月夜の恋

はなおくら

文字の大きさ
上 下
23 / 53

和解

しおりを挟む
 ケナは悲しい顔をしてリリーを見つめた。

「ケナさん…。貴方はどうしてこの子の味方をするの?………ケロウ様にも失望したわ…。」

 そう言ってリリーは泣き出し続けた。

「カーラ様がこの屋敷で、過ごされている毎日は私にとって幸せだったわ。ケロウ様に守られながら、支えあいながら過ごし、近くで2人を見てきた…。ケロウ様は、カーラ様を大切にしてくれてた。なのに…しばらく見ない間に、知らない女を連れて幸せそうにしてた…。私はそれが許せない…。カーラ様がかわいそう…。」

 そう言って、アビーをキッと睨み付ける。ケナは、リリーに近づき頭を撫出た。

「リリー…。カーラ様は、今の旦那様を見て辛い気持ちになると思ってるのかい?そう思うのは、カーラ様に失礼だよ。思い出してご覧…本来のカーラ様の姿を…。」

 そう言われて、リリーの頭の中は過去に戻っていった。

 自分のことより人を優先する優しい主人…楽しい事が大好きで、周りにはいろんな人がいた。

 いつも優しい笑顔で名前を呼んでくれた。

 リリーは、思い出していた。あの優しかった温もりを…。

「リリー…少しは冷静に慣れたかい?カーラ様は今でも私達の胸の中で生きてるんだ!誰も忘れないさ!」

 そんな二人の姿に、アビーも涙した。そこに自分の姿がなくとも、共有できる思いがあった。

 すると泣き続けていたリリーが、アビーを見た。

「アビーさん…今までごめんなさい…貴方に酷いことをしてしまったわ…。」

 そう言って頭を下げた。アビーはゆっくり頭を振り、

「ありがとうございます…貴方のおかげでカーラ様の事を知れました。」

 リリーに言われた悲しみが全てなくなったわけではないが、気持ちを通わす事ができてつっかえていたものが取れた気がした。

 アビーが微笑むと、どこか安堵した様にリリーは笑った。そこへケナが、雰囲気を変えようと口を開いた。

「これで解決だね…!さぁ気持ちを変えよう。アビーは、あんたは今からハンスのところへ向かっておくれ。」

「今からですか?何かあったのですか?」

「いいから言っておいで‼︎」

 そう言ってアビーの背中を押した。

 アビーが向かった後、ケナがリリーを連れてアレアの下へと向かった。

「アレア様!失礼します。」

 そう言って2人で部屋に入った。

「どうやら解決したようね…よかったわ…。ケナ、どうもありがとう。」

 そう言ってアレアが微笑んだ。

「アレア様は鋭くて、驚いてばかりです。私はなんの力にもなれてませんよ!」

 ケナが笑う。横でリリーは意味がわからないと言った表情だった。

 そこへアレアは微笑み言った。

「リリー…貴方のした事は、とても酷い事だったのよ。でも今はもうわかったでしょ?」

 アレアにそう言われてリリーはうなずく。

「はい…なので私はカーラ様の分まで、あのお二人を見守りたいと思います。」

 リリーの顔を晴れやかだった。その様子に、ケナとアレアは微笑みあった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる

Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。 でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。 彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

処理中です...