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【3】復帰
1・王室
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レティウスの執務室の続き部屋に居場所を貰ったユーリは、レティウスの使用人扱いになっている。
いつもレティウスの後ろを着いて歩いているから、銀竜軍内ではユーリの噂話で持ちきりだった。
「見た目が良いから二人の隊長をモノにしているのか」
「浮気だとしてもどちらが本命なのか」
噂話はされるのだが、誰も真実を知らないので答えなど出てこない。
諦めて見て見ぬふりをする者がほとんどだった。
結局のところ、ユーリが側にいればレティウスは仕事をするし、さぼらない。しかも機嫌が良いと来れば、銀竜軍にとっては有り難い存在だった。
ただ噂は流れ、王の耳に届くことになる。
王の耳に届けば、髪色と瞳の色で追放したユーリだと気づかれた。
ギルバートには、早く王が保護してくれという気持ちがあったので、この伝わりは遅いくらいだった。
王の私室に呼ばれたユーリは、レティウスとギルバートを伴っている。
ギルバートはなぜ自分までと思うのだが、最初にユーリを城壁内に入れたと咎められれば、仕方のないことだった。
王はソファの中央に座り、後ろに宰相であるルイスを立たせている。
その前、机を挟んであるソファにユーリが座り、その後ろにレティウスとギルバートが並んで立っていた。
「おまえは今後どうしたいのだ?」
王が静かにそう言うと、ユーリはソファから立ち上がり、王の横の空いた場所に移動すると、最上礼の姿を取る。そうすれば、レティウスとギルバートも同じように最上礼の姿を取った。
「勝手をお許しください。王位継承権はいりません。ただ、軍に在籍することをお許し頂きたいのです」
ユーリに立つように指示を出した王は、苦悩のため息を吐く。
「おまえの容姿は目立つ。しかも竜王の意を得たのであるな? それで王位には就かんと申すのか」
「竜王の意は断りました。それに竜が我が国の在り方に大きくかかわっているとはいえ、私には兄も弟もおります。私は竜王の意に沿えないのですから、王位は兄弟に与えてください」
「それでおまえは良いのか?」
「はい、レティウスがこの国にいる限り、私はこの国に尽くす覚悟です。王子として、軍人として」
王の視線がレティウスに向く。
レティウスは胸に手を当て、視線を下げた。
「その者との縁は切れたはず。そう竜王から聞いているが」
「昔の私を立ち直らせたのはレティウスです。レティウスがいなければどうなっていたか。その功績は大きいと思うのですが……」
「おまえが言うな! 元々おまえの歪んだ性格がわるいのだ。……確かにまともにはなったと報告を受けているが。まあ仕方がない。その容姿では紛れるのも無理であろう。外で悪さをして王室に傷をつけてもらっても困る。しばらくは軍学校へ通い、静かにしていろ」
ですが、と背後から声がかかる。宰相のルイスは不満らしい。
それもそうかとユーリは思う。彼の息子がユーリの追いかけていたフランなのだ。また同じ状況にでもなれば困るのはルイスだ。
「わかっているな、ユーリ、今度あのような馬鹿な真似をしたら助けはないものと思え」
「申し訳ありませんでした。二度とあのようなふるまいは致しません」
ユーリはソファから立って胸に手を当て礼をした。
背後のふたりも習って礼をする。
ユーリは意見が思い通り通ったことにホッとした。レティウスは無表情のまま、何を考えているのかわからない。ギルバートはすでに別のことを考えていた。
いつもレティウスの後ろを着いて歩いているから、銀竜軍内ではユーリの噂話で持ちきりだった。
「見た目が良いから二人の隊長をモノにしているのか」
「浮気だとしてもどちらが本命なのか」
噂話はされるのだが、誰も真実を知らないので答えなど出てこない。
諦めて見て見ぬふりをする者がほとんどだった。
結局のところ、ユーリが側にいればレティウスは仕事をするし、さぼらない。しかも機嫌が良いと来れば、銀竜軍にとっては有り難い存在だった。
ただ噂は流れ、王の耳に届くことになる。
王の耳に届けば、髪色と瞳の色で追放したユーリだと気づかれた。
ギルバートには、早く王が保護してくれという気持ちがあったので、この伝わりは遅いくらいだった。
王の私室に呼ばれたユーリは、レティウスとギルバートを伴っている。
ギルバートはなぜ自分までと思うのだが、最初にユーリを城壁内に入れたと咎められれば、仕方のないことだった。
王はソファの中央に座り、後ろに宰相であるルイスを立たせている。
その前、机を挟んであるソファにユーリが座り、その後ろにレティウスとギルバートが並んで立っていた。
「おまえは今後どうしたいのだ?」
王が静かにそう言うと、ユーリはソファから立ち上がり、王の横の空いた場所に移動すると、最上礼の姿を取る。そうすれば、レティウスとギルバートも同じように最上礼の姿を取った。
「勝手をお許しください。王位継承権はいりません。ただ、軍に在籍することをお許し頂きたいのです」
ユーリに立つように指示を出した王は、苦悩のため息を吐く。
「おまえの容姿は目立つ。しかも竜王の意を得たのであるな? それで王位には就かんと申すのか」
「竜王の意は断りました。それに竜が我が国の在り方に大きくかかわっているとはいえ、私には兄も弟もおります。私は竜王の意に沿えないのですから、王位は兄弟に与えてください」
「それでおまえは良いのか?」
「はい、レティウスがこの国にいる限り、私はこの国に尽くす覚悟です。王子として、軍人として」
王の視線がレティウスに向く。
レティウスは胸に手を当て、視線を下げた。
「その者との縁は切れたはず。そう竜王から聞いているが」
「昔の私を立ち直らせたのはレティウスです。レティウスがいなければどうなっていたか。その功績は大きいと思うのですが……」
「おまえが言うな! 元々おまえの歪んだ性格がわるいのだ。……確かにまともにはなったと報告を受けているが。まあ仕方がない。その容姿では紛れるのも無理であろう。外で悪さをして王室に傷をつけてもらっても困る。しばらくは軍学校へ通い、静かにしていろ」
ですが、と背後から声がかかる。宰相のルイスは不満らしい。
それもそうかとユーリは思う。彼の息子がユーリの追いかけていたフランなのだ。また同じ状況にでもなれば困るのはルイスだ。
「わかっているな、ユーリ、今度あのような馬鹿な真似をしたら助けはないものと思え」
「申し訳ありませんでした。二度とあのようなふるまいは致しません」
ユーリはソファから立って胸に手を当て礼をした。
背後のふたりも習って礼をする。
ユーリは意見が思い通り通ったことにホッとした。レティウスは無表情のまま、何を考えているのかわからない。ギルバートはすでに別のことを考えていた。
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