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対面
しおりを挟む いよいよ屋敷へ向かう日が来た。アビーは、期待と不安でドキドキしていた。
見送りにと、両親と兄が来ていた。兄のカルンは心配気に
「身体に気をつけて、いつでも帰っておいで」
そう言ってアビーを抱きしめた。両親も涙を流しながらアビーを見送った。
「いってきます!」
そう言って、アビーは歩き出した。屋敷に着くと、執事のハンスが出てきた。
「今日からお世話になります。アビーと申します。よろしくお願いします。」
「執事をしているハンスです。あなたには炊事場の掃除係に就いてもらおうと思います。まず初めに領主様にご挨拶に行きましょう。ついてきてください。」
そう言ってハンスは歩き出し、アビーも続いて歩き出した。
領主の部屋の前に着き、ハンスが戸を叩き声を掛けた。
「旦那様、新しい使用人をお連れしました。」
「……入りなさい。」
ハンスと共に中に入ると、アビーは驚いた。幼少の頃に見ていた時と比べて、目の下に隈があり、とても疲れている表情をしていた。しかし大人びた魅力は滲み出ている。
頭を下げ、領主の言葉を待つ。
「…よろしく頼む。」
その言葉に、頭を下げた。横からハンスが退席の挨拶をして、共に部屋を出た。
(あっという間だったな…)
アビーは残念に思いもしたが、ケロウに声を掛けてもらえたと嬉しく思った。
ハンスに連れられて、炊事場に入った。中では皆せっせっと働いていた。
その中から、がたいのいい女性が近づいてくると、
「この子が今日から働く子ですかい?」
「そうです。面倒をよろしくお願いします。アビー、この人はメイド長のケナです。メイド長に仕事のことを聞くように」
そう言って、ハンスは戻って行った。
アビーは息を一つ吐き、
「アビーです!今日からお世話になります。よろしくお願いします。」
「元気のいい子だね!さぁ…早速仕事に入ろう。ついておいで‼︎」
こうしてアビーの屋敷での生活が始まった。
新人メイドの朝はとても早い。他の者が起きる前に、川に降りて樽いっぱいに水を汲み、炊事場の清掃を行う。そしてキッチンで出た食器を洗い、昼には洗濯をする。
そうしているとあっという間に1日が終わってしまう。
アビーは、黙々と精一杯働いた。そして夜には倒れるように眠った。
屋敷の仕事に慣れてきた頃、ケナに声を掛けられた。
「アビー。すまないがしばらく旦那様の世話役をしてくれないかい?」
アビーにとって願ってもない話だった。でもふと不思議に思った事があった。旦那様にはお付きの使用人がいるはずとなのに何故なのか。ケナに聞いてみた。
「それは大変光栄なのですが何かあったのでしょうか?いつもの使用人の方は?」
「実はね、旦那様の付き人がやめてしまってね…。次の付き人を決めようと思った矢先に、旦那様が倒れられてね。それで信頼できる者にしばらく付いてもらうって事になったんだよ。」
その言葉に、心配でどうにかなりそうだった。身体はどうなのか、お辛い想いをしてないか。
「新人の私でいいんでしょうか?」
「大丈夫さ!アビーの働きはみてきたからね。ハンス様も褒めていたよ。どうだい?やってくれないかい?」
アビーも戸惑いはしたものの、ケロウの身体が心配でもあったので、
「是非やらせて下さい。」
「すまないねぇ…。アビーならしっかりしてるから大丈夫だよ。旦那様を頼んだよ。何かあれば遠慮せず言うんだよ!」
「はい!」
そう言って、アビーは旦那様に早く元気になれるよう祈りながらも先を急いだ。
見送りにと、両親と兄が来ていた。兄のカルンは心配気に
「身体に気をつけて、いつでも帰っておいで」
そう言ってアビーを抱きしめた。両親も涙を流しながらアビーを見送った。
「いってきます!」
そう言って、アビーは歩き出した。屋敷に着くと、執事のハンスが出てきた。
「今日からお世話になります。アビーと申します。よろしくお願いします。」
「執事をしているハンスです。あなたには炊事場の掃除係に就いてもらおうと思います。まず初めに領主様にご挨拶に行きましょう。ついてきてください。」
そう言ってハンスは歩き出し、アビーも続いて歩き出した。
領主の部屋の前に着き、ハンスが戸を叩き声を掛けた。
「旦那様、新しい使用人をお連れしました。」
「……入りなさい。」
ハンスと共に中に入ると、アビーは驚いた。幼少の頃に見ていた時と比べて、目の下に隈があり、とても疲れている表情をしていた。しかし大人びた魅力は滲み出ている。
頭を下げ、領主の言葉を待つ。
「…よろしく頼む。」
その言葉に、頭を下げた。横からハンスが退席の挨拶をして、共に部屋を出た。
(あっという間だったな…)
アビーは残念に思いもしたが、ケロウに声を掛けてもらえたと嬉しく思った。
ハンスに連れられて、炊事場に入った。中では皆せっせっと働いていた。
その中から、がたいのいい女性が近づいてくると、
「この子が今日から働く子ですかい?」
「そうです。面倒をよろしくお願いします。アビー、この人はメイド長のケナです。メイド長に仕事のことを聞くように」
そう言って、ハンスは戻って行った。
アビーは息を一つ吐き、
「アビーです!今日からお世話になります。よろしくお願いします。」
「元気のいい子だね!さぁ…早速仕事に入ろう。ついておいで‼︎」
こうしてアビーの屋敷での生活が始まった。
新人メイドの朝はとても早い。他の者が起きる前に、川に降りて樽いっぱいに水を汲み、炊事場の清掃を行う。そしてキッチンで出た食器を洗い、昼には洗濯をする。
そうしているとあっという間に1日が終わってしまう。
アビーは、黙々と精一杯働いた。そして夜には倒れるように眠った。
屋敷の仕事に慣れてきた頃、ケナに声を掛けられた。
「アビー。すまないがしばらく旦那様の世話役をしてくれないかい?」
アビーにとって願ってもない話だった。でもふと不思議に思った事があった。旦那様にはお付きの使用人がいるはずとなのに何故なのか。ケナに聞いてみた。
「それは大変光栄なのですが何かあったのでしょうか?いつもの使用人の方は?」
「実はね、旦那様の付き人がやめてしまってね…。次の付き人を決めようと思った矢先に、旦那様が倒れられてね。それで信頼できる者にしばらく付いてもらうって事になったんだよ。」
その言葉に、心配でどうにかなりそうだった。身体はどうなのか、お辛い想いをしてないか。
「新人の私でいいんでしょうか?」
「大丈夫さ!アビーの働きはみてきたからね。ハンス様も褒めていたよ。どうだい?やってくれないかい?」
アビーも戸惑いはしたものの、ケロウの身体が心配でもあったので、
「是非やらせて下さい。」
「すまないねぇ…。アビーならしっかりしてるから大丈夫だよ。旦那様を頼んだよ。何かあれば遠慮せず言うんだよ!」
「はい!」
そう言って、アビーは旦那様に早く元気になれるよう祈りながらも先を急いだ。
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