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絆の花

第39話:疑惑の矢

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 そう言ったのは、ドレスが破られた日、犯人は私だって陰口を言っていた子だった。

 私はその言葉に驚き、立ち尽くした。

「ちょっと美月になんてこと言うのよ!」

 歩乃華が何も言えない私の代わりに怒ってくれた。

「ドレスの件の時から思ってたけど、全部あんたが仕組んだことじゃないの」

 その言葉に、私は心臓が締め付けられそうな思いだった。

「だから、私はそんなことしてないよ」

 私は必死に反論した。

 あの時、分かって貰えたと思ったのに。

「そうよ!どうして美月がそんなことするのよ!劇の練習一番頑張ってたのは美月なんだよ!?」

 歩乃華…。

 歩乃華の言葉に、私は少し救われた気がした。

「だからだよ」

 その冷たい言葉に、私は再び不安に襲われた。

「だから?」

 私は不安な気持ちで尋ねた。

「一番練習を頑張っておけば、自分は犯人だって思われないだろうって魂胆なのよ」

 そんな風に思われてたなんて。

 私は、そんなために練習を頑張ってたわけじゃないのに。

 私はただ、みんなのために…。

 涙が溢れそうになった。

「あんたどれだけひねくれてるわけ!?」

 歩乃華が再び怒りを露わにした。

「犯人探しを頑なにしようとしないのも、自分が犯人だってバレたくないから。悲劇のヒロインを演じて、その癖に犯人のことを庇えば自分の株が上がるって思ったんだよ」

 全部、全部間違ってる。

「私が犯人探しをしようとしなかったのは、せっかく文化祭のおかげで仲良くなったのに、それが台無しになる方が嫌だったから」

 どうしたら分かってもらえるだろうか。

 私だけが我慢すれば終わる話。

 犯人探しをすることで、みんなの仲が崩れる方がいやだから。

「美月は自分が犠牲になっても、他の人が喜ぶならそれでいいって思う子なのよ!そんな子がこんな悪質なことするわけないでしょ!?」

 歩乃華も説得しようとしてくれた。

「さぁ、どうだか」

 その冷たい言葉に、私は心が折れそうになった。

「あんたねぇ!」

 歩乃華がさらに声を荒げた。

「ねぇ、」

 今までずっと黙って聞いていた蒼大が口を開いた。

「な、何よ」

 彼女の声には苛立ちが滲んでいた。

「あの時、俺が言ったこともう忘れたの」

「は?あの時?なんの事だかさっぱり」

 彼女は困惑した様子だった。

「次、理由もなく美月のこと傷つけようとしたら許さない。そう言ったはずだけど」

「理由なら今言った通りだけど」

 彼女の声は冷たかった。

「美月が犯人だって証拠あんの?ないよな?美月は犯人じゃないからな」

 私の大切な人達が私のことを信じてくれる。
 それで十分だった。

「…ないけど、私は勝手に黒だと思っとく」


 その言葉に、私はもう何かを言う気力すらなくなって、ただ立ち尽くすしかなかった。

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