月夜の恋

はなおくら

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 ケロウが回復してから、アビーは元の仕事に戻っていた。

 今皿洗いをしているが、頭の中はケロウの世話をした日々を思い出してはニヤニヤしてしまう。

 そうしていると、ケナが声を掛けてきた。

「旦那様の世話ご苦労だったね。大丈夫だったかい?」

「はい。問題ありませんでした。」

 そう言ってアビーが笑って返すと、にんまりと笑ったケナが言った。

「アビー。旦那様の事が、好きなんだろう?」

 アビーはその言葉に慌てて返した。

「ちっ…違います!私は一使用人としてお慕いしてるといいますか…!」

「ふふ!まぁそう言う事にしておこうか。」

 からかった様子で、ケナは仕事場を後にした。

 それからは、元の仕事に戻りいつも通り働いた。変わった事と言えば、仕事も慣れてきてか、部屋に戻って自分の時間ができてきた。

 前までは、すぐベッドだったが今では、自分の時間が取れるようになった。

 そして1日の最後には、ケロウの事を考えて祈り眠るのが日課になった。

 数日後、ケナに旦那様から呼ばれていると、伝言をもらい旦那様の部屋へ向かった。

 コンコンっと戸を叩くと、

「入ってくれ。」

 中から声が聞こえてきた。

「失礼します。旦那様お呼びでしょうか?」

 そう言って顔を上げると、ケロウとハンスが居た。

 横に控えていたハンスが口を開いた。

「旦那様が、君の働きを気にいってね。旦那様の世話役を務めてもらいたいどうだろう?」

 唐突な言葉に、驚きで固まってしまった。それを見たケロウが、哀しげに

「君が嫌で有れば、無理強いはしない。君の意見を聞かせて欲しい。」

 アビーは慌てて口を開いた。

「よろしくお願いします。」

 驚きすぎて、何も考えれなかったが、とっさにそう返していた。

ケロウは、笑顔で

「じゃあ決まりだね。明日からよろしく頼む。ハンス彼女が慣れるまで身の回りのサポートを頼んだよ。」

「わかりました。彼女には、業務の事で説明がありますのでこれで失礼します。


「あぁ。」

 ハンスが礼をしたので、アビーも慌てて一緒に礼をして部屋を出た。

 部屋を出てから、ハンスは今後のことについて口を開いた。

「今日から旦那様の付き人という事で説明します。あなたには、雑用や旦那様にお茶を入れて差し上げる事。用がないときは、隣で呼ばれるまで控えておく。これがあなたの仕事です。」

 ハンスは一通り話すと、明日から大変だろうと、今日一日休暇をアビーに伝えた。

アビーは部屋に戻りしばらくぼーっとしていたが自覚してみると、喜びではしゃいだ。

(旦那様の側でお支えできるなんて、とても幸せ!明日から一から頑張ろう!)

 そうして流行る胸をなんとか抑えて眠った。
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