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1話 マジファンタジー
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3年前のある日、世界に5人しか居ないSSSの冒険者の一人が失踪した。
その冒険者はある日突然現れ、そしてある日突然消え、ギルドや国民ひいては国や世界までが何事かと震撼させた。
そもそも、その冒険者は性別不詳、出身、年齢、スキルなどそれらを知る者は居なく、捜索も困難を極めた。
ある者はその冒険者を神の使者だとか、ある者は竜神の怒りを買い冥府に連れ去られたのだとか根も葉もない噂を垂れ流したがその真相は闇の中。本人のみぞ知る。
ただ、その本人は____
「あー、なんかお腹減った」
この調子である。
######
SSS冒険者で名を馳せたローイズ・ウィリアンこと紫藤玲奈(しどうれいな)は、当時15歳のうら若き少女だった。
異世界転移した理由はテスト期間中の過度な睡眠不足による風呂で寝落ちが原因。まぬけである。
本人はわりとマイペースで楽観的で言動や内心はとてもうるさいが、それを人前で表情や感情が出にくい性格だった。本当にとてもうるさいが。
それからというものの目を開けてみれば知らない森にただ一人。
暫く思考が追い付かずボーッとしていると急に下腹部の痛みが来てようやく現実を受け止めることができた。
だが実にタイミングの悪いことに、それは月の障りで自身の血で下着や身に付けているものを汚してしまい焦る思考とは裏腹に心はどこか浮き足立っていて「これはアレだな、世に言うファンタジー的なやつじゃん!!」と、ノリノリで行く当てもなく少女は歩きはじめた。
元来楽観的で大雑把な性格から「まぁ、なんとかなるでしょ」くらいにしか思っていたのが運の尽き。
普通に考えれば分かりそうなものだが、元々が現代日本に生きる少女が突然知らない場所へ身一つで放り出されて山や森の常識など知る由もない。
血の匂いや跡を残して歩いていればそれは獲物に格好の餌食だと知らせていることにも気付かずに彼女は歩き続けた。
そこに迫り来る恐怖も知らずに____
######
彼女はそれからと言うものの何度も野生の見たことのないような動物や化け物のような様相をした生物に襲われたり、森の中で迷ったり崖から落ちそうになったりと、生きるために必死に死に物狂いで逃げ、そして戦った。
幸いだったのが途中本気で死にそうになったとき、ダメ元で獲物に向かって火球(ファイヤーボール)を放つイメージをしたらいつまで経っても来るべく痛みか来ずに不思議に思って目を開けたら全てが灰になったあとだった。
彼女はここで「あっ、私魔法使えんの? マジファンタジー」と能天気なことを考え、その後も「想像したもので下着とか作れないかなぁ~」と適当に呟いたら作るというより下着が空から振ってきたとき彼女は「そうだけど、そうじゃねぇんだよ……」と思いながらも下着自体はありがたかったのできっちり使用させて貰った。
そのあと、耳元でピコンッと軽い音が鳴り目の前にうっすらとした文字が浮かび上がりよく読んでみると【ギフトの使用回数が10▶️8になりました】と書かれていた。
なんのことだか分からず頭を捻らせているとまたピコンッと音が鳴って【各種特殊魔法全般と衣類生成能力が使用可能となりました 使用してみますか?】と表示され、「なるほど!」っとようやく理解した様子だった。
ギフトの使用回数というのは自分に付与できる能力などのことかと納得し、一つ疑問に思ったことをダメ元で尋ねてみた。
「この表示自体はギフトに入ってないの?」
ピコンッ ポロロンッ ポンッ!
可愛らしい軽い音が耳元で響く。
【こちらは紫藤玲奈の転移特典となっており、レベル10で完全解放となっております】
思いの外ちゃんと受け答えしてくれることに安堵し、次の質問に移った。
「じゃあ、いまの私のレベルは? というか転移特典って……やっぱりここって異世界な感じ?」
ピコンッ ポロンッ ポポンッ!
