月夜の恋

はなおくら

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友人

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 アビーは、パーティ以降普段通りに付き人として働いているが、どこかケロウと気まずくしていた。

 ハンスがどうしたものかと心配する程だった。

アビー自身、ケロウとの心が離れている事を実感して寂しさを感じていた。

 数日後、今日アビーは仕事が休みなので、何をしようかと考えていた。ここにいれば気持ちも塞ぎ込んでしまう。そう考え、外出することにした。

 思い出したのが、あの青年の事だった。早速会いに行ってみようと支度をして街へと出かけた。

 街は賑わいを見せており、街の人々の笑顔は絶える事を知らない様だった。

 それもこれもケロウ様の、頑張りだとアビーは誇らしく思った。

 街を見ていると、まるでケロウが側にいる様な気がして心が満たされていく。

 街を楽しく散策していると、青年が言っていた店にの前に到着した。

 店は空いていない様だったので、裏口の戸を叩いた。中からあの青年が顔を出した。

 アビーは出会った時と違う格好をしていたので、内心不安に思っていたが青年は嬉しそうな顔で出迎えてくれた。

「よく来たね。さぁ入って!」

 アビーは中に入ると、部屋は木の家具に木の香りで包まれて落ち着いたところだった。

「ごめんなさい。急にきてしまって。」

「気にしないで。君が来てくれて嬉しいよ。そうだ!次にあったら名前を教えるって言ってたよね。僕の名前はハリソン。よろしくね。」

「私はアビーよ。改めてよろしくね。ハリソンあなた私の格好を見て驚いたでしょ?」

「あぁ、でも君は君だからね。気にならなかったよ。君はどうしてパーティにいたの?」

 ハリソンは不思議だった。アビーはどう見ても普通の子だと。何かわけがあったのだろうかと。

「詳しくは言えないけど、一度だけ出席をと頼まれていたの。恥ずかしいところを見せてしまっていたけれど…。」

「そうだったのか…。」

 ハリソンは納得した。そして自分の事もアビーに伝えた。

「あの時は、僕も友人の招待で来ていたんだ。めんどくさかったんだが、行ってみるものだね。君という友人に出会えたんだから…。」

 そう言って2人で笑い合った。ハリソンとの時間はあっという間に過ぎていく。

 気づけば帰る時間になっていた。アビーは立ち上がり言った。

「ハリソン、今日はありがとう。」

 アビーが帰ろうとすると、ハリソンは立ち上がり。

「そこまで送っていくよ。」

 そう言って2人で、夕日を背に歩き出した。

「ここでいいわ。送ってくれてありがとう。」

「いいんだ。僕はいつでもいるからまた好きな時においでよ。待ってるから…。」

 アビーは、コクリと頷くと手を振って屋敷に帰っていた。





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