ並んでいて、エンジ色のカーテンが掛かっている。壁には金の模様があってキラキラしている。食器には青い花模様があり金で縁取られている。ナイフとフォークは銀だ。グラスは綺麗で曇りがない。触れるのが怖いくらい。
紘伊は場違いすぎて気後れしている。しかも獣人がいない。人型でも日本人ではなくフランス人やイギリス人を思わせる風貌なのに言葉は日本語だ。目隠し中の言葉は聞き取れなかったのに。
「冷めないうちにどうぞ」
焼きたてのパンが置かれる。香ばしい匂いに食欲がそそられる。
「ありがとうございます」
よく分からないが親切な対応にホッとする。せっかく用意されたものだ。遠慮なく頂こうとパンを手に取って口に運ぶ。ふわりとしてバターの香りが鼻に抜ける。美味しい。思えばこの1月ほど、美味しい料理とは無縁だった。日のほとんどは口の中が切れていて食欲が無かったし、気力が無くなっていたから食に無頓着だった。食べて健康になった所で死ぬだけだろうと思っていたせいもある。太って妊娠させられる未来も考えたくない。
スープを飲む。トマトと牛肉のスープだ。胃の中がキュッとなる。染み渡る感覚があって泣けて来る。
この状況はなに?
苦しませる前にせめて食事だけでもという計らいなのだろうか。
壁際に立ち、視線を下げて佇む人の姿が怖くなって来る。
不安を胸に食べる食事なのに美味しく思える理不尽さに泣けて来る。堪えて食事を飲み下す。
誰か状況を早く教えて欲しいと思いながら、軽く発した一言が今後の対応に繋がりそうで、そんな小さな事にもビクつくようになってしまった自身に失望した。
窓は黒くて外が見えない。運転席と後部座席の間に板があって前も見えない。車の振動と体にかかる加速の重力で体が前後する。ここがいつもの場所なのか、獣人国なのかもわからない。不安だけが胸にある。せめて痛みが少なく気絶する様に死ねたら幸せかと思う。
車が止まる。そんなに長い時間には思えなかった。ドアが開き、足の拘束が両足に替わる。これでは罪人だよなと思う。さらに目隠しをされて視界を奪われた。外に引っ張り出された。風が頬に触れる。髪が流れる。草の匂いがする。ガチャガチャとした声が聞こえる。そうか獣人の言葉かと思う。
腕を引かれて歩く。階段を一歩一歩上らされる。エレベーターに乗り込む体感がする。甘い花の香りがする。高級そうな匂いだ。ゆっくり止まり、ドアが開き、腕が引かれる。食べ物の匂いと紅茶の匂いがする。椅子に座らされ、手と足の拘束が解かれ、目隠しを外された。
そこは高級なホテルの一室のようで、大きなテーブルの端の席に座らされている。
「お食事がまだだと伺っております。ワインなどいかがですか?」
人型の執事が人好きのする笑顔で聞いてくれる。黒い三揃いのスーツを着ていたから執事と思ったけど、ここがホテルだったら支配人かも。
「いえ、結構です」
「承知しました。では後ほどお部屋の方に用意させて頂きます。ごゆっくりお食事をお楽しみ下さい」
壁際にもスーツを着た人が立っている。男ばかりで女性はいない。広い部屋の天井には煌びやかなシャンデリア。大きな窓が二つ並んでいて、エンジ色のカーテンが掛かっている。壁には金の模様があってキラキラしている。食器には青い花模様があり金で縁取られている。ナイフとフォークは銀だ。グラスは綺麗で曇りがない。触れるのが怖いくらい。
紘伊は場違いすぎて気後れしている。しかも獣人がいない。人型でも日本人ではなくフランス人やイギリス人を思わせる風貌なのに言葉は日本語だ。目隠し中の言葉は聞き取れなかったのに。
「冷めないうちにどうぞ」
焼きたてのパンが置かれる。香ばしい匂いに食欲がそそられる。
「ありがとうございます」
よく分からないが親切な対応にホッとする。せっかく用意されたものだ。遠慮なく頂こうとパンを手に取って口に運ぶ。ふわりとしてバターの香りが鼻に抜ける。美味しい。思えばこの1月ほど、美味しい料理とは無縁だった。日のほとんどは口の中が切れていて食欲が無かったし、気力が無くなっていたから食に無頓着だった。食べて健康になった所で死ぬだけだろうと思っていたせいもある。太って妊娠させられる未来も考えたくない。
スープを飲む。トマトと牛肉のスープだ。胃の中がキュッとなる。染み渡る感覚があって泣けて来る。
この状況はなに?
苦しませる前にせめて食事だけでもという計らいなのだろうか。
壁際に立ち、視線を下げて佇む人の姿が怖くなって来る。
不安を胸に食べる食事なのに美味しく思える理不尽さに泣けて来る。堪えて食事を飲み下す。
誰か状況を早く教えて欲しいと思いながら、軽く発した一言が今後の対応に繋がりそうで、そんな小さな事にもビクつくようになってしまった自身に失望した。
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