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13 デートっぽいデートって?

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 お店の中に入ると、お店の人がコートを預かってくれる。

 ここでコート脱いで正解なの? って思いながら脱いで、マイロさんをじっと見ちゃった。

「行こうか」

 って、店の中でも手を繋いでくれて、今度は手袋も預けたから、手のひらの感触がする。大きくて、硬くて。たぶん剣を握るから硬いんだと思うと、剣を持つマイロさんも格好良いんだろうなって想像しちゃう。

 案内されたのは個室になっている場所で、テーブル席だった。

 マイロさんに奥の席に案内されて座ると、向かいの席にマイロさんが座った。メニューを渡されたけど、良くわからない。ただわかったのは、すごく高級なお店で、自分では選ばない店だなってこと。大人っぽいし、何を頼んで良いのかわからない。

「何にする?」

 って聞かれて、困る。
 ドキドキもすごくて、声も出しにくい。どうしようって思っていると、マイロさんが手を差し伸べてくれて、良くわからなかったけど、握手みたいに握り返すと、繋ぎ方を変えて、指が絡み合う繋ぎ方になった。

「大丈夫だよ。好きなもの言ってみて?」

 優しく笑まれて、うんって頷く。

「俺も緊張しているんだよ」

 なんで? って首を傾げた。

「ユートがすごく可愛いからだよ」

 手を離す時に指先をするって撫でられて、言葉と感触に赤くなる。

「あ、あの、えっと、ありがとう?」

 そう言うと、クスッて笑われた。

「また疑問形だね」

「あ、の、マイロさんもすごく素敵です」

 って、何を言っているんだろう。そんなの言われなくても当然だっていうのに。

「ありがとう、嬉しいよ」

 なのに嬉しそうに微笑んでくれて、胸の辺りがキュッとした。

「あの、メニュー見てもよくわからなくて。マイロさんのお好きなものを頼んでもらっても良い? あと、昨日熱が出てて、あまり食べてなくて、軽くでお願いします、ごめんなさい」

「熱が出たの?」

「うん、エルゼさんには知恵熱だって」

「初めてのデートだから?」

 うんって頷く。恥ずかしくって俯いた。

「可愛いね」

 ふるふるって首を振る。

「可愛いよ。少なくとも俺にはユートがとても魅力的に見えるよ」

「うそ」

 そんなの信じられない。人族の男なんて本気で好きになる獣人はいないよ。少しからかって、興味が薄れたら捨てる。それが一般的な評価で、そういうのが頭をよぎるたび、本気になったらダメだって思う。でも本気で好きになりたいし、なって欲しいって願うけど。

「うそじゃないよ。まあ、ゆっくり信じてくれたら良いよ。じゃあ、俺の好きなもので、軽いものを頼むね。シェアしようか」

「はい」

 気を取り直す。
 せっかくデートに誘って貰ったのだから、楽しまなきゃダメだよね。
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