花嫁の勘案

はなおくら

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 そんな生活をしている中、ヴォルス様は毎夜私のベッドに潜り込んでくることが増えた。

 初めは戻る様に伝えたり、していたがわたしが何を言っても彼は後ろからわたしを抱きしめて動こうとしなかった。

 手を出されるわけではないので、今では慣れてしまっている。

 しかし困った事は、夜更けお手洗いへと布団に起き上がれば、彼も目を覚ます。

 そしてどこへいくのかと尋ねられるのだ。

「ヴォルス様…すぐに戻ってきますから…。」

「わたしもついていこう…。」

 そう言われてドアの前で待たれてしまう。

 どうしたものかと思いつつも今回は本人は頑固として譲る気はない様だった。

 わたし自身、悪い気はしなかったのだ。

 そんなとある日、孤児院の寄付の会に私たちは招待された。

 身分も同じで気軽に開ける会なだけあって、招待者の連れであれば誰でも入ることができる。

 あれからニア様は落ち着きを取り戻していた。

 しかしヴォルス様が見えなくなると不安がった。

 わたしが何を言っても、落ち着きのない様子だった。

 そのためわたしは、この会に彼女も招待することにした。

 渋るヴォルス様に押して許可をもらった。

「やはりやめておこう…。」

「ですが、ニア様も不安がっております。ヴォルス様がそばにいないと…。」

 そういうとヴォルス様は不機嫌な表情を浮かべた。

「君は嫌じゃないのか?」

 彼にそう尋ねられてわたしは頷いた。

 嫌じゃないと言えば嘘になるが、2人を邪魔してるのは自分の様な気さえしてくる。

 あれから、ヴォルス様はわたしの身体に触れようとしてくるので、わたしはすかさず止めに入った。

 そうすれば彼は不機嫌になりながらも、わたしを後ろから抱きしめたまま夜を過ごしていた。

 そんな事を思い出しつつも、わたしはヴォルス様の自然から逃げる様に、使用人にニア様の準備をお願いしたのだった。

 パーティーの支度も無事終わり私たちは同じ馬車に乗り込んだ。

 目の前ではヴォルス様の隣に座るニア様が不安そうな表情を浮かべている。

 大丈夫だと言えば安堵した様な表情でうなずき、ヴォルス様を見上げていた。

 今日は目の前にいるからか、2人がお似合いの様に感じる。

 寂しい気持ちを押し隠して、私たちは会場へと入っていった。

 挨拶も済ませて会場の椅子に腰掛けていると、夫人2人の話し声が聞こえてきた。

「シュリット子爵夫妻が連れてこられたご令嬢とても可愛い方ね。」

「本当に………それにご夫人よりもあのご令嬢の方がとてもお似合いね。シュリット子爵もそちらがいいから手放さないのよ。」

「ほんとに。」

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