11 / 52
11
しおりを挟む
ある日、旦那様のご友人が伯爵家に遊びにいらした。
「モスキー、久しぶりだな。」
「アロンも変わりないな!」
目の前でアロン様と抱き合っている、男性は、アロン様のアカデミーでのご友人になる。
砕けた会話をするお二人を見ていると、モスキー様はわたしの方を見つめて来た。
粗相してはと頭を下げると、モスキー様はアロン様に言った。
「かわいい、執事だな。」
「………そうか?」
少しの沈黙の後、アロン様は返事をする。
なんだか変な空気感を感じつつも、アロン様の部屋にご案内し、お茶を入れ退室した。
その間も彼からの視線に気まずく、お茶を溢しそうになった。
あれから食堂の手伝いを終えて、廊下を歩いていると何やらキョロキョロとしているモスキー様がいた。
「モスキー様、どうなさいましたか?」
「あぁ!かわいい執事ちゃん、君を探していたんだ!」
「私を…?何か粗相をしましたでしょうか?」
モスキー様の顔を見ると、彼はニコニコとしながらわたしに近寄って来た。
「本当にかわいいね。名前を教えてよ。」
彼はわたしの顎を持ち上げて言った。
「私は男ですので、かわいいなどと…。」
そう言って距離を置こうとするが、モスキー様は離してくれない。
「僕の好みでね!名前はなんていうの?」
「……イゼアと申します…。」
「イゼアか…。美しい名前だね!」
モスキー様の手がわたしの頭に近づいて来た。
突然くる嫌悪感に身を縮こまらせた時だった。
「…何してる?」
低い声がしたかと思うとわたしの前にアロン様の背中が見えた。
彼の登場に心底安心してる自分がいた。
「モスキー…人の家のものに手を出すなんて失礼だぞ。」
アロン様が不機嫌も隠さずに問いただすと、モスキー様は悪びれる様子もなく言った。
「君の執事があまりにも可愛くてね。…そうだ!アロン、君の執事をぼくにくれないか?」
「…………。」
モスキー様の発言に、わたしは驚きで目を見開いたまま動けなかったが、ふと横を見るとモスキー様を睨むアロン様がいた。
彼は何を考えているのだろうか…わたしの忠誠を疑われてしまったのか…。
そんなことを考えていると、アロン様は言った。
「お断りだ。モスキー、君が変な態度をとるなら僕も黙ってないよ。」
アロン様の威勢に、モスキー様は少し慄くと、またにこりと笑って言った。
「アロン、君と争うつもりはない。今日はこの件は忘れることにする。悪かったね、僕は退散するよ。」
そういうと、モスキー様は去っていった。
モスキー様の帰りを見送らねばと、仕事柄動こうとした時だった。
「行かなくていい。」
振り返ると、アロン様はわたしを見つめていた。
「モスキー、久しぶりだな。」
「アロンも変わりないな!」
目の前でアロン様と抱き合っている、男性は、アロン様のアカデミーでのご友人になる。
砕けた会話をするお二人を見ていると、モスキー様はわたしの方を見つめて来た。
粗相してはと頭を下げると、モスキー様はアロン様に言った。
「かわいい、執事だな。」
「………そうか?」
少しの沈黙の後、アロン様は返事をする。
なんだか変な空気感を感じつつも、アロン様の部屋にご案内し、お茶を入れ退室した。
その間も彼からの視線に気まずく、お茶を溢しそうになった。
あれから食堂の手伝いを終えて、廊下を歩いていると何やらキョロキョロとしているモスキー様がいた。
「モスキー様、どうなさいましたか?」
「あぁ!かわいい執事ちゃん、君を探していたんだ!」
「私を…?何か粗相をしましたでしょうか?」
モスキー様の顔を見ると、彼はニコニコとしながらわたしに近寄って来た。
「本当にかわいいね。名前を教えてよ。」
彼はわたしの顎を持ち上げて言った。
「私は男ですので、かわいいなどと…。」
そう言って距離を置こうとするが、モスキー様は離してくれない。
「僕の好みでね!名前はなんていうの?」
「……イゼアと申します…。」
「イゼアか…。美しい名前だね!」
モスキー様の手がわたしの頭に近づいて来た。
突然くる嫌悪感に身を縮こまらせた時だった。
「…何してる?」
低い声がしたかと思うとわたしの前にアロン様の背中が見えた。
彼の登場に心底安心してる自分がいた。
「モスキー…人の家のものに手を出すなんて失礼だぞ。」
アロン様が不機嫌も隠さずに問いただすと、モスキー様は悪びれる様子もなく言った。
「君の執事があまりにも可愛くてね。…そうだ!アロン、君の執事をぼくにくれないか?」
「…………。」
モスキー様の発言に、わたしは驚きで目を見開いたまま動けなかったが、ふと横を見るとモスキー様を睨むアロン様がいた。
彼は何を考えているのだろうか…わたしの忠誠を疑われてしまったのか…。
