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よく見てみると目がクリクリしていて可愛い。恐る恐る背中に指をやると、逃げる事もなく気持ちよさそうにされるがままになっている。
そして夢中になって気がつくとあたりにはリスらしき動物の団体がこちらを見つめてさまざまな動きを見せていた。
こちらの様子を伺う子、少し近づいては逃げていく子。
見ていると自然と笑いが溢れた。
「貴方の家族?」
手のひらで撫でていた子に聞くとまるでそうだと言っているかのように聞こえる。
しばらく戯れていると、目の前に影が差した。顔を上げるとこちらを見て驚いているアレクサンダー様がいた。
「…驚いた…警戒心が強いと言われているリスたちをこうまで手懐けているとは…。」
「えっ!」
そんな事思いもしなかった。初めてみる子たちだが、こちらに遠慮なく近寄り可愛い鳴き声を聞かせてくれている。
その鳴き声に目を閉じて聞き入っていたが、音が止みリスたちが逃げていく。
「待って!どうしたの?」
慌てて声をかけるが一匹もいなくなってしまった。
「すまない、わたしも和の中に入りたくてつい近づいてしまった。」
申し訳なさそうに頭を掻いたアレクサンダー様は、こちらを向き笑って話しかけてきた。
「君はすごいなぁ…。こんなにも珍しい光景を見れただけでもありがたい。」
「ありがとうございます。アレクサンダー様。」
「アレクでいい。」
「えっ?」
「ここには君と私二人しかいない、誰も見ていないから敬語を使わずに、気楽に接してくれ。」
「わかりました。」
彼から愛称で呼ぶことの許可が出た。嬉しくもあるが、婚約時には言われたことない事をここで言われると複雑な気持ちになったのだった。
そうしてアレク様の言う通り食事を共にして二人で動物を観察した。
普段見ることの無かった彼の素顔は屈託なく笑う少年のようだった。
そんな彼の顔を見てると不思議と自分も嬉しくなった。
やっぱりわたしにとってこの人は大好きな人だ。
そうして日が沈む頃、夕食の準備を始めた。料理もした事がなかったが必死になって覚えたのは、目玉焼きだ。
メイドが目玉焼きしか作れない事を怪しまれるかと心配したが杞憂に終わった。
「君は今まで何をしていたの?」
そう聞かれて答えに困ったが、ぼそりぼそりとつぶやいて話した。
「実は結婚を約束している人がいました…。でもある日その人が姿を消して…。」
そこから言葉が続かない。気を緩めたら涙が出そうになった。
「彼のこと…とても大好き…でした。今もその気持ちが枯れません。」
そして夢中になって気がつくとあたりにはリスらしき動物の団体がこちらを見つめてさまざまな動きを見せていた。
こちらの様子を伺う子、少し近づいては逃げていく子。
見ていると自然と笑いが溢れた。
「貴方の家族?」
手のひらで撫でていた子に聞くとまるでそうだと言っているかのように聞こえる。
しばらく戯れていると、目の前に影が差した。顔を上げるとこちらを見て驚いているアレクサンダー様がいた。
「…驚いた…警戒心が強いと言われているリスたちをこうまで手懐けているとは…。」
「えっ!」
そんな事思いもしなかった。初めてみる子たちだが、こちらに遠慮なく近寄り可愛い鳴き声を聞かせてくれている。
その鳴き声に目を閉じて聞き入っていたが、音が止みリスたちが逃げていく。
「待って!どうしたの?」
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申し訳なさそうに頭を掻いたアレクサンダー様は、こちらを向き笑って話しかけてきた。
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「ありがとうございます。アレクサンダー様。」
「アレクでいい。」
「えっ?」
「ここには君と私二人しかいない、誰も見ていないから敬語を使わずに、気楽に接してくれ。」
「わかりました。」
彼から愛称で呼ぶことの許可が出た。嬉しくもあるが、婚約時には言われたことない事をここで言われると複雑な気持ちになったのだった。
そうしてアレク様の言う通り食事を共にして二人で動物を観察した。
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そんな彼の顔を見てると不思議と自分も嬉しくなった。
やっぱりわたしにとってこの人は大好きな人だ。
そうして日が沈む頃、夕食の準備を始めた。料理もした事がなかったが必死になって覚えたのは、目玉焼きだ。
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「君は今まで何をしていたの?」
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「実は結婚を約束している人がいました…。でもある日その人が姿を消して…。」
そこから言葉が続かない。気を緩めたら涙が出そうになった。
「彼のこと…とても大好き…でした。今もその気持ちが枯れません。」
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