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彼との時間はこの上なく幸せだった。二人で向き合って食事をすると、質素な料理が初めて食べたような感動を覚えた。
何をするにも幸せで、辛いことなど気にもならなかった。
でも今はもう、彼と終わってしまった。私も前に進まなければならない。大丈夫。彼からの愛の言葉でわたしはやっていけるだろう。
だがまずは、目の前にいる小侯爵様との協力に終止符を打とう。
「小侯爵様…。…お話があります。」
「なんでしょうか?」
彼が顔を上げてこちらを見る。
「小侯爵様、貴方には数々助けられてばかりです。私も自分なりに答えを出す事に致しました。」
「………。」
「私はこの家を出ようと思っています。ですからもうお会いできないかもしれません…。」
言い切った。正直どう思われるのか不安で仕方ない。彼は友人としてとても好きな人だったから。
「…家を出る?それは急な…これからどうするつもりですか?」
「…はい。私がこの家を出ても兄姉がおりますから心配していません。唯、ささやかな幸せが欲しくなったのです。この身分ではできない事を…。」
言い訳だ。決意は固まったが、彼の隣に違う女性を見る事が辛い逃げているだけ。でも今はそうしたい。
「そうする理由は、ガルリア公爵家のアレクサンダー様ですか?」
「っ…!」
図星だ。返す言葉がみつからない。
「ジェニファ嬢…。」
小侯爵様の顔を見ると、真剣な顔でこちらを見て言った。
「貴方を愛しています。たとえ他の人を愛していても構いません。一生僕を見なくても構いません…どうか側に置いてください。」
「……っ……!」
なんとなく気がついていた。小侯爵様の自分を見る瞳や仕草で。
「……勝手ながら調べさせていただきました。貴方が使用人の格好をして、彼に会いに言っている事も……。」
「…知っていたのですね…。」
恥ずかしい、貴族の身でそのような醜態を知られているとは、居た堪れなくなり顔を手で覆った。
「落ち込まないで下さい。私はそんな貴方の姿を見て、ガルリア公が羨ましく思いました。貴方がここまで情熱を注いでいるのですから。」
「小侯爵様…。」
なんて優しい方なのだろう。こんなにも私のことを慈しんでくれるのにわたしはそれにお応えする事はできない。出来ることは、敬意を持ってお断りすることだけ。
「小侯爵様…。申し訳ありません…貴方のお気持ちにお応えすることはわたしにはできません。」
「…そうですか…。わかりました、無理に貴方の心を縛りたくありません。ですから、これからも変わらず友人でいて下さい。」
何をするにも幸せで、辛いことなど気にもならなかった。
でも今はもう、彼と終わってしまった。私も前に進まなければならない。大丈夫。彼からの愛の言葉でわたしはやっていけるだろう。
だがまずは、目の前にいる小侯爵様との協力に終止符を打とう。
「小侯爵様…。…お話があります。」
「なんでしょうか?」
彼が顔を上げてこちらを見る。
「小侯爵様、貴方には数々助けられてばかりです。私も自分なりに答えを出す事に致しました。」
「………。」
「私はこの家を出ようと思っています。ですからもうお会いできないかもしれません…。」
言い切った。正直どう思われるのか不安で仕方ない。彼は友人としてとても好きな人だったから。
「…家を出る?それは急な…これからどうするつもりですか?」
「…はい。私がこの家を出ても兄姉がおりますから心配していません。唯、ささやかな幸せが欲しくなったのです。この身分ではできない事を…。」
言い訳だ。決意は固まったが、彼の隣に違う女性を見る事が辛い逃げているだけ。でも今はそうしたい。
「そうする理由は、ガルリア公爵家のアレクサンダー様ですか?」
「っ…!」
図星だ。返す言葉がみつからない。
「ジェニファ嬢…。」
小侯爵様の顔を見ると、真剣な顔でこちらを見て言った。
「貴方を愛しています。たとえ他の人を愛していても構いません。一生僕を見なくても構いません…どうか側に置いてください。」
「……っ……!」
なんとなく気がついていた。小侯爵様の自分を見る瞳や仕草で。
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「…知っていたのですね…。」
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「小侯爵様…。」
なんて優しい方なのだろう。こんなにも私のことを慈しんでくれるのにわたしはそれにお応えする事はできない。出来ることは、敬意を持ってお断りすることだけ。
「小侯爵様…。申し訳ありません…貴方のお気持ちにお応えすることはわたしにはできません。」
「…そうですか…。わかりました、無理に貴方の心を縛りたくありません。ですから、これからも変わらず友人でいて下さい。」
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