氷の艶やかな青年

はなおくら

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 真っ青な表情のハンナに、優越感に浸っている令嬢が嬉しそうに声を上げて笑った。

「これからは身の程を弁えてっ…きゃっ‼︎」

 言い終わる前に令嬢の肩にセジャは手を置いた。

 驚いた令嬢がセジャの方を振り向き、徐々に青い顔をし出した。

「あの…セジャ様…?」

「私の名前を呼ばないでいただこう。私は彼女を誰よりも愛してる。あなたの様な恥も知らず愚かな令嬢など、早いうちから断っていただろう。今回の件、こちらからあなたの父君に抗議文を出す。」

 その瞬間、真っ青な顔をした令嬢が、涙を浮かべてセジャを見ていた。

「あなたの顔は二度と見たくない。目の前から消えてくれ。」

 最後凄んで吐き捨てた言葉に、令嬢はいてもたってもいられなくなった様子で会場を去っていった。

 その様子を見届けたセジャは、頭からぬれてしまった、ハンナの頭をサッと拭き、使用人に大きな布を持って来させると、頭から被せた。

「ありがとう…。」

 お礼を言うハンナにセジャは、笑って頷き横抱きにして、その場で一礼して会場を去っていった。

 その後、この話はラブロマンスと噂が噂を呼びセジャとハンナの名前が知られるようになったのだった。

 使用人に客室へと通されて、セジャはハンナを椅子に座らせた。

「すまなかった…怖い思いをさせてしまったね。」

 セジャはハンナの両手を握りしめて、申し訳なさそうな顔を浮かべていた。

「いいえ…私の方こそごめんなさい。あなたに迷惑をかけてしまったわ。」

「そんなことない。君は立派だった、よく頑張ったね…僕は誇らしいよ。」

 セジャはハンナのおでこにキスをした。

 ハンナは、セジャの柔らかい唇を感じながら瞳を閉じた。

 正直、大勢の前で糾弾されるのは、かなりのものがあった。

 しかしセジャはいつも自分の味方でいてくれることが嬉しかった。

「ありがとう。」

 その時、使用人からお風呂の準備が出来たことを聞き、ハンナは立ち上がった。

 するとセジャはハンナを止めて、バスルームにいる使用人に自分たちですると伝えて退室させた。

「セジャ様?」

「今日は2人で入ろう。」

 セジャのブルーの瞳に射抜かれて恥ずかしくなった。

「そんなっ…!手間をかけられないわ!」

 そう言ってハンナが強引に、セジャの横をすり抜けようとしたが、セジャは横抱きにしてバスルームへと入った。

「……。」

 恥ずかしくてしばらく黙っていると、バスルームに下ろされた。

 自分で脱ごうとすると、また手を掴まれて止められてしまう。

 ハンナを後ろに向かせてドレスの紐を解いていく。

 その音が響き、ハンナは恥ずかしさに体を震わせた。
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