【R18】あなたを不能にした娼婦は私です、ごめんなさい。

明かされた真実（３）

「なるほど。ですからここ数年、この連合王国は魔獣の襲撃もなく、穏やかなのですね」

　そうなの？　と聞きたくてウィルフォードに視線を向けたら、彼は視線を逸らした。てことは、どうやら本当のことらしい。

「ところで、アイリ様はウィルフォード殿と、契り合った男女の仲なのでしょうか？　先ほども何曲も一緒にダンスを踊っておりましたよね？」

　アンドレイの言葉に首を傾げる。傾げたいのは、契り合った男女の仲という表現だ。
　困ってウィルフォードを見ると、口を開いたのは国王である。

「ウィル、不能が治ったのか？」

　その言葉でウィルフォードの顔はみるみるうちに赤くなった。

「ウィルフォード殿は、不能なのですか？」

　アンドレイもとどめを刺してくる。確認したい気持ちもわかるけれども。

　赤くなったウィルフォードであるが、次第に落ち着きを取り戻していた。むしろこれは、開き直りというものかも。

「俺は女性恐怖症だから、勃たない。だから、アイリとそういうことはしていない」

　彼の言葉から察するに、男女の契りはセックスを指すものと推測した。アンドレイからセックスという言葉が出ても驚くが。

「では、婚約者でもない？　先ほど、一緒にダンスをされておりましたから、てっきりそのような間柄かと。そうでなければ、こちらとしては非常に助かるのです」

　にっこりと笑うアンドレイを、ウィルフォードは鋭く睨みつけた。

「ただの女避けだ」
「そうでしたか。では、アイリ様。こちらに来てからどなたと契りましたか？」

　いや、だから。そのセックスした前提で聞いてくるのがおかしくないか？

「な、何をおっしゃっているのでしょうか？」

　ハハッと乾いた笑いでごまかしてみる。

「ですが、アイリ様はこちらの世界に来てから二年以上経つのですよね？　となれば、こちらの誰かと交わっているはずなのですが？」

　嘘をついても無駄だとアンドレイの顔は言っているが、それでも私は頑張って知らんぷりを続ける。

「あの、レイさんのおっしゃっている意味がまったくわからないのですが。私はウィルに拾ってもらって、ウィルのお屋敷で仕事をいただいて暮らしていました」
「俺が言うのもなんだが。アイリには特別な関係の男はいないし、そういうことを遊びでするような女性じゃない」

　ヤった相手に庇ってもらうのはものすごく微妙である。というよりも後ろめたい。

　私がウィルフォードの屋敷でお世話になったのは、彼が不能になってから。
　だから、ウィルフォードも私は誰ともヤってないとそう思っている。まぁ、ある意味では間違いではない。あそこでお世話になってからは、誰とも致していない。というよりも、ウィルフォードと致したあの一回だけ。それまでは処女だったのだから、生きてきて二十二年、本当に二年前のあの一回だけ。

「ですが、そうなるとアイリ様がここにとどまっているのがおかしいのですよ」　

　ふむ、と顎に手を当てて首を傾げる様子がわざとらしい。

「何がおかしいのですか？」

　私も負けまいとニッコリと笑って首を傾けてみた。もしかしたら、目は血走っていたかもしれない。

「異界人がこの世界にとどまるためには、この世界の者と半年以内に交わる必要があるのです。こちらの者と体液を交わらせることで、この世界になじむとも言われております。つまり、この世界に来てから二年以上経っているという時点で、アイリ様は誰かと契ったということになるわけです」
「もし、半年以内に誰とも交わらなかったら？」
「アイリ様は、元の世界に強制送還されていたかと。まぁ、文献の話ですが、過去にはそういった事例もあったということで、事実かどうかは私にもわかりかねますが」

　これは、詰んだと思っていいのだろうか。助けを求めるためにウィルフォードを見上げると、彼は顔を真っ赤にしてプルプルと震えている。

「え？　ウィル、どうしたの？　トイレを我慢してる？」
「ち、違う」