月夜の恋

はなおくら

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気持ち

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 客間にて、お茶を飲みながら楽しい空間が広がっている。

 アビーも、ケロウの席の後ろで立ちながら皆に気を配りながら仕事をしていた。皆にお茶を注いでいるとケロウが声を掛けてきた。

「アビー、おいで。」

 そう言って、自分の隣の椅子を軽く叩いているが、アビーはそんな事できるはずもなく言った。

「旦那様、私がそのような事をしてしまっては、皆様の気分が悪くなってしまいますし…仕事ですから…。」

 遠慮気味に断ろう話すと、アレアが口を開いた。

「アビー。気にしないでいいのよ!それにもう知らない者同士ではないのだから座って!」

 そう勧められ、ケロウの方へ視線を向けるとニッコリとうなずいた。

「…では少しだけ失礼します…。」

 そう言って、ケロウから少し距離を開けて座った時ケロウが、寄ってきてアビーの腰に手を回した。

「まぁ!フフフっ!」

「ケロウも隅におけないね…。」

 その様子に、アレアとダンは微笑ましく見ていた。

 だがアビーはその様子を見られて恥ずかしくてたまらない。

「旦那様…もう少し離れてください…。」

 そうしおらしくお願いすると、ケロウは笑いながら言った。

「こんな可愛い人が隣にいるのに、我慢なんてできないよ…。」

 アビーの髪にキスを落とす。流石に、その光景にアレアとダンの方が照れてしまっていた。

 後ろに控えて見ていたリリーだけは、顔を歪ませて、アビーを凝視していた。

「そうだ、2人ともよかったら今日は泊まって行かないかい?」

 ケロウが言うと、すかさずアレアは

「実はそのつもりで来たのよ。」

 そう言ってダンの顔を見た。

「あぁ!私も君ともっと話したいからね。」

2人は顔を合わせるなり、何か隠しているのか悪戯顔のまま見つめ合っていた。

アビーは、2人の仲睦まじい姿に幸せをもらった気分になっていた。

 そうして、アレア達が泊まることとなり、アビーは一度下がらせてもらい他の使用人と共に準備を始めた。

 そんな中、アビーが一人で洗い物をしていると、リリーが後ろに立っていた。

 アビーを見るや否や、

「貴方って図々しいのね!前にも言ったじゃない!身の程をわきまえなさいよ!」

 リリーは、アビーを睨みつける。睨まれて物怖じしてしまう。アビーは、リリーの気持ちを考えるあまり黙るしかできなかった。

 自分の立場も考えず、ケロウの優しさに甘えてる自分にも自覚がある。

 そうして俯くアビーに、追い討ちをかけるかの様に言葉を放った。

「自覚したのなら、自分から身を引きなさい。いつまでそうしてるつもり…」

「リリー…そこまでだよ。」

 リリーが言い掛けた瞬間上からケナが言葉を被せた。

「リリー…いつからそんな子になっちまったんだい?こんな事をして、カーラ様が喜ぶと思うのかい?カーラ様が悲しむ事はおよし。それにアレア様やダン様だって悲しむよ。」

 ケナは、悲しげにリリーに訴える。アビーは黙ったままその様子を見ていた。
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