再びあなたに会えて…

はなおくら

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「…それは大変だ…ご夫人もさぞご心配でしょう…。」

「…はい…。」

 心配するそぶりを見せる王太子に、どう切り出せばいいのか正直なところわからない。

「王太子殿下…お心当たりはありませんか?」

「………。」

 王太子殿下はしばらく黙っていたが、ゆっくりと恐ろしいほど低い声で言った。

「私を疑って…?」

 さすが時期国王の座に着くと言われているだけあって彼からの圧のかかった態度に怯みそうになる。

「主人は王太子殿下にお会いになると言って家を空けました。そのすぐ後から消息がつかめていないのです。」

「…ふっ…くくくっ…そうでしたか!……なら仕方ないですね…。」

 王太子殿下は笑ったと思った次の瞬間、私の隣に腰を落とした。

 距離を空けようと逃げようとしたその時、腰を掴まれ顎を持ち上げられた。

「さすがご夫人だ。あたりですよ…あなたの夫君は私が秘密裏に捉えさせていただきました。」

 私は彼にせっついて問いただした。

「何故ですか!?彼が何をしたというのですか!?」

 王太子は不愉快そうに答えた。

「あなたと私の邪魔をし、私に対する侮辱と捉えました。」

「そんな…。」

 ジョセフ様は私を守ろうとしてくれたのにこんなことになってしまった…。

「お願いです…ジョセフ様を解放してください…。」

「…それは無理ですねぇ…。」

「お願いですから…。」

 泣いて縋る私の顔を見ながら笑顔を浮かべる王太子に腹が立ったが、どうにかジョセフ様をと必死で頼み込む。

 すると王太子殿下は、恐ろしいことを口にした。

「でしたら…あなたが私の愛人として王宮に残ってください、それならお約束しましょう…。」

「それは…!」

 一瞬動揺したが、否定したいがわかっていたことでもあった。

「わかり…まし…た…。」

 私はジョセフ様を解放してもらうためこの案を受け入れた。

「あぁ…嬉しいです…。これからは私があなたの願いを叶えて差し上げますからね…。」

 その言葉に私は王太子にある事を願った。

 あれから王太子の命令で煌びやかなドレスに身を包んだ。

 満足そうな王太子の横でだんだん目から色を失う様な感覚に囚われていった。

 ここに残ればもう愛する人たちには会えなくなる。

 一人残したジョナサンを思いつらくなった。

 しかしここに呼び寄せればどんな恐ろしい目に遭うかわからない。

 涙を流す私を愛でる人形の様に王太子殿下は抱きしめてくる。

 そして王太子殿下に頼んだある事の為、私は一人で護衛に連れられて、ジョセフ様のいる牢屋へ向かった。

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