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初心
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アビーは、緊張していた。今日から新しい仕事を覚える事もだが、ケロウが近くにいる事にもドキドキが止まらなかった。
幸いしばらくは、執事のハンスがサポートに回ってくれる為、心臓はまだ落ち着いている。
「旦那様、今日からよろしくお願いします。」
「あぁ…よろしく頼む。」
ケロウの付き人は、以前の決まっていた仕事とは異なっていた。以前は決まったルートで回ればよかったのだが、今は臨機応変な行動を求められる。
なかなか慣れずに、ハンスからお叱りを受けてしまう。
ケロウはそれを見つけると、アビーを庇ってくれる。
アビーは情けなく感じる反面、守られる事が嬉しくてたまらない。
だからと言って、仕事に手を抜く事は絶対にしなかった。
ある日、ケロウにお茶を出そうとした時、手が滑り机の書類にお茶が被ってしまった。
あまりの事に固まるアビーだったが、横からハンスが、声を掛けた。
「旦那様、申し訳ありません。」
その言葉にアビーも慌てて続けた。
「申し訳ありません!すぐ布巾をお持ちします!」
そう言って部屋から出た。
アビーが部屋を出た後、残されたハンスとケロウ。ハンスは、また深々とお辞儀をした。
「申し訳ありません。私が後ほど叱責致します。」
「いや、私が行こう。私が伝えるからハンスはいつも通りに。」
「しかし旦那様は、アビーに少し甘い気がするのですが……」
「真面目に取り組んでいるんだ。何でもかんでも叱るのは違うと思うだけだよ。ハンスを信じてないわけじゃないから誤解しないように。」
「はい、私は気に致しませんがお心遣いありがとうございます。」
お辞儀をしたハンスは微笑んだ。
一方、アビーは泣きながら布巾の準備をしていた。
(大切な書類を台無しにしてしまった。私何してるんだろう…)
そう思っていると後ろから声を掛けられた。
「大丈夫かい?」
ふと振り向くとケロウが立っていた。
アビーは慌てて、頭を下げ
「申し訳ありません。大切な書類に…」
そう言いかけて、アビーの涙が溢れ出した。
するとケロウが、アビーの頭を撫でた。はっとアビーが、遠慮気味に離れようとすると、強引に頭を抑えられまたガシガシと撫でられた。
「少し庭を歩こう。」
そう言って、泣いてるアビーの手を引いてケロウは歩き出した。
「ここの花は思い入れ深くてね。嫌な事が有るとここに来て花たちに癒されているんだ。」
アビーは、泣いてしまい返事ができずにいた。ケロウは気にする様子もなく歩く。
その先に、ひっそりとテラスが見えた。
そこにアビーを座らせると、隣にケロウも続けて座った。
「他の使用人には、言った事が無いんだが君は特別にここを使っていいよ。」
そう言ってアビーの頭を優しく撫でてくれた。
撫でられているうちに、アビーも落ち着きを取り戻してきた。
「落ち着いてきたね。さぁもう過ぎたことは気にしないで。花達を見て癒されよう!花達も見られる方が喜ぶだろうしね」
「旦那様、ありがとうございます。」
そしてケロウの隣で花を愛でていた。
気づくと夕方になっていた。アビーはハッとした。
「旦那様、ここに連れてきて頂いて光栄なのですが、お仕事をお止めしてしまい申し訳ありません。」
「んーっ!せっかく和んでたの…やっぱり気になるんだね。」
「はい。でも旦那様のおかげで、気持ちが晴れました。」
アビーは、ふふっと笑ったが、よくよく考えてみると、ケロウと2人きりだと気づくと、顔が一気に熱くなった。
意識してしまうと、後は早い。動揺してしまいさっきまで普通に話せていたのがどもってしまう。
「あっ…あの…旦那様…そろそろお戻りにならないと…。」
「そうだね。あーあ残りの書類を片付けるのはめんどくさいなぁ。誰か一緒にしてくれないかなぁ…。」
そう言ってアビーの方をニヤッと見て笑った。これはケロウ自身がアビーが後々気にしないようにと思っての言葉だった。
仕事の話になりアビーは、もちろんと言うように答えた。
「お手伝い致します。今日は出来上がるまでご一緒します。」
そうして、部屋に戻り2人で仕事を再開させた。終わった頃には夜が明けていた。
ケロウが、顔を上げるとアビーは椅子にコクリコクリと眠っていた。
アビーを横抱きにして、ソファーで寝かせ近くの毛布をかける。
ケロウはアビーの寝顔を見て呟いた。
「よく頑張ったね。これから期待しているよ。」
あれから半年後、アビーは誰もが認める程の付き人に成長していた。
ケロウも、アビーに強い信頼を寄せていた。
