月夜の恋

はなおくら

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歩み

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 ケナと共に廊下を歩く。進んでいるとこちらを笑顔で迎える者がいた。

 アレアとダン、そしてリリーが立っていた。

「アレア様、ダン様それにリリーさん!お久しぶりでございます。皆さん何かご用事で来られたのですか?」

 アビーが聞くと、アレアがふふっと笑って言った。

「あなたに渡したいものがあってきたのよ!…後ろを向いて!」

 あれあの言われた通り後ろを向く。すると首元に冷たい感触がした。なんだろうと顔を下に向けると、緑色の宝石をふんだんに使ったネックレスだった。

「綺麗…これは?」

 するとリリーが口を開いた。

「ある方から頼まれたの。とてもよく似合ってる。素敵よ!」

 リリーとは色んなことがあったが、今では大好きな人たちの中の一人になっていた。

「リリーさん…ありがとうございます。アレア様もダン様も…。」

 アビーは涙を浮かべて言った。ダンも笑顔で口を開いた。

「アビー、元気になって本当によかったよ。今日はおめでとう…。」

「?…はい?」

 アビーは、未だに今日のなんなのか分からず聞き返そうとすると、すかさずアレアが行った。

「ダン!…もうあなたったら…。アビーなんでもないのよ!さぁさきへ進んで!後で会いましょう‼︎」

 そう言って急かした。アビーはお辞儀をすると”後ほど”と言って進み出した。

 進んで歩いていると、ドアの前に父アロと母ドリー、兄のカルンが立っていた。

 ドリーは目にいっぱいの涙を溜めていた。

 そしてドリーはアビーを抱きしめた。

「母さん…久しぶり…心配をたくさんかけてごめんね。…元気にしてた?」

「もう心配ばかりかけないで頂戴…。でもよかったよ…。」

 泣くドリーの肩にアロが手を置いた。

「母さん…落ち着きなさい…。」

 アロが微笑んで言った後、アビーに言った。

「よく頑張ったな。私はお前が娘でほこりに思うよ。」

 そう言ってアビーの頭を撫でた。アビーは両親に心配かけてしまったと心苦しく思ったが、こうして二人に褒められるとくすぐったい気持ちになった。

 そして兄カルンも声をかけてきた。

「おめでとうアビー。あんな小さなおちびさんが俺より先に……あっ!」

 カルンは何かを言いかけて、黙った。

「兄さん?」

 アビーが続きを聞こうとすると、慌てた様子で言った。

「なっ…なんでもないさ。そうだ、渡したいものがあるんだ。これだよ。」

 そう言って差し出してきたのは、先程もらったネックレスと同じ色の耳飾りだった。

「…これは…?」

「それは後からわかるよ。母さん!つけてあげなよ!」

 カルンがいうと、ドリーがアビーの耳に片方ずつ付けていく。

「よく似合ってる。さぁさぁ!長い話もここまでにしてまた後で会えるから、もうお行き!」

 耳飾りをつけるとドリーは、ドアに指を指して言った。

 アビーは施されるまま、ケナがドアを開きその中へ入った。



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