3 / 52
3
しおりを挟む
「……リーフです…。」
我ながら葉っぱの様な名前をつけてしまった。
しかしこの名前なら自分の髪色を見て思い出せるだろうと判断しての事だった。
「リーフか…可愛い名前だ。僕はアロンだ。よろしく…。」
「はい…。」
これで最後にしたいものだ…。
それからアロン様はたくさんの話を聞かしてくれた。
いつも思う事だが、アロン様は女性の扱いが上手いと思う。
こんなふうに優しく耳を傾けて、綺麗な瞳で見つめられれば誰でも恋するだろうと考えている。
「リーフ、君はどこからきたの?」
考え事をしていて気づかなかった。
どこと言われて困ってしまった。
少し自分の夢を混ぜて語ろうと、口を開いた。
「…ここよりもとても遠いところに住んでいるんです。ここには親戚が暮らしてて今お世話になっています。」
「へぇ…そうか…。」
アロン様は前を向いて、風に身を任せている。
内心バレないかと気が気じゃなくて、冷や汗をかいてしまう。
「長く付き合わせて悪かったね。そろそろ休もうか、君の家は?送っていくよ。」
わたしは慌てて言った。
「いえっ…‼︎内緒でここにきてしまったので、一人で帰ります。」
「でも淑女を一人にするわけには…。」
「本当に大丈夫ですから‼︎」
必死になるわたしにアロン様は、わかったと言って、屋敷の外まで見送ってくれた。
私はアロン様が屋敷に入った事を確認すると、急いで使用人専用の裏口に入り、自室に戻った。
部屋に戻って一安心した。
正直生きた心地がせず、わたしはドレスのままベッドへと入り眠りについたのだった。
あれからアロン様にバレることはなかった。
そのことに一安心しつつ、屋敷の仕事に勤めた。
変わった事といえば、アロン様がニヤニヤと気が緩む顔が目立った。
その理由を聞くと、後々嫌な予感がしてわたしは素知らぬ顔をすることにしたのだった。
そして今、私はアロン様が出席される王都の会議に同行している。
馬車に相席させてもらいながら、静かに座っていると、突然アロン様は話し出した。
「イゼア、僕はどうやら恋をした様だ…。」
頬を赤くして話すアロン様に私は耳を傾けた。
「誰か気に入った令嬢を見つけられたんですか?」
そういうと、嬉しそうにアロン様は頷いた。
「夏の若葉を思い出させる様な子だよ。」
私はアロン様がうっとりとする表情に、長年の親友の様な気持ちで耳を傾けていた。
「本当に恋をされてるんですね。私にはまだその兆しはありません。」
「君もいつかわかる日が来るよ。」
そう言ってアロン様は馬車の窓を見つめている。
我ながら葉っぱの様な名前をつけてしまった。
しかしこの名前なら自分の髪色を見て思い出せるだろうと判断しての事だった。
「リーフか…可愛い名前だ。僕はアロンだ。よろしく…。」
「はい…。」
これで最後にしたいものだ…。
それからアロン様はたくさんの話を聞かしてくれた。
いつも思う事だが、アロン様は女性の扱いが上手いと思う。
こんなふうに優しく耳を傾けて、綺麗な瞳で見つめられれば誰でも恋するだろうと考えている。
「リーフ、君はどこからきたの?」
考え事をしていて気づかなかった。
どこと言われて困ってしまった。
少し自分の夢を混ぜて語ろうと、口を開いた。
「…ここよりもとても遠いところに住んでいるんです。ここには親戚が暮らしてて今お世話になっています。」
「へぇ…そうか…。」
アロン様は前を向いて、風に身を任せている。
内心バレないかと気が気じゃなくて、冷や汗をかいてしまう。
「長く付き合わせて悪かったね。そろそろ休もうか、君の家は?送っていくよ。」
わたしは慌てて言った。
「いえっ…‼︎内緒でここにきてしまったので、一人で帰ります。」
「でも淑女を一人にするわけには…。」
「本当に大丈夫ですから‼︎」
必死になるわたしにアロン様は、わかったと言って、屋敷の外まで見送ってくれた。
私はアロン様が屋敷に入った事を確認すると、急いで使用人専用の裏口に入り、自室に戻った。
部屋に戻って一安心した。
正直生きた心地がせず、わたしはドレスのままベッドへと入り眠りについたのだった。
