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12 尊厳
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待機部屋でのんびり過ごす。
爬虫類らが来なくなって、指名もぱったり無くなった。ライオンが来た後に何人かの相手をした。会話部屋より添い寝部屋の方が楽に思えた。横向きに寝転んでいる間に獣人は好き勝手にして来る。爬虫類が来なくなって、殴られるのは無くなり、肩や腰や腕を撫でられる事はあっても、性的な触れ方では無かった。話も返事を期待したものでは無かったから、相づち程度で許された。
「暇ですね」
「そうですね」
ルームシアターには古い映画が映し出されている。ニュースを見なくなってどれくらい経っただろう。人社会の現状も把握できないまま、ただ時が過ぎて行く。
獣人カフェで働いていた獣人は餌だったのだろうか。可愛くて御し易い小さな獣人を集めてお披露目して、人に欲しいと思わせておいて、拉致した後は、会わせた獣人とはまるで違う、体格の良い獣人の相手をさせる。言わば奴隷と変わらない存在となる。
紘伊は思う。獣人と出会う妄想は幸せなものばかりで、正に現実逃避だったのだと。
「怪我、良くなってよかったですね」
「はい、おかげさまで」
先日、ここで寝そべって会話した相手が居なくなっている事には触れもせず、たまたま隣に居合わせた人と会話をする。でも深い話も自己紹介もしない。いつかいなくなる存在だとお互いに理解しているからだ。
紘伊はここに来て5キロは痩せた。元々普通体型だったから今では肋が浮き出ている。
反対に過食に耽る者もいる。食べ物だけは豊富にある。太った体型が好きな獣人もいるらしい。
「子どもが産める様になるらしいですよ」
ぼんやりしていた頭に不意な情報が舞い込んで来て、脳が動き出す感覚を得る。
「待ってください、何の事ですか?」
起き上がって彼を見ると、理不尽な笑みを湛えている。
「ですから、我々です」
「男ですけど」
「でしょうね」
お互いに痩せてはいるが、男以外に間違えるはずが無く。
「獣人には雌雄の区別がないそうです」
「ではいったいどうやって子孫を?」
生物の中には雄しか生まれず、時期と状況を見て雌化するものもいると知ってはいるが。獣人は動物と人との掛け合わせが多い。てっきり生態は人と同じだと思い込んでいた。
「生態系の下位は頭数も多いので、雌化するらしいのですが、上位は見た事があるでしょう? 強い雄は見目も屈強だ。雌化させた所で、ねえ?」
身体の大きな相手を雌化させた所で抱けなければ意味がないという事なのか?
「もっとも強い生物こそ屈服は難しいという事なのでしょうか。そういう種族は相手に人を選ぶのだそうです」
「どういう事ですか? まさか我々は母体として集められて売られているとか、そういう——」
彼に悲しく笑まれて言葉を失う。
「獣人の子を産む? 俺が?」
「見初められ、身請けされたらの話ですけどね」
ふふふと笑っている彼を見下ろしている。
「このまま獣人の餌になるのと、雌化して男の尊厳を覆されるのと、果たしてどちらが幸せなのでしょうね?」
爬虫類らが来なくなって、指名もぱったり無くなった。ライオンが来た後に何人かの相手をした。会話部屋より添い寝部屋の方が楽に思えた。横向きに寝転んでいる間に獣人は好き勝手にして来る。爬虫類が来なくなって、殴られるのは無くなり、肩や腰や腕を撫でられる事はあっても、性的な触れ方では無かった。話も返事を期待したものでは無かったから、相づち程度で許された。
「暇ですね」
「そうですね」
ルームシアターには古い映画が映し出されている。ニュースを見なくなってどれくらい経っただろう。人社会の現状も把握できないまま、ただ時が過ぎて行く。
獣人カフェで働いていた獣人は餌だったのだろうか。可愛くて御し易い小さな獣人を集めてお披露目して、人に欲しいと思わせておいて、拉致した後は、会わせた獣人とはまるで違う、体格の良い獣人の相手をさせる。言わば奴隷と変わらない存在となる。
紘伊は思う。獣人と出会う妄想は幸せなものばかりで、正に現実逃避だったのだと。
「怪我、良くなってよかったですね」
「はい、おかげさまで」
先日、ここで寝そべって会話した相手が居なくなっている事には触れもせず、たまたま隣に居合わせた人と会話をする。でも深い話も自己紹介もしない。いつかいなくなる存在だとお互いに理解しているからだ。
紘伊はここに来て5キロは痩せた。元々普通体型だったから今では肋が浮き出ている。
反対に過食に耽る者もいる。食べ物だけは豊富にある。太った体型が好きな獣人もいるらしい。
「子どもが産める様になるらしいですよ」
ぼんやりしていた頭に不意な情報が舞い込んで来て、脳が動き出す感覚を得る。
「待ってください、何の事ですか?」
起き上がって彼を見ると、理不尽な笑みを湛えている。
「ですから、我々です」
「男ですけど」
「でしょうね」
お互いに痩せてはいるが、男以外に間違えるはずが無く。
「獣人には雌雄の区別がないそうです」
「ではいったいどうやって子孫を?」
生物の中には雄しか生まれず、時期と状況を見て雌化するものもいると知ってはいるが。獣人は動物と人との掛け合わせが多い。てっきり生態は人と同じだと思い込んでいた。
「生態系の下位は頭数も多いので、雌化するらしいのですが、上位は見た事があるでしょう? 強い雄は見目も屈強だ。雌化させた所で、ねえ?」
身体の大きな相手を雌化させた所で抱けなければ意味がないという事なのか?
「もっとも強い生物こそ屈服は難しいという事なのでしょうか。そういう種族は相手に人を選ぶのだそうです」
「どういう事ですか? まさか我々は母体として集められて売られているとか、そういう——」
彼に悲しく笑まれて言葉を失う。
「獣人の子を産む? 俺が?」
「見初められ、身請けされたらの話ですけどね」
ふふふと笑っている彼を見下ろしている。
「このまま獣人の餌になるのと、雌化して男の尊厳を覆されるのと、果たしてどちらが幸せなのでしょうね?」
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