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35.結局スパダリと元腐女子ですか(1)

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 ジーニアは隣に兄がいてくれてよかった、と心の底から安堵した。この部屋にはあのゲームの主要キャラ六人が揃っていて、それぞれのペアが並んで座っている。どこからどう見てもジーニアが邪魔なのだが、そんなジーニアを快く受け入れてくれるのは兄であるジェレミー。ということでジーニアは今、ジェレミーの隣に、ジェレグレの付属品であるかのように座っている。

「それで、ジュード。ジーニア嬢の呪詛の解き方とは?」
 この場を仕切っているのはクラレンス。このメンバーでは一番その役が適している男だろう。

「まあまあ、焦るな」
 とジュードが眼鏡をクイッと押し上げながら口にすれば、クラレンスは少しイライラとしている様子。それを隣でシリルがまぁまぁと宥めているし、ジュードの隣ではミックがはらはらしながら二人の様子を見ている。

「とりあえず、こちらが調べた結果だ」
 ジュードはローブのポケットから二つに折りたたまれた紙切れを一枚差し出した。
「ジーニア嬢、まずはこれを読んでくれ」

「おい、ジュード。もったいつけずに教えろ」
 腕を組んでいるジュードはちらりとクラレンスに視線を向けたが、口を開くことはしなかった。
 ジュードから紙切れを受け取ったジーニアは一人でそれを見るのが怖くて、隣の兄に「一緒に見て欲しい」と言う。ジェレミーは黙って頷き、二人でジュードの調べた結果がまとめられているその紙に視線を走らせる。
 みるみるうちにジェレミーの顔は曇っていく。ジーニアも、頬に熱が帯びていくのを感じた。

「ジュ、ジュード殿……。こ、ここに書いてあることは、本当なのですか」

「ああ。まさか、ジェレミー殿。オレが嘘をついているとでも思っているのか?」

「いや、そういうわけ、ではないのだが……」
 ジェレミーが口ごもれば口ごもるほど、ジーニアの顔は青ざめていく。

 ――まさか、いや、まさか。え、本当に?

 思わずジュードの顔を見てしまう。彼は、自信ありげに大きく頷いている。

 ――ジュード様。なんで、そんなに自信満々なのよ……。

「私にも見せてもらっていいか?」
 クラレンスがジーニアに手を伸ばしてきた。恐らく、そのジュードの報告書を読みたいのだろう。

 ――え、これをクラレンス様に? いや、ダメだって。

 ジーニアは思わずその報告書を隠すかのように、手元に引き寄せる。もちろん、怪訝そうな顔をするのはクラレンス。

「ジーニア嬢……?」

「ダメ。ダメです。こ、これは他の人には見せられません。ね、お兄さま?」

「え? あ? はぁ? 俺に振るな」
 ジェレミーは逃げた。

「ジーニア嬢。君がかけられた呪い。もはや君一人の問題ではないだろう。私を庇って君がそれを受けたのだ。私にもその呪いの解き方を知る権利があると思うのだが?」

 ――け、権利などありません。
 と言いたいジーニアだが、クラレンスに対してそのような言葉を言えるはずもなく。

「ジーン。どちらにしろこれは、お前一人で解決できる問題ではないだろう? 少なくても協力者が必要だ。ここは、クラレンス殿下に判断してもらった方がいいのではないか? その、協力者を……」

 ――お兄さまったら、人に丸投げしてきたわ。

 だが、ジェレミーにそこまで言われてしまっては、この怪しげな報告書をクラレンスに見せないわけにはいかないだろう。仕方なく、そう仕方なく、不本意でありながらも、ジーニアはそれを彼に手渡した。手渡す時、クラレンスの顔をまともに見ることができなかった。というのも、それは呪いの解き方に原因がある。

「クラレンス様、僕も見てもよろしいでしょうか?」
 クラレンスが一通り読み終わったことを確認してから、シリルがそう尋ねた。クラレンスは無言でそれをシリルへと手渡す。となれば、その方法を知らないのはグレアムとミックだけになるということで、シリルは読み終われば黙ってグレアムに手渡し、グレアムも終わればミックに渡すという、まるで伝言ゲームのようなやり取り。そして、最終的にその紙きれはジュードの元へと戻る。
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