実は正体を隠していました。

13

　今私は、鏡の前に立っている自分の姿に驚いていた。

　目の前にはレースをふんだんに使い黄金の粉を散りばめたような白いドレスに身を包んだ自分の姿にあってにとられた。

　髪は緑色の髪を高くまとめて、髪飾りはこれも黄金のアクセサリーだ。

　わたしは、豪華な衣装に見惚れながらこうなった経緯を思い出していた。

　彼の膝の上で、頼まれごとをするというと、瞬く間に使用人がわたしを取り囲み着替えの部屋に通された。

　そして、訳もわからずこうなっている。

　しばらく鏡を見つめていると、アロン様が入って来た。

「イゼア…！とても綺麗だよ。」

　後ろからチュっと音を鳴らして口付けた後、後ろから抱きしめて鏡越しにわたしに言う。

「イゼア、君に手伝ってもらいたいのは僕の恋人のふりをして欲しいんだ。」

　意気揚々と言ってくるアロン様にわたしは目を見開いた。

「っ…！何をおっしゃっているんですか⁉︎…それに何故こんな格好を？」

　わたしの質問にアロン様は、嫌そうな顔をしながら答えた。

「…これからまたお見合いがあるんだよ。しかも三人だ…その中の一人は何回も求婚しにくるほどだ…。」

　憂鬱そうなアロン様を横目に、彼が他の女性と一緒にいるのが嫌な気持ちになった。

　だからと言って、率先して協力すると言えば、分別のつかないものだと思われる。

「……お気持ちはお察ししますが、もしわたしの顔を覚えられたらどうするのですか…？」

　呆れてそう問いかけると、アロン様はニヤッと笑った。

「心配ないよ、君にはこのレースを頭に被ってわたしの膝の上で甘えるように顔を隠してもらうから。」

「えぇ…そんな…。」

　いつもしてる事とは言え、人前でそんな姿を晒すのは流石に恥ずかしいと思った。

「そんなんで…大丈夫なのですか…？」

「あぁ…君は人形のように僕の横にいたらいい。」

「はぁ……。」

　半ば強引な気がするが、自分が頼んだ事なので、わたしは任務を遂行する事にした。

　そして、アロン様と中庭で用意されているティーテーブルに座った。

　アロン様がおいでと手を差し出すのでわたしは頭のレースをかぶり、彼の胸に顔を隠した。

　ちょうど彼の上着もあるおかげですっぽりと入ることができた。

「…これから順番に来るからイゼアはおとなしくしててね。」

「はぁ…わかりました…。」

　正直恥ずかしくてどうにかなりそうになりながらもわたしは、彼の胸に寄り添った。

　すると足音が聞こえてくる。

　アロン様は突然わたしの頭を撫で回して、髪の毛にキスを落としたり、背中を優しく撫でた。