「アビー。この半年で見違えるようだ。よく頑張ってくれているね。」
「恐れ多いお言葉です。私もまだまだですので」
そう返して、微笑みあった。
幸いしばらくは、執事のハンスがサポートに回ってくれる為、心臓はまだ落ち着いている。
「旦那様、今日からよろしくお願いします。」
「あぁ…よろしく頼む。」
ケロウの付き人は、以前の決まっていた仕事とは異なっていた。以前は決まったルートで回ればよかったのだが、今は臨機応変な行動を求められる。
なかなか慣れずに、ハンスからお叱りを受けてしまう。
ケロウはそれを見つけると、アビーを庇ってくれる。
アビーは情けなく感じる反面、守られる事が嬉しくてたまらない。
だからと言って、仕事に手を抜く事は絶対にしなかった。
ある日、ケロウにお茶を出そうとした時、手が滑り机の書類にお茶が被ってしまった。
あまりの事に固まるアビーだったが、横からハンスが、声を掛けた。
「旦那様、申し訳ありません。」
その言葉にアビーも慌てて続けた。
「申し訳ありません!すぐ布巾をお持ちします!」
そう言って部屋から出た。
アビーが部屋を出た後、残されたハンスとケロウ。ハンスは、また深々とお辞儀をした。
「申し訳ありません。私が後ほど叱責致します。」
「いや、私が行こう。私が伝えるからハンスはいつも通りに。」
「しかし旦那様は、アビーに少し甘い気がするのですが……」
「真面目に取り組んでいるんだ。何でもかんでも叱るのは違うと思うだけだよ。ハンスを信じてないわけじゃないから誤解しないように。」
「はい、私は気に致しませんがお心遣いありがとうございます。」
お辞儀をしたハンスは微笑んだ。
一方、アビーは泣きながら布巾の準備をしていた。
(大切な書類を台無しにしてしまった。私何してるんだろう…)
そう思っていると後ろから声を掛けられた。
「大丈夫かい?」
ふと振り向くとケロウが立っていた。
アビーは慌てて、頭を下げ
「申し訳ありません。大切な書類に…」
そう言いかけて、アビーの涙が溢れ出した。
するとケロウが、アビーの頭を撫でた。はっとアビーが、遠慮気味に離れようとすると、強引に頭を抑えられまたガシガシと撫でられた。
「少し庭を歩こう。」
そう言って、泣いてるアビーの手を引いてケロウは歩き出した。
「ここの花は思い入れ深くてね。嫌な事が有るとここに来て花たちに癒されているんだ。」
アビーは、泣いてしまい返事ができずにいた。ケロウは気にする様子もなく歩く。
その先に、ひっそりとテラスが見えた。
そこにアビーを座らせると、隣にケロウも続けて座った。
「他の使用人には、言った事が無いんだが君は特別にここを使っていいよ。」
そう言ってアビーの頭を優しく撫でてくれた。
撫でられているうちに、アビーも落ち着きを取り戻してきた。
「落ち着いてきたね。さぁもう過ぎたことは気にしないで。花達を見て癒されよう!花達も見られる方が喜ぶだろうしね」
「旦那様、ありがとうございます。」
そしてケロウの隣で花を愛でていた。
気づくと夕方になっていた。アビーはハッとした。
「旦那様、ここに連れてきて頂いて光栄なのですが、お仕事をお止めしてしまい申し訳ありません。」
「んーっ!せっかく和んでたの…やっぱり気になるんだね。」
「はい。でも旦那様のおかげで、気持ちが晴れました。」
アビーは、ふふっと笑ったが、よくよく考えてみると、ケロウと2人きりだと気づくと、顔が一気に熱くなった。
意識してしまうと、後は早い。動揺してしまいさっきまで普通に話せていたのがどもってしまう。
「あっ…あの…旦那様…そろそろお戻りにならないと…。」
「そうだね。あーあ残りの書類を片付けるのはめんどくさいなぁ。誰か一緒にしてくれないかなぁ…。」
そう言ってアビーの方をニヤッと見て笑った。これはケロウ自身がアビーが後々気にしないようにと思っての言葉だった。
仕事の話になりアビーは、もちろんと言うように答えた。
「お手伝い致します。今日は出来上がるまでご一緒します。」
そうして、部屋に戻り2人で仕事を再開させた。終わった頃には夜が明けていた。
ケロウが、顔を上げるとアビーは椅子にコクリコクリと眠っていた。
アビーを横抱きにして、ソファーで寝かせ近くの毛布をかける。
ケロウはアビーの寝顔を見て呟いた。
「よく頑張ったね。これから期待しているよ。」
あれから半年後、アビーは誰もが認める程の付き人に成長していた。
ケロウも、アビーに強い信頼を寄せていた。
「アビー。この半年で見違えるようだ。よく頑張ってくれているね。」
「恐れ多いお言葉です。私もまだまだですので」
そう返して、微笑みあった。
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