月夜の恋

はなおくら

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祝福

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 朝の日差しが窓に差し込み朝を知らせる。

 アビーは眠りから覚めた。しばらくぼーっとした後、隣を見るとケロウの寝顔が見えた。

 ケロウの寝顔を眺めていると、昨日の事を思い出して赤面してしまう。

(私…ケロウ様と…。)

 隣にいてることが恥ずかしくなりヨレヨレと、近くの毛布を体に巻いて、窓に近づき空を見上げた。

 不思議と太陽を浴びたせいか、幸せな気持ちになった。

(ケロウ様と想いが通じ合い、愛される事がこんなにも心を満たしてくれるなんて…。)

 温かな気持ちが身体に入ってくる。幸福とはこういう事なのだろうかと思うと幸せで涙が溢れる程だった。

 涙を拭いても、拭いても止まらない。もう一度空を見上げ微笑んでいると、声が聞こえた。

「身体はもう大丈夫か?」

 ふと後ろを振り向くと、心配気に見つめてくるケロウが立っていた。

「……ケロウ様…。」

「……泣いているのか?」

 そう言ってアビーの顔を覗き込み涙を拭いた。

「…いいえ…こんなに幸せで…涙が止まらないんです。」

「そうか…。」

 ケロウはアビーを抱きしめた。この時太陽が二人に祝福を送るかのように、温かな日差しを運んでいた。

 しばらくそうしていたが、起きるのにはまだ早いとケロウは、アビーの手を握りベッドへと共に入った。

 しかしアビーは、はっとした。使用人は朝から起床し働くのだ。

ベッドから起き上がろうとすると、ケロウは、抱きとめたのでアビーは言った。

「ケロウ様…仕事の時間です。戻らないと…。」

 慌てるアビーにケロウは言った。

「大丈夫。そこはハンスがなんとかしてくれるだろうから今は甘えなさい。」

 そう言ってアビーにキスを落とし共に横になった。

 ケロウのキスにアビーはだんだん眠気が勝ち、深く眠っていった。

 アビーが深く眠りに着いた頃、音もなくハンスが入ってきた。もちろん敷板を挟んで小さく声をかける。

「旦那様…。おはようございます…。」

「おはよう。今日の予定はどうなってる?」

「はい。今日の予定はすべてキャンセルに致しました。」

「…さすが仕事が早いな。」

 ケロウはふっと笑った。

 ハンスは壁の向こうにいる、主人の幸せそうな声に安堵しそっと微笑んだ。

「旦那様…失礼いたします。もう少ししましたら朝食をお運びいたします。」

 そう言って音もなく部屋を出ていった。

 ケロウは、ハンスが部屋を出たのを確認すると再びアビーの寝顔を眺めた。

 アビーの寝顔を眺めながら、先ほどの窓辺の事を思い出した。

 ケロウが目を覚ますと、隣にアビーがおらず、焦って周りを見渡すと彼女は涙を流して空を見上げていた。

(美しい……。)

 その姿はこの世のものとは思えない美しさだった。そして儚く消えてしまいそうで、見惚れるのをやめ、彼女の後ろに近づいた。

 振り向くアビーにひどく高揚した。彼女を腕の中に収めるとひどく安心した。

 その光景を思い出し、愛おしさは増すばかりだった。

 アビーの唇にキスを落とし、ケロウは瞳を閉じた。
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