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45 せっかく会えたのに

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 アレスさんが帰って来てから、10日後、ウォルさんが戻って来た。

 すごく久しぶりな気がして、会って抱きしめられたんだけど、気持ちの整理がつかない。

 戻ってきてすぐにルフさんと話し合いをして、またどこかへ行ってしまった。

「夕方までには戻るよ」

 って、軽いキスだけして行っちゃった。すごく面倒くさそうに見えたのは気のせい? オレがそばにいて欲しいって思ってるの、わかったと思うんだけど。

 お仕事優先?
 仕方ないよね。

「機嫌が悪いな」

 ルフさんに言われて、ムッとする。
 そりゃそうでしょう。
 ずっと待ってたのに。

「もう少し待ってたら、良いことあるんじゃねえ?」

 ルフさんはお仕事の話だと思うけど、いっぱいウォルさんと話してた。羨ましい。そういうの、態度に出てたみたい。

「俺に嫉妬すんなよ? ありえねえから」

「わかってるよ!」

 あれから宿は閉めてる。
 エルゼさんは、朝に来て、朝食を作って、いろいろ作業をして、お昼前に戻って行く。久しぶりに冬眠中のマスターとゆっくりしているみたい。

 オレはやることがないから、よけいに寂しく感じてる。

 ミルルのところも、アレスさんがいるから、頻繁には行けないし。

 ルフさんと話してると揶揄われて腹が立つし、髪をぐちゃぐちゃにされるから嫌だ。

 エルゼさんが作ってくれた蜂蜜クッキーを食べながら、ぼーっとしてる。

 そうしたら部屋をノックされて、ルフさんが声を掛けて来た。

「旦那が湯を使えってさ。持って来てやったよ」

 ドアを開けると、ルフさんがお湯を持って入って来た。

「なんで?」

「やるんだろ?」

 って言われて、恥ずかしくて赤くなった。

「だろ? おまえ、これに似た発言、恥ずかしげもなく言ってんだぜ? 少しは自覚しろよ」

「言ってない」

「言ってるって。旦那に触りたいとか、言ってたじゃねえか」

「それは……」

 確かに、聞いている方は、やりたいって言ってるみたいに聞こえる。

「ほらみろ、気をつけろよ? 迂闊な一言で煽ってたら、その場でやり殺されるよ、おまえ」

 落ち込む。
 ウォルさんが煽ってるっていうの、こういうこと?
 思ったこと、ぜんぶ口に出すの、ダメなんだ。

「落ち込まなくて良いし、旦那にだったら良いさ。逆に喜ぶんだろうし? 他人に気をつけろって言ってんの! わかった?」

 うんって頷く。

「旦那と外出だ。服は旦那が持って来るらしいぜ?」

 そう言いながら、ドアを閉めて、下の階へ降りて行った。

 言われた通り、湯を使う。
 ウォルさんの獣化を洗っていた頃が懐かしい。
 未成年って良かったよなって思う。
 いっぱい甘やかしてもらったからだ。
 あの時は早く成人を迎えたいって思ってたのに。

 石鹸で体を洗う。
 お湯で流して、あーあって思う。

 今日はもう触ってもらえないみたい。
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