そんなことを考えていると、アロン様は言った。
「お断りだ。モスキー、君が変な態度をとるなら僕も黙ってないよ。」
アロン様の威勢に、モスキー様は少し慄くと、またにこりと笑って言った。
「アロン、君と争うつもりはない。今日はこの件は忘れることにする。悪かったね、僕は退散するよ。」
そういうと、モスキー様は去っていった。
モスキー様の帰りを見送らねばと、仕事柄動こうとした時だった。
「行かなくていい。」
振り返ると、アロン様はわたしを見つめていた。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
記憶喪失になったら、義兄に溺愛されました。
せいめ
恋愛
婚約者の不貞現場を見た私は、ショックを受けて前世の記憶を思い出す。
そうだ!私は日本のアラサー社畜だった。
前世の記憶が戻って思うのは、こんな婚約者要らないよね!浮気症は治らないだろうし、家族ともそこまで仲良くないから、こんな家にいる必要もないよね。
そうだ!家を出よう。
しかし、二階から逃げようとした私は失敗し、バルコニーから落ちてしまう。
目覚めた私は、今世の記憶がない!あれ?何を悩んでいたんだっけ?何かしようとしていた?
豪華な部屋に沢山のメイド達。そして、カッコいいお兄様。
金持ちの家に生まれて、美少女だなんてラッキー!ふふっ!今世では楽しい人生を送るぞー!
しかし。…婚約者がいたの?しかも、全く愛されてなくて、相手にもされてなかったの?
えっ?私が記憶喪失になった理由?お兄様教えてー!
ご都合主義です。内容も緩いです。
誤字脱字お許しください。
義兄の話が多いです。
閑話も多いです。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
シャンパンをかけられたら、御曹司の溺愛がはじまりました
入海月子
恋愛
一花はフラワーデザイナーだ。
仕事をドタキャンされたところを藤河エステートの御曹司の颯斗に助けられる。彼はストーカー的な女性に狙われていて、その対策として、恋人のふりを持ちかけてきた。
恋人のふりのはずなのに、颯斗は甘くて惹かれる気持ちが止まらない。
それなのに――。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
箱入り令嬢と秘蜜の遊戯 -無垢な令嬢は王太子の溺愛で甘く蕩ける-
瀬月 ゆな
恋愛
「二人だけの秘密だよ」
伯爵家令嬢フィオレンツィアは、二歳年上の婚約者である王太子アドルフォードを子供の頃から「お兄様」と呼んで慕っている。
大人たちには秘密で口づけを交わし、素肌を曝し、まだ身体の交わりこそはないけれど身も心も離れられなくなって行く。
だけどせっかく社交界へのデビューを果たしたのに、アドルフォードはフィオレンツィアが夜会に出ることにあまり良い顔をしない。
そうして、従姉の振りをして一人こっそりと列席した夜会で、他の令嬢と親しそうに接するアドルフォードを見てしまい――。
「君の身体は誰のものなのか散々教え込んだつもりでいたけれど、まだ躾けが足りなかったかな」
第14回恋愛小説大賞にエントリーしています。
もしも気に入って下さったなら応援投票して下さると嬉しいです!
表紙には灰梅由雪様(https://twitter.com/haiumeyoshiyuki)が描いて下さったイラストを使用させていただいております。
☆エピソード完結型の連載として公開していた同タイトルの作品を元に、一つの話に再構築したものです。
完全に独立した全く別の話になっていますので、こちらだけでもお楽しみいただけると思います。
サブタイトルの後に「☆」マークがついている話にはR18描写が含まれますが、挿入シーン自体は最後の方にしかありません。
「★」マークがついている話はヒーロー視点です。
「ムーンライトノベルズ」様でも公開しています。
男装魔法使い、女性恐怖症の公爵令息様の治療係に任命される
百門一新
恋愛
男装姿で旅をしていたエリザは、長期滞在してしまった異国の王都で【赤い魔法使い(男)】と呼ばれることに。職業は完全に誤解なのだが、そのせいで女性恐怖症の公爵令息の治療係に……!?「待って。私、女なんですけども」しかも公爵令息の騎士様、なぜかものすごい懐いてきて…!?
男装の魔法使い(職業誤解)×女性が大の苦手のはずなのに、ロックオンして攻めに転じたらぐいぐいいく騎士様!?
※小説家になろう様、ベリーズカフェ様、カクヨム様にも掲載しています。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる