月夜の恋

はなおくら

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 今アビーはハリソンの家に来ていた。

 ケロウとは、いつも通り過ごしているが、積極的な姿勢に揺れてしまう。心臓の為にもと街に出て来ていた。

 ハリソンの元へ向かうと、彼はお店の準備をしていた。

 お店の中は、アビーが見たこともないような家具や小物が置いてあり、見ているだけでも楽しいものだった。

 お客は少なく、ふとハリソンが何者なのか気になり聞いた。

「ねぇ…ハリソンは普段は何をしているの?」

 そう言われたハリソンは、気まずげに視線を逸らす。

「…まぁ…なんだろうね?気にしなくていいよ。」

 そう言って違う話に変えられた。

「アビーは、好きな人はいないの?」

「えっ?」

 アビーは驚いた。ハリソンとは、いつも世間話や今日あったことを話して過ごしていたので、そんな事を聞かれるとは思いもしなかった。

「いるよ……。」

 アビーは恥ずかしげに答える。

「私が、小さい頃からずっと好きだったの。今は夢のような事が起きてるんだけどね…。」

 そう言って、何気なく話したが、ハリソンにも好きな相手がいないのか気になりアビーは聞いてみることにした。

「ハリソンはいないの?」

 そう聞くと、ハリソンの目つきが変わった。

「いるよ…一目惚れした人がね…。」

 そう言って、アビーの顎を掴んだ。

「……えっ?……。」

 アビーは目を見開いた。ハリソンが何かを言おうとした時、

「すいません!」

 普段入らない客が店に入ってきた。アビーは、ハハッと笑った。

「ハリソン‼︎からかわないで!フフフっ…。」

 ハリソンは、不機嫌になりながらも客の方へと足を進めた。

 日が沈んできた頃、アビーはハリソンと共に屋敷への帰り道を歩いていた。

「ハリソン、今日も楽しかったわ!また遊びに行っていいかしら?」

「構わないよ。いつでも待ってる。」

「ありがとう!でも今日みたいにからかうのはやめてね‼︎」

 アビーが笑いながらハリソンを見ると、ハリソンは、足を止めて、

「からかってなんかいないよ…。」

 そう言ってアビーを見つめる。2人の間に温かな風が吹いた。

 アビーはドキッとして何かを言おうとした時、ケロウは笑った。

「冗談だよ!困らせてごめんね。」

そう言って先を歩いた。その後ろにアビーも追いかけて行く。

アビーは、ハリソンの気持ちに気づきもしなかった。
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