あれからアロン様にバレることはなかった。
そのことに一安心しつつ、屋敷の仕事に勤めた。
変わった事といえば、アロン様がニヤニヤと気が緩む顔が目立った。
その理由を聞くと、後々嫌な予感がしてわたしは素知らぬ顔をすることにしたのだった。
そして今、私はアロン様が出席される王都の会議に同行している。
馬車に相席させてもらいながら、静かに座っていると、突然アロン様は話し出した。
「イゼア、僕はどうやら恋をした様だ…。」
頬を赤くして話すアロン様に私は耳を傾けた。
「誰か気に入った令嬢を見つけられたんですか?」
そういうと、嬉しそうにアロン様は頷いた。
「夏の若葉を思い出させる様な子だよ。」
私はアロン様がうっとりとする表情に、長年の親友の様な気持ちで耳を傾けていた。
「本当に恋をされてるんですね。私にはまだその兆しはありません。」
「君もいつかわかる日が来るよ。」
そう言ってアロン様は馬車の窓を見つめている。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
大嫌いな次期騎士団長に嫁いだら、激しすぎる初夜が待っていました
扇 レンナ
恋愛
旧題:宿敵だと思っていた男に溺愛されて、毎日のように求められているんですが!?
*こちらは【明石 唯加】名義のアカウントで掲載していたものです。書籍化にあたり、こちらに転載しております。また、こちらのアカウントに転載することに関しては担当編集さまから許可をいただいておりますので、問題ありません。
――
ウィテカー王国の西の辺境を守る二つの伯爵家、コナハン家とフォレスター家は長年に渡りいがみ合ってきた。
そんな現状に焦りを抱いた王家は、二つの伯爵家に和解を求め、王命での結婚を命じる。
その結果、フォレスター伯爵家の長女メアリーはコナハン伯爵家に嫁入りすることが決まった。
結婚相手はコナハン家の長男シリル。クールに見える外見と辺境騎士団の次期団長という肩書きから女性人気がとても高い男性。
が、メアリーはそんなシリルが実は大嫌い。
彼はクールなのではなく、大層傲慢なだけ。それを知っているからだ。
しかし、王命には逆らえない。そのため、メアリーは渋々シリルの元に嫁ぐことに。
どうせ愛し愛されるような素敵な関係にはなれるわけがない。
そう考えるメアリーを他所に、シリルは初夜からメアリーを強く求めてくる。
――もしかして、これは嫌がらせ?
メアリーはシリルの態度をそう受け取り、頑なに彼を拒絶しようとするが――……。
「誰がお前に嫌がらせなんかするかよ」
どうやら、彼には全く別の思惑があるらしく……?
*WEB版表紙イラストはみどりのバクさまに有償にて描いていただいたものです。転載等は禁止です。
後宮の記録女官は真実を記す
悠井すみれ
キャラ文芸
【第7回キャラ文大賞参加作品です。お楽しみいただけましたら投票お願いいたします。】
中華後宮を舞台にしたライトな謎解きものです。全16話。
「──嫌、でございます」
男装の女官・碧燿《へきよう》は、皇帝・藍熾《らんし》の命令を即座に断った。
彼女は後宮の記録を司る彤史《とうし》。何ものにも屈さず真実を記すのが務めだというのに、藍熾はこともあろうに彼女に妃の夜伽の記録を偽れと命じたのだ。職務に忠実に真実を求め、かつ権力者を嫌う碧燿。どこまでも傲慢に強引に我が意を通そうとする藍熾。相性最悪のふたりは反発し合うが──
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
王太子殿下の執着が怖いので、とりあえず寝ます。【完結】
霙アルカ。
恋愛
王太子殿下がところ構わず愛を囁いてくるので困ってます。
辞めてと言っても辞めてくれないので、とりあえず寝ます。
王太子アスランは愛しいルディリアナに執着し、彼女を部屋に閉じ込めるが、アスランには他の女がいて、ルディリアナの心は壊れていく。
8月4日
完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる