月夜の恋

はなおくら

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 屋敷の中で、もっとも広く大勢を招待する所でアレア夫妻を招待した。アレアの希望あっての事だった。

 広場では立食風に誰もが気軽に食事ができ、ダンスも踊れるように用意した。

 ケロウは今、ダンと共にワインを片手に談笑していた。

 しかし気がかりがあった。アビーをお茶会の後から顔を見ていない。アビーを呼ぶように言うと、ハンスやケナがきて、来れないと言う始末。

 どうしたのかと気にしながらもダンと話をする。

「ケロウ、君にも大切な人ができて嬉しいよ。」

 そう言ってダンはワインを口に含む続ける。

「彼女はとてもいい子だね。逃さないように…。」

 ケロウは友からの言葉が嬉しかった。自分を理解してくれる人がいると言う事はこんなに嬉しいものだと実感していた。

「ありがとう…ダン。君にそう言ってもらえて嬉しいよ。」

「当然さ、それよりそろそろ僕のハニーは、いつ頃来るのかな?」

 ダンは当たりをキョロキョロした。するとアレアが登場した。

 赤いドレスを着て、ダンの顔を見るなり嬉しそうに、歩き出した。ダン自身もアレアに近づき、手の甲にキスを落とす。

 手を組んでケロウの元に一緒に歩き出した。

「2人とも絵になるくらいお似合いだね。」

「お褒めの言葉ありがとう。」

 アレアはお礼を言った。三人で話をしている時アレアはわざと口を開いた。

「そういえば、アビーはどこに行ったのかしら…。」

 アレアは、わざとらしくキョロキョロする。すると案の定、ケロウも目で探し出した。

 ケロウの様子を確認すると、ダンはアレアをダンスに誘った。

 そうして2人で、ダンスを踊り出した。演奏者は大勢ではないので、ケナのバイオリンとハンスのピアノで音楽が紡がれていく。

 ダンスを踊る2人に、他の使用人達もおっとりとした様子で見ていた。

 それを眺めながら、ケロウはアビーの事を考えていた。アビーのどこが好きかと聞かれると、具体的に言えず困るが、彼女の全てに惹かれている。

 そんな事を考えていると、ふと広場の扉が開く音がした。

 そこには、ドレスに身を包んだアビーが立っている。

 ケロウは大きく目を見開いたまま、しばらく見つめていたがゆっくりと歩き出し、アビーの方へ足を進める。

 アビーも緊張で、固まっていた。するとコツっコツっと足音が聞こえ、顔を上げるとケロウだった。

 ケロウと目が合う、彼の黒色の深い目に吸い込まれそうな感覚がしたが不快というより心地が良かった。そして胸が早鐘の様になっているのがわかる。

(旦那様……とても素敵…。)

 しばらく見つめ合うとケロウが、口を開いた。

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