花嫁の勘案

はなおくら

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 まだまだ不安は多いけれど、やれるかもしれない。

 自信がついた様な気がした。

 気持ちも高揚したことでわたしは屋敷の自室帰ってきた。

 しかしそこに待っていたのはヴォルス様だった。

 彼の隣には震える侍女がいた。

「これは…いったい…。」

「ナタリア…どこにいってたんだ?」

 表情がわからないほど無表情なヴォルス様にわたしも震えた。

「………。」

 何も答えない私を一遍して、隣にいる侍女に声をかけた。

「お前がついていながら、何をしている。」

「…も…申し訳…ありません。」

 震える侍女をみて、わたしは咄嗟に彼女の元に走った。

 そして大丈夫だと体を抱きしめた。

 すると彼女は少し落ち着いた様だった。

「ヴォルス様。彼女は関係ありません…私が気晴らしがしたいとお願いしたことなんです。だから怒りを沈めてください。」

「………出ていけ…。」

 ヴォルス様はそうつぶやいた為、わたしは彼女を他の使用人に任せた。

 皆が部屋を出ていった瞬間、ヴォルス様はわたしを抱きしめてきた。

「心配した。」

「……だからと言って使用人を傷つけるのは…どうかと…思います。」

 内心怖かった。

「……どこにいってたんだ?」

 するとまた低い声で聞かれる。

 体が萎縮するのがわかった。

「少し…街を見て回っていました…。」

「…何故…?」

 何か見抜かれてる様な気がしてヒヤヒヤする。

「本当に気晴らしだったんです…。」

「………。」

 わたしの目を見たままヴォルス様はずっと見つめてくる。

 彼の目が逸らせずにいると、ヴォルス様は一つため息を吐いて言った。

「そうか…。」

「…ご心配をおかけしました…。」

「帰ってきてくれたならいい。」

 彼はわたしを抱き寄せた。

 その時、遠慮気味にドアが開いた。

 そこにいたのはニア様だった。

 彼女と会うのは何日ぶりだろうか。

 考えてみればなかなか会っていなかった。

「ヴォル…それにナタリア様…どうしたのですか?」

 わたしを抱き寄せている光景を見て、彼女の眉が少し歪んだ。

 しかしそれも一瞬の事で気のせいだろうと捉えた。

「ニア、部屋にいてくれと言ったはずだが…。」

 そういうヴォルス様にニア様は涙目で訴えた。

「あなたがいないから不安で…。」

 目の前でシクシクと泣き出した彼女にこれ以上刺激してはとヴォルス様に視線をやった。

「…もう行ってください。」

 そう言って彼から離れてわたしは2人に背を向けた。

「ナタリアっ…まっ…!」

「行きましょう!」

 半ば強引にヴォルス様はニア様に連れられていった。

 やっぱりそう…彼は何故わたしを引き止めようとするそぶりをするのが全くわからない。
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