【現在の紫藤玲奈のレベルは13 この世界はマーヴェルク 現在地はシャオルグ国の南西森アクポの森です】
「そっかー、ならもう帰れない感じなのかなぁ というか出口どこ? ずっと歩いてるしお腹痛いし」
ピコンッ ピピピ ピコポンッ!
【異の狭間が混じり合うのは数百年に一度です 出口はマップに表示効果を付け加えました 痛覚無効又は製薬生成のギフトを付け加えますか?】
「マジかぁ、パパ悲しませちゃうかな……マップはギフトじゃないの? んー、痛覚無効ってなんか怖いから製薬生成にしようかな」
ピコンッ ピルルンッ ピポンッ!
【紫藤玲奈は元の世界では現在浴槽内溺水により死亡を確認 現在仮通夜を行っております マップは本人特有の固有スキルです 確認しますか?】
「んー、あとでかな? というかマジで死んだのかよ……死んだのに転移って笑える」
ピコンッ
【製薬生成のギフトを取得しました ギフト使用回数が8▶️7になりました】
「おー! マジ助かる~! とりま生理痛の薬を……わっ」
想像したら透き通った水色の液体がどこからともなく現れた。
「これ水で飲まなくてオッケーかな? ……女は度胸、一気だ!!」
勢いよく彼女はその液体を喉奥に流し込んだ。元々喉が渇いていたのもあり、躊躇無く飲み込むと思いの外薬らしい苦味はなく、どちらかと言うとハーブのような、独特なスッキリした香りと清涼感があった。
「まずくはないけど、なんか不思議な味 お腹の調子ももういいし……効き目すごくね?」
表示機能が反応することはなかったが、とりあえず動けるようにはなったので先に進むことにした。
「ん? まって、わたし風呂で死んだはずなのに服は着てなかったか? ……これも転移特典とか?」
まぁ、いっか!
彼女の思考はそれで終わったが、実際その通りなので特に突っ込むこともせず表示機能はそのまま閉口した。
その冒険者はある日突然現れ、そしてある日突然消え、ギルドや国民ひいては国や世界までが何事かと震撼させた。
そもそも、その冒険者は性別不詳、出身、年齢、スキルなどそれらを知る者は居なく、捜索も困難を極めた。
ある者はその冒険者を神の使者だとか、ある者は竜神の怒りを買い冥府に連れ去られたのだとか根も葉もない噂を垂れ流したがその真相は闇の中。本人のみぞ知る。
ただ、その本人は____
「あー、なんかお腹減った」
この調子である。
######
SSS冒険者で名を馳せたローイズ・ウィリアンこと紫藤玲奈(しどうれいな)は、当時15歳のうら若き少女だった。
異世界転移した理由はテスト期間中の過度な睡眠不足による風呂で寝落ちが原因。まぬけである。
本人はわりとマイペースで楽観的で言動や内心はとてもうるさいが、それを人前で表情や感情が出にくい性格だった。本当にとてもうるさいが。
それからというものの目を開けてみれば知らない森にただ一人。
暫く思考が追い付かずボーッとしていると急に下腹部の痛みが来てようやく現実を受け止めることができた。
だが実にタイミングの悪いことに、それは月の障りで自身の血で下着や身に付けているものを汚してしまい焦る思考とは裏腹に心はどこか浮き足立っていて「これはアレだな、世に言うファンタジー的なやつじゃん!!」と、ノリノリで行く当てもなく少女は歩きはじめた。
元来楽観的で大雑把な性格から「まぁ、なんとかなるでしょ」くらいにしか思っていたのが運の尽き。
普通に考えれば分かりそうなものだが、元々が現代日本に生きる少女が突然知らない場所へ身一つで放り出されて山や森の常識など知る由もない。
血の匂いや跡を残して歩いていればそれは獲物に格好の餌食だと知らせていることにも気付かずに彼女は歩き続けた。
そこに迫り来る恐怖も知らずに____
######
彼女はそれからと言うものの何度も野生の見たことのないような動物や化け物のような様相をした生物に襲われたり、森の中で迷ったり崖から落ちそうになったりと、生きるために必死に死に物狂いで逃げ、そして戦った。
幸いだったのが途中本気で死にそうになったとき、ダメ元で獲物に向かって火球(ファイヤーボール)を放つイメージをしたらいつまで経っても来るべく痛みか来ずに不思議に思って目を開けたら全てが灰になったあとだった。
彼女はここで「あっ、私魔法使えんの? マジファンタジー」と能天気なことを考え、その後も「想像したもので下着とか作れないかなぁ~」と適当に呟いたら作るというより下着が空から振ってきたとき彼女は「そうだけど、そうじゃねぇんだよ……」と思いながらも下着自体はありがたかったのできっちり使用させて貰った。
そのあと、耳元でピコンッと軽い音が鳴り目の前にうっすらとした文字が浮かび上がりよく読んでみると【ギフトの使用回数が10▶️8になりました】と書かれていた。
なんのことだか分からず頭を捻らせているとまたピコンッと音が鳴って【各種特殊魔法全般と衣類生成能力が使用可能となりました 使用してみますか?】と表示され、「なるほど!」っとようやく理解した様子だった。
ギフトの使用回数というのは自分に付与できる能力などのことかと納得し、一つ疑問に思ったことをダメ元で尋ねてみた。
「この表示自体はギフトに入ってないの?」
ピコンッ ポロロンッ ポンッ!
可愛らしい軽い音が耳元で響く。
【こちらは紫藤玲奈の転移特典となっており、レベル10で完全解放となっております】
思いの外ちゃんと受け答えしてくれることに安堵し、次の質問に移った。
「じゃあ、いまの私のレベルは? というか転移特典って……やっぱりここって異世界な感じ?」
ピコンッ ポロンッ ポポンッ!
【現在の紫藤玲奈のレベルは13 この世界はマーヴェルク 現在地はシャオルグ国の南西森アクポの森です】
「そっかー、ならもう帰れない感じなのかなぁ というか出口どこ? ずっと歩いてるしお腹痛いし」
ピコンッ ピピピ ピコポンッ!
【異の狭間が混じり合うのは数百年に一度です 出口はマップに表示効果を付け加えました 痛覚無効又は製薬生成のギフトを付け加えますか?】
「マジかぁ、パパ悲しませちゃうかな……マップはギフトじゃないの? んー、痛覚無効ってなんか怖いから製薬生成にしようかな」
ピコンッ ピルルンッ ピポンッ!
【紫藤玲奈は元の世界では現在浴槽内溺水により死亡を確認 現在仮通夜を行っております マップは本人特有の固有スキルです 確認しますか?】
「んー、あとでかな? というかマジで死んだのかよ……死んだのに転移って笑える」
ピコンッ
【製薬生成のギフトを取得しました ギフト使用回数が8▶️7になりました】
「おー! マジ助かる~! とりま生理痛の薬を……わっ」
想像したら透き通った水色の液体がどこからともなく現れた。
「これ水で飲まなくてオッケーかな? ……女は度胸、一気だ!!」
勢いよく彼女はその液体を喉奥に流し込んだ。元々喉が渇いていたのもあり、躊躇無く飲み込むと思いの外薬らしい苦味はなく、どちらかと言うとハーブのような、独特なスッキリした香りと清涼感があった。
「まずくはないけど、なんか不思議な味 お腹の調子ももういいし……効き目すごくね?」
表示機能が反応することはなかったが、とりあえず動けるようにはなったので先に進むことにした。
「ん? まって、わたし風呂で死んだはずなのに服は着てなかったか? ……これも転移特典とか?」
まぁ、いっか!
彼女の思考はそれで終わったが、実際その通りなので特に突っ込むこともせず表示機能はそのまま閉口した。
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