月夜の恋

はなおくら

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貫き

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 ケロウの付き人は、アビーにとって充実していた。

 そんなある日、領主が集まるパーティーに、パートナー同伴での招待状が届いた。

 ケロウは、奥方カーラがいた頃は共に出ていた。けれどもカーラが亡くなり、パートナー同伴のパーティーを極力避けてきたのだが、今回は大事な取引相手との面会もあり考えあぐねていた。

 隣にいたハンスも困った。

「旦那様、こう言ってはなんですが…代役を立てるのはどうでしょう?」

「あぁ…だがなかなか決断できない。それに代役のお相手が誤解してしまっては失礼だろう。」

「それでしたら、身分の高くない者に頼むのはいかがでしょう?その方でしたら一度きり、噂になっても正体はわからないはずです。」

「そうだな…。」

 2人が悩んでいる中、アビーが決まった時間にお茶を運んできた。

「失礼します。」

 そう言って、スムーズな動きでお茶をいれた。

 その時、ハンスはそうだとばかりにケロウに言った。

「旦那様!アビーにお願いするのはいかがですか?」

「しかし……。」

 ケロウが渋っていると、アビーはキョトンとしていたが、口を開いた。

「どうかされましたか?何か手伝える事が有れば、おっしゃってください。では。」

 そう言って、頭を下げ部屋を出た。

 その姿を見ていたケロウは、はっきりと答えた。

「ハンスの意見でいこう。今までは、カーラがいてくれたが、今回は仕方ない。アビーに頼んでみよう。」

「旦那様…わかりました。後ほどアビーを呼んで参ります。」

 数時間後、アビーは、ケロウの部屋の前で立ち止まった。

(どうかされたのかしら?)

「失礼します。旦那様、お呼びでしょうか?」

「あぁ!実は君に協力してほしい事がある。取引先相手との約束の為パーティーがあるんだが、パートナーがいないと入れないんだ。君に相手をお願いしたいんだが、どうだろ?」

 アビーはびっくりしてしまったが、ケロウの力になれるならとすぐ快諾した。

「わかりました。わたしでお役に立てるなら…」

 仕事だと切り替え返事をしたが、内心はとても嬉しかった。

「パーティーは三日後だ。それまでに準備の手配をしておくから、しばらく仕事を休みなさい。」

「わかりました。お言葉に甘えさせて頂き恥ずかしく無いよう準備致します。」

 こうして、パーティーまでの準備が始まった。

ケロウは、ハンスにアビーの案内を任せた。

「アビーには、これからあなたを磨いてくれる方々を部屋に案内させるから、リラックスして待っていなさい。」

「わかりました。」

 そうして待っていると、何人かの女性が入ってきてアビーに礼をし、身体を磨いていく。

 アビー自身はじめての体験で、最初こそ緊張していたが慣れてくるとパーティー当日が楽しみになってきた。

 しかし自分自身調子に乗ってはいけないと、戒めた。

(旦那様は、奥様を今も愛してらっしゃる。わたしは、代わり…絶対勘違いしちゃいけない。)

 そう戒めるが、自分が悲しくなってきた。でも諦める事もできない…。だからひっそりと、見つめ様と気持ちを再確認させた。



 



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