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弟の身代わりに
11.
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ヨハンナが目を開けると、目の前にユルゲンの顔があった。お互いに一糸まとわぬ姿で抱き合うようにして毛布に包まっていた。
ヨハンナの背筋には、また多足虫が這うような感覚が走った。その身をよじってそこから抜け出そうとすると、足の間から何かが零れ落ちるような感覚。
「目が覚めたのか?」
「あ、はい。その、昨日はご迷惑をおかけしました」
ヨハンナはそう言うことしかできなかった。
「あの、帰ります」
彼の腕から逃げようとするヨハンナをユルゲンは力強く抱きしめる。
「逃げるのか? 俺の運命の人よ」
「いえ、ですが。その、部隊長は女性に触れると吐くとおっしゃっていたので、私が側にいてはご気分がすぐれないのではと思うのですが」
「言っただろう? 君なら大丈夫だ。ところで、君は、ヨアヒムなのか?」
「えっと……」
やっぱり正直に話さなければならないだろうな、とヨハンナは覚悟を決めた。もしかして、従騎士修了取り消しとなって多額の賠償金を払う必要が出てくるのではないか、ということまで考えてしまった。
それでもヨハンナの話を聞き終えたユルゲンは「そうか」の一言だけ。それから何かを考え込むかのようにして黙り込む。
「ヨハンナ。俺はいいことを考えた」
「はい、なんでしょう?」
「このことを黙っていて欲しかったら、俺と結婚しろ」
「え?」
目が点、というか目がチョンというか、それくらい衝撃的な一言がユルゲンから発せられた。
「俺は卑怯な男だから、運命の女性を手に入れるために君を脅す。いや、君たち家族を脅す」
「ということは、私には拒否権は無いということですか?」
「いや、無くはない。だが、断ったらどうなるかをよく考えろ。ヨアヒムが身代わりに姉を従騎士として送り込んだこと、アルトレート商会がそれに加担していたこと。その事実が世に広められるだけだな。そうなれば、アルトレート商会も地に落ち、君たち一族はどうなるかな?」
「ベイト部隊長はいじわるですね」
「ユルゲン」
「え?」
「ユルゲンと呼べ、ハンナ……」
再びヨハンナはその唇をユルゲンによって塞がれた。だが、それも嫌ではないと思い、また彼を受け入れてしまった。
ヨハンナの背筋には、また多足虫が這うような感覚が走った。その身をよじってそこから抜け出そうとすると、足の間から何かが零れ落ちるような感覚。
「目が覚めたのか?」
「あ、はい。その、昨日はご迷惑をおかけしました」
ヨハンナはそう言うことしかできなかった。
「あの、帰ります」
彼の腕から逃げようとするヨハンナをユルゲンは力強く抱きしめる。
「逃げるのか? 俺の運命の人よ」
「いえ、ですが。その、部隊長は女性に触れると吐くとおっしゃっていたので、私が側にいてはご気分がすぐれないのではと思うのですが」
「言っただろう? 君なら大丈夫だ。ところで、君は、ヨアヒムなのか?」
「えっと……」
やっぱり正直に話さなければならないだろうな、とヨハンナは覚悟を決めた。もしかして、従騎士修了取り消しとなって多額の賠償金を払う必要が出てくるのではないか、ということまで考えてしまった。
それでもヨハンナの話を聞き終えたユルゲンは「そうか」の一言だけ。それから何かを考え込むかのようにして黙り込む。
「ヨハンナ。俺はいいことを考えた」
「はい、なんでしょう?」
「このことを黙っていて欲しかったら、俺と結婚しろ」
「え?」
目が点、というか目がチョンというか、それくらい衝撃的な一言がユルゲンから発せられた。
「俺は卑怯な男だから、運命の女性を手に入れるために君を脅す。いや、君たち家族を脅す」
「ということは、私には拒否権は無いということですか?」
「いや、無くはない。だが、断ったらどうなるかをよく考えろ。ヨアヒムが身代わりに姉を従騎士として送り込んだこと、アルトレート商会がそれに加担していたこと。その事実が世に広められるだけだな。そうなれば、アルトレート商会も地に落ち、君たち一族はどうなるかな?」
「ベイト部隊長はいじわるですね」
「ユルゲン」
「え?」
「ユルゲンと呼べ、ハンナ……」
再びヨハンナはその唇をユルゲンによって塞がれた。だが、それも嫌ではないと思い、また彼を受け入れてしまった。
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