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第3話
しおりを挟む私が湊さんの浮気を疑うようになったのは今から二週間前のこと。
「あ、湊さん、スマホ鳴ってるよ」
電話が何度かかって止まり、メッセージが表示された。
"今日は楽しかった。また会おうね"
七海さん…って誰?
「彩花?どうかした?」
湊さんの声が私の耳に届く。
私は一瞬、心臓が止まるような感覚に襲われた。
「あ、湊さん、電話鳴ってたよ」
私はできるだけ平静を装って答えた。
「誰から…あ、。教えてくれてありがとう」
湊さんはその名前を見ると、少し驚いた様子でスマホを手に取り、そそくさと自分の部屋に向かった。
湊さんの背中を見送りながら、私は胸の中に不安が広がっていくのを感じた。
七海さんって誰?
どうして湊さんにそんなメッセージを送ってくるの?
聞きたいけど、聞けなかった。
その夜、私は眠れずにベッドの中で考え込んでいた。
湊さんは本当に浮気しているのだろうか?
それとも、
ただの友達なのか?
疑念が頭を離れない。
翌朝、家事をしながらも心ここにあらずだった。
湊さんが出勤する前に話しかけようと何度も思ったけど、結局言い出せなかった。
どうしても勇気が出ない。
私の予感が当たってしまったら、立ち直れそうにないから。
湊さんが出勤した後、私は一人でリビングに座り込み、ため息をついた。
どうしても聞き出せない自分に苛立ちを感じながらも、湊さんの言葉を信じたい気持ちと疑念が交錯していた。
その時、ふとあのことを思い出した。
それは、湊さんが記憶喪失だった時のこと、
一緒に行ったお洋服のお店の店員さんが
"ドレスの他にもワンピースなどもご購入されるんです。彩花様が普段お洋服を買う時間が無いから代わりに買ってあげるんだと仰っていました"
そんなことを言っていた。
だけど、私はワンピースを貰った記憶なんて無い。
他に好きな人がいて、その人にあげてるんだとしたら…
表面上、仕方なく私に送るていで選んでるけど、もしかしたら本命は別に…
それなら腑に落ちる。
そっか、私二番目なんだ。
その考えが頭を離れず、私はますます不安になった。
いや、まだそうと決まったわけじゃない。私の勘違いの可能性だって、
本当のことを聞かないと。
聞かないとって思うんだけど、どうしても聞けない。
どうしても湊さんに直接聞く勇気が出ない。
もし本当に浮気しているなら、私の心はどうなってしまうのだろう。
次の日も、その次の日も、私は同じように過ごしていた。
湊さんは何も気づかず、いつも通りの会話を続けていた。
だけど、湊さんとの距離は少しずつ広がっていくように感じた。
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