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いつの間にか彼とも夫婦らしい生活に戻っていた。
そんなある日、ハーブ嬢が訪問してきた。
最初はハリアに用事かと思えば、私宛だった。
私自身もこれまでのことを話し合いたくて、彼女の待つ部屋へと訪れた。
「お待たせしました。」
私が部屋に入るの彼女は立ち上がって頭を下げた。
二人で一緒に座って、お茶を飲んだ。
カップを机に戻して、しばらく沈黙が続いた。
私は彼女に謝った。
「貴方に手紙まで送って、振り回してごめんなさい。」
そういうとハーブ嬢は首を振った。
「その件はもういいんです。私も貴方の行動を利用してしまったところがありますから…。」
「………。」
「ですが…ご夫人にこんなこと言うのはおかしいと思いますが、私は諦めません。」
彼女の一言に私は目を見開いた。
「ハリア様からはお断りされてしまいましたが、初めての恋だったのです。だから諦めません。」
強い眼差しをこちらに向ける彼女が羨ましくなってしまうほど、まっすぐな目をしていた。
私はこの時、何も言い返すことができなかった。
それからどうしたのか、いつの間にかハーブ嬢は帰ってしまい、私は冷めたお茶を眺めていた。
彼女がまっすぐと言い放った言葉が忘れられない。
私も彼を愛してる。
でも彼女と違って、臆病で弱い人間だ。
だんだんと自己嫌悪を抱いてしまう。
頭を抱えて、眉間に皺が寄っていたその時、ハリアが帰ったと聞き、急いで玄関へ出迎えた。
玄関では外着を執事に預けているハリアが笑ってこちらに近寄ると、ぎゅっと抱擁を交わしてくれた。
彼の温もりを感じて今日起きたことが、少し癒されてくる。
彼と夕食を過ごして、寝室へと入った。
彼の胸の中で目を閉じて、夢の中へと入ったのだった。
次の日、彼と共に本を読んで過ごしていた時のことだった。
「もうすぐ、王太子殿下の婚約者が決められるそうなんだ。」
「私の方にも招待状が届いてたわ。」
そう言って彼に招待状の入った封を見せた。
「婚約者候補以外にも余興で貴族の集まりをするらしい。」
ハリアは、封筒に書いてあった内容を話した。
「その時、仮面を被り分け隔てなくダンスをしなくてはならないみたいだ。」
忌々しそうな顔をしながら彼は呟いた。
「変わったことをするわね…。」
「君が他の男と踊るなんて考えたくもないよ。」
不機嫌な顔をして言う彼が愛おしくなった。
「大丈夫よ。私には貴方しかいないんだから!」
笑って話す私にハリアは、頭を預けてきた。
「絶対だよ…。」
なお彼が愛おしくなって、私は笑っていったのだった。
そんなある日、ハーブ嬢が訪問してきた。
最初はハリアに用事かと思えば、私宛だった。
私自身もこれまでのことを話し合いたくて、彼女の待つ部屋へと訪れた。
「お待たせしました。」
私が部屋に入るの彼女は立ち上がって頭を下げた。
二人で一緒に座って、お茶を飲んだ。
カップを机に戻して、しばらく沈黙が続いた。
私は彼女に謝った。
「貴方に手紙まで送って、振り回してごめんなさい。」
そういうとハーブ嬢は首を振った。
「その件はもういいんです。私も貴方の行動を利用してしまったところがありますから…。」
「………。」
「ですが…ご夫人にこんなこと言うのはおかしいと思いますが、私は諦めません。」
彼女の一言に私は目を見開いた。
「ハリア様からはお断りされてしまいましたが、初めての恋だったのです。だから諦めません。」
強い眼差しをこちらに向ける彼女が羨ましくなってしまうほど、まっすぐな目をしていた。
私はこの時、何も言い返すことができなかった。
それからどうしたのか、いつの間にかハーブ嬢は帰ってしまい、私は冷めたお茶を眺めていた。
彼女がまっすぐと言い放った言葉が忘れられない。
私も彼を愛してる。
でも彼女と違って、臆病で弱い人間だ。
だんだんと自己嫌悪を抱いてしまう。
頭を抱えて、眉間に皺が寄っていたその時、ハリアが帰ったと聞き、急いで玄関へ出迎えた。
玄関では外着を執事に預けているハリアが笑ってこちらに近寄ると、ぎゅっと抱擁を交わしてくれた。
彼の温もりを感じて今日起きたことが、少し癒されてくる。
彼と夕食を過ごして、寝室へと入った。
彼の胸の中で目を閉じて、夢の中へと入ったのだった。
次の日、彼と共に本を読んで過ごしていた時のことだった。
「もうすぐ、王太子殿下の婚約者が決められるそうなんだ。」
「私の方にも招待状が届いてたわ。」
そう言って彼に招待状の入った封を見せた。
「婚約者候補以外にも余興で貴族の集まりをするらしい。」
ハリアは、封筒に書いてあった内容を話した。
「その時、仮面を被り分け隔てなくダンスをしなくてはならないみたいだ。」
忌々しそうな顔をしながら彼は呟いた。
「変わったことをするわね…。」
「君が他の男と踊るなんて考えたくもないよ。」
不機嫌な顔をして言う彼が愛おしくなった。
「大丈夫よ。私には貴方しかいないんだから!」
笑って話す私にハリアは、頭を預けてきた。
「絶対だよ…。」
なお彼が愛おしくなって、私は笑っていったのだった。
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