月夜の恋

はなおくら

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うららか

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 アビーが目を覚ますと、目の前のテーブルには食事が並べられており、ケロウはコーヒーを飲みながら書類を眺めていた。

 ケロウは起きたアビーに気が付き声を掛けた。

「おはよう、アビー。君が寝てる間に、食事の準備をさせたんだ。一緒に食べよう。」

「おはようございます…。」

 まだ目が覚めきらないアビーの鼻をいい匂いが広がる。ベッドから出ようと足をつく前に、自分が下着のままだと気づき、慌てて何か他に着るものはないかと辺りを見回した。

 察したのかケロウは、アビーにガウンを着せて言った。

「食事が終われば、ケナが着替えを持ってくるから、先に食事をしよう。」

「わかりました。ありがとうございます。」

 微笑むアビーに笑顔を返し、席へと連れて行く。

 目の前の食事に自然と目が煌めいてしまう。

「いただこうか。」

 ケロウの言葉に、アビーはうなずいた。

「いただきます。とてもおいしそう…。」

 アビーがそう呟くと、ケロウはふっと笑った。

 食事を夢中で食べているアビーを、ケロウはずっと見つめていた。

 ふと気がついたアビーは、恥ずかしくなり、食事のペースが落ちる。

「どうした?」

 急に小食になったアビーを心配そうに見つめる。

「いえ…食事はとても美味しいです。…ですが…あまり顔を見られては食べづらいです。」

 そう言ったアビーの頬は真っ赤だった。

 ケロウは、その様子に大きく笑った。

「…すまなかった。君があまり可愛くてつい……。」

「もう…笑わないで下さい……。」

 こうして穏やかな朝食が終わる頃、コンコンっと、ケナが入ってきた。

 ケナは目に涙を溜めながら言った。

「…おめでとうございます…。こんな日が来るなんて…。」

 そう言って二人に祝福をくれる。

「ケナさん…ありがとうございます!」

 つられてアビーも涙を流した。その様子にケロウも口を開いた。

「ケナ、心配かけたね。君からの祝いの言葉は嬉しいよ。」

「いえ…もったいないお言葉です。旦那様、本当によかったですよ…アビーを大切にしてくださいよ。」

 そう言って、ケナはアビーを抱きしめた。アビーもケナの温もりに嬉しくしばらく涙が止まらなかった。

 あっという間に時間が流れる。ケナは場の空気を変えようと切り替えた。

「アビーはそんな格好してたら風邪を引くだろう。さぁ湯あみをしよう。では旦那様失礼しますよ!」

 ケロウがうなずくのを確認して、アビーをお風呂場に連れて行く。

 いつのまにか湯がはってあり、アビーを入れると、石鹸を泡立てながらケナは言った。

「アビー、ありがとう…私は幸せだよ…。ケロウ様の幸せな顔をまた拝めたんだ。感謝しても仕切れないよ…。」

 そう言って、アビーの体を洗っていく。

「ケナさん…私の方こそありがとうございます。ケナさんが支えてくれたから…こんな幸せな想いができたんです。」

 アビーはそう言って微笑みながら、ケナの手を握った。

「アビー…旦那様に幸せにしてもらうんだよ…。」


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