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1 もふもふチャンス

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 ワンダー国は獣人の国だ。

 ほんのちょっとだけ人族もいるけど、それは身寄りのない子どもか、獣人と結ばれた伴侶がほとんど。

 オレはユート、人族だ。
 赤ちゃんの時に捨てられていた所を、ワンダー国グレイヴ領の孤児院に引き取られて、ヒツジのヨナさんのお乳を貰って生き延びて、15年孤児院で暮らした。

 周りは獣人の子しかいなくて、自分には毛皮がないことが悲しくて、無い物ねだりが悪化した結果、重度のもふもふ好きに成長した。

「ユート、次のあがったよ。早く取りにおいで」

「はーい、マスター」

 17歳になったばかりのオレは、グレイヴ領の南門近く。旅人が多く立ち寄る宿の食堂で働いている。

 マスターはクマの獣人で、蜂蜜を使った料理が自慢だ。

 甘~いパンケーキからハニーマスタードチキンまで。いろんな蜂蜜料理が楽しめる食堂だ。お酒もあるよ。蜂蜜酒は甘いものからコクのあるもの、芳醇なものまで、いろいろ選べるから男女共に人気があるよ。

「ごめんなさい、お客さま。狭くてぶつかっちゃった、ゆるして?」

 体の大きな獣人もいるから、テーブルの間を縫って動くのも大変だ。

 でもオレはわざわざ狭い隙間を狙って通ってる。だってもふもふの尻尾とか、首周りのもふもふとか、偶然触れちゃうの、仕方がないからね。

「おまちどうさま~蜂蜜酒とハニーマスタードチキンだよ」

 大皿に盛った照りが輝くチキンをテーブルの真ん中に置いて、蜂蜜酒を4杯各々の前に置く。置きながら彼ら自慢のもふもふを観察する。

(さっき尻尾に触れちゃった虎さんも素敵だけど、首周りがふさふさの狼さんも良いな。羊さんは女性だから腰のクビレと胸のふくらんだ部分の境目とか、色っぽいし。あ~フツウに家ネコさんの白と薄茶色の柔らかそうなもふもふも捨てがたい)

「ごゆっくりどうぞ~」

 ヨダレが出そうなくらいステキ!
 もふもふありがとう!

「仕事、いつ終わるの?」

 ああ、キタ!
 狼さんのお・さ・そ・い❤︎

 獣人さんは能力が高いほど、見た目を自在に変えられる。

 能力の低い獣人さんは、人型に耳と尻尾がふつうだよ。

 狼さんは首から上が獣のまま。手は人、体は服の下だからわかんない。尻尾はふさふさでゆらゆら揺れてる。

「もうすぐ休憩だよ?」

「終わらない?」

「うん、お客さんの入りによるかな?」

 じっと狼さんの目を見てる。
 ブルーグレーでキラキラしてる。

「やめておけ、マスターに叱られる」

 虎さんがため息を吐いた。
 カウンター内のマスターを見たら、オレを気にしてチラチラ見てる。

「ごめんね、お誘いありがとう。仕事に戻るね」

 オレはまだ17歳。
 この国の成人年齢は18歳だから、マスターはオレに悪い虫がつかないように見張ってる。

「ユート!」

「はぁーい、マスター、すぐ行きまーす」

 ふわふわな白に近い金の髪と蜂蜜色の瞳。小柄で細身。人族ってただでさえ若く見られるのに、オレはもっと幼く見えるみたい。

 早く成人して、恋人が欲しいのに、ずっと未成年だって思われたらどうしよう?

 好きなのはもふもふ。
 男の人の大きな体で、いっぱいもふもふしている相手が好み。

 いつかオレだけを甘やかしてくれる、オレ専用のもふもふが欲しい。ずーっとちっちゃい頃から思い続けている願い。

 18歳になったら素敵な恋人と暮らしたいと思っているよ。
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