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第八章(8)
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**~*~*~**
わたくしは、隣国グラニト国の出身です。
十数年前には、グラニト国では幼い女児が行方不明になる事件が起こっておりました。そうですね、十歳までの女児が狙われているようでした。
わたくしも、両親からはけして一人で外を出歩かないようにと、しつこく言われておりました。
ですが彼らは、城の中にまで潜り込んでいたのです。
両親も使用人も誰もが寝静まった夜。わたくしは使用人に扮した彼らに、連れ去られました。
そして連れてこられたのが、この大聖堂です。
当時のわたくしは……そうですね、カリノがここに来たときと同じ八歳の頃。
他にも、わたくしと同じように連れ去られた子がいたので、彼女たちと励まし合って生活をしておりました。
教皇や枢機卿たちの言うことさえ聞けば、普通に生活ができておりましたので。
そうやって五年ほど、過ごしたでしょうか。
ちょうど十三歳になる年、当時の聖女様が特別なお菓子は食べないようにと、わたくしたちに言ったのです。そのときはなんのことかさっぱりわかりませんでした。
大聖堂では、二か月に一度、誕生日会が行われますよね。
そこでは、誕生日を迎えた者には、特別なお菓子が振る舞われるのを知っていますね?
当時の聖女様は、そのお菓子を食べないようにと言いたかったのでしょう。ですが、幼いわたくしたちにとって、特別なお菓子は楽しみなもの。
聖女様のお言葉なんて、すっかりと忘れていました。
それからしばらくして、身体が熱くて力が抜けるような感覚がありました。
寝台から下りることもままならず、見かねた同室の巫女が、枢機卿を呼んできたのは覚えています。
すぐに地下にある部屋へと運ばれ、特別な食事をとるようになりました。熱が高いからだと、彼らは言いましたが、今、思えば、きっとあれにも魔石が交ぜられていたのでしょうね。
熱に浮かされながら、枢機卿たちの言葉に従っておりました。
するとある日、熱はすっと下がり、身体が軽く感じられたのです。
部屋へとやってきたのは教皇でした。ファデル神からの神託がおりたとおっしゃったのです。つまり、わたくしが次の聖女であると。
実は、そのときにはすでに聖女様の神聖力も弱まっていたのです。
教皇の言葉に従えば、わたくしに神聖力が備わっているのがわかりました。何もないところに火がつき、風を起こし、ものを移動させる。
わたくし自身、信じられませんでした。
そこから、大聖堂でのわたくしの生活は一変しました。
前の聖女様から引継ぎ、次はわたくしが聖女として、みなの模範となり、人々を導いていく立場となったのです。
もちろん、まだ十三歳でしたので、そこには教皇や枢機卿の助けが多くあったのも事実。
そしてわたくしが聖女となって数日後、前の聖女様はお亡くなりになられました。
それから一年後、わたくしはカリノと出会ったのです。
戦争孤児を、巫女や聖騎士見習いにするというのは、教皇の考えです。
表向きは魔石の採掘権を巡ってグラニト国と争ったとされていますが、それを口実に戦争を起こし、一つの町を潰すのが目的だったのです。
それが鉱山近くにある国境の街、グルです。
そう、カリノたちが住んでいたあの街ですね。
そうやって彼らは、定期的に巫女や聖騎士見習いとなる子どもたちを手に入れていたのです。
さすがに、そろそろ子どもをさらってくることに限界を感じていたのでしょう。
どうして、子どもたちが必要なのかって?
巫女にするためです。最終的には、聖女、もしくは上巫女ですね。
わたくしは、隣国グラニト国の出身です。
十数年前には、グラニト国では幼い女児が行方不明になる事件が起こっておりました。そうですね、十歳までの女児が狙われているようでした。
わたくしも、両親からはけして一人で外を出歩かないようにと、しつこく言われておりました。
ですが彼らは、城の中にまで潜り込んでいたのです。
両親も使用人も誰もが寝静まった夜。わたくしは使用人に扮した彼らに、連れ去られました。
そして連れてこられたのが、この大聖堂です。
当時のわたくしは……そうですね、カリノがここに来たときと同じ八歳の頃。
他にも、わたくしと同じように連れ去られた子がいたので、彼女たちと励まし合って生活をしておりました。
教皇や枢機卿たちの言うことさえ聞けば、普通に生活ができておりましたので。
そうやって五年ほど、過ごしたでしょうか。
ちょうど十三歳になる年、当時の聖女様が特別なお菓子は食べないようにと、わたくしたちに言ったのです。そのときはなんのことかさっぱりわかりませんでした。
大聖堂では、二か月に一度、誕生日会が行われますよね。
そこでは、誕生日を迎えた者には、特別なお菓子が振る舞われるのを知っていますね?
当時の聖女様は、そのお菓子を食べないようにと言いたかったのでしょう。ですが、幼いわたくしたちにとって、特別なお菓子は楽しみなもの。
聖女様のお言葉なんて、すっかりと忘れていました。
それからしばらくして、身体が熱くて力が抜けるような感覚がありました。
寝台から下りることもままならず、見かねた同室の巫女が、枢機卿を呼んできたのは覚えています。
すぐに地下にある部屋へと運ばれ、特別な食事をとるようになりました。熱が高いからだと、彼らは言いましたが、今、思えば、きっとあれにも魔石が交ぜられていたのでしょうね。
熱に浮かされながら、枢機卿たちの言葉に従っておりました。
するとある日、熱はすっと下がり、身体が軽く感じられたのです。
部屋へとやってきたのは教皇でした。ファデル神からの神託がおりたとおっしゃったのです。つまり、わたくしが次の聖女であると。
実は、そのときにはすでに聖女様の神聖力も弱まっていたのです。
教皇の言葉に従えば、わたくしに神聖力が備わっているのがわかりました。何もないところに火がつき、風を起こし、ものを移動させる。
わたくし自身、信じられませんでした。
そこから、大聖堂でのわたくしの生活は一変しました。
前の聖女様から引継ぎ、次はわたくしが聖女として、みなの模範となり、人々を導いていく立場となったのです。
もちろん、まだ十三歳でしたので、そこには教皇や枢機卿の助けが多くあったのも事実。
そしてわたくしが聖女となって数日後、前の聖女様はお亡くなりになられました。
それから一年後、わたくしはカリノと出会ったのです。
戦争孤児を、巫女や聖騎士見習いにするというのは、教皇の考えです。
表向きは魔石の採掘権を巡ってグラニト国と争ったとされていますが、それを口実に戦争を起こし、一つの町を潰すのが目的だったのです。
それが鉱山近くにある国境の街、グルです。
そう、カリノたちが住んでいたあの街ですね。
そうやって彼らは、定期的に巫女や聖騎士見習いとなる子どもたちを手に入れていたのです。
さすがに、そろそろ子どもをさらってくることに限界を感じていたのでしょう。
どうして、子どもたちが必要なのかって?
巫女にするためです。最終的には、聖女、もしくは上巫女ですね。
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