8 / 20
第八話
しおりを挟む
ミチキが試合に出場している最中、トオルは水族館の土産コーナーに侵入していた。
防犯カメラに写らないよう、死角を取りながら、ある場所へと向かう。
「えーと…… あった!」
手にしたのは、人魚姫の化粧水。
人間が使ってもただの化粧水だが、これを水中に住む生き物にかければ、3分間だけ人間になれるという代物である。
(いくら手足があっても、それが短かったらブレークダンスは無理だ。 苦肉の策だが、使うしかねー)
化粧水を手に取ると、トオルはペンギンブースへと急いだ。
「はあっ、はあっ……」
トオルが息を切らしながら、得点の表記されているディスプレイを見やる。
そこには、PERFECT、の文字。
「エクセレント! 素晴らしいぜ、ミチキ。 まさか満点を出しちまうとはな。 もう、後続のダンスを見る必要は無くなった」
「ま、待ってくださいよ!」
ハットをかぶったゴエモンが、歩み寄る。
「この日のために、マ〇ケル・ジャクソンのスムース・クリミナルを習得したってのに……」
スムース・クリミナルとは、ギャング風の格好をしてダンスを踊る、マ〇ケル・ジャクソンの代表作で、その中の、ゼログラビティという技は誰しも一度は聞いたことがあるだろう。
「俺だって、一夜漬けでフォークソングを練習したんだぞ!」
ティムはなぜかギターを抱えて、ダンスバトルに参加していた。
友恵がはあっ、とため息を吐く。
「おめーら、何も分かってねーな。 これはダンスでも、ラップでも、ギターのバトルでもねーんだよ」
「……?」
みな、キョトンとした表情になる。
友恵がおもむろにミチキに近づく。
そして、手にしていた虫取り網をかぶせた。
「うぐ!?」
「ダンスの踊れるペンギンなんて、高額で取引されると思わねーか? 私、実は海賊の末裔で、飼育員は仮の姿なんだわ」
みな、何が起きたのかさっぱり理解できない。
友恵がミチキを小脇に挟んで外に出ようとした、その時だった。
奥の暗がりから、何者かが現れた。
「……」
タキシード姿に身を包んだ、人間の男が立っている。
男は、口を開いた。
「……全部聞いた。 ここは、通さねーよ」
「その声…… 逃げたのかと思ったぜ。 トオル」
防犯カメラに写らないよう、死角を取りながら、ある場所へと向かう。
「えーと…… あった!」
手にしたのは、人魚姫の化粧水。
人間が使ってもただの化粧水だが、これを水中に住む生き物にかければ、3分間だけ人間になれるという代物である。
(いくら手足があっても、それが短かったらブレークダンスは無理だ。 苦肉の策だが、使うしかねー)
化粧水を手に取ると、トオルはペンギンブースへと急いだ。
「はあっ、はあっ……」
トオルが息を切らしながら、得点の表記されているディスプレイを見やる。
そこには、PERFECT、の文字。
「エクセレント! 素晴らしいぜ、ミチキ。 まさか満点を出しちまうとはな。 もう、後続のダンスを見る必要は無くなった」
「ま、待ってくださいよ!」
ハットをかぶったゴエモンが、歩み寄る。
「この日のために、マ〇ケル・ジャクソンのスムース・クリミナルを習得したってのに……」
スムース・クリミナルとは、ギャング風の格好をしてダンスを踊る、マ〇ケル・ジャクソンの代表作で、その中の、ゼログラビティという技は誰しも一度は聞いたことがあるだろう。
「俺だって、一夜漬けでフォークソングを練習したんだぞ!」
ティムはなぜかギターを抱えて、ダンスバトルに参加していた。
友恵がはあっ、とため息を吐く。
「おめーら、何も分かってねーな。 これはダンスでも、ラップでも、ギターのバトルでもねーんだよ」
「……?」
みな、キョトンとした表情になる。
友恵がおもむろにミチキに近づく。
そして、手にしていた虫取り網をかぶせた。
「うぐ!?」
「ダンスの踊れるペンギンなんて、高額で取引されると思わねーか? 私、実は海賊の末裔で、飼育員は仮の姿なんだわ」
みな、何が起きたのかさっぱり理解できない。
友恵がミチキを小脇に挟んで外に出ようとした、その時だった。
奥の暗がりから、何者かが現れた。
「……」
タキシード姿に身を包んだ、人間の男が立っている。
男は、口を開いた。
「……全部聞いた。 ここは、通さねーよ」
「その声…… 逃げたのかと思ったぜ。 トオル」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
猫が作る魚料理
楓洋輔
ライト文芸
猫人間のモモ子は魚料理が大得意。ほっこりした日常を描くレシピ小説です。
香織(32歳)はモモ子と一軒家で同居している。モモ子は、二足歩行で言葉を喋る、人間と同じくらいの大きさの猫だ。猫だけに、いつもぐうたらと怠けているモモ子だが、魚が好きで、魚料理が大得意。魚料理は下ごしらえなどが面倒なので、怠け者のモモ子は手間のかからない、お手軽だけど絶品な魚料理のレシピを次々と披露する。そのレシピは、普段料理をしない人でも簡単にできてしまうようなものばかり。同じく同居人の誠也(22歳)と共に、仕事や恋に悩みながらも、香織はモモ子の魚料理を堪能していく。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
死神、はじめました!
Tale
ライト文芸
ここは人間と死神、そして罪人<ギルト>が存在する世界。
ある日、人間である主人公、藪坂透<やぶさか とおる>は罪人に行き遭い、襲われる。
半身を切断され万事休すかと思われたが、そこで現れたのは。
「大丈夫?寒くない?」
赤くて紅い瞳をした死神、秋弩川紅葉<ときのがわ くれは>であった。
そして紅葉に失った半身を再生して貰うが、その代償として透は人間でありながら死神として罪人を裁く、死神見習いという存在になる。
透は、果たして無事に死神見習いとして罪人を裁くことが出来るのか。
これは、本物の死神になるまでの物語。
ブラック企業勤めの俺、全部が嫌になり山奥のシェアハウスに行く
丸焦ししゃも
ライト文芸
朝の4時に起きて、夜の11時に帰る。
ブラック企業勤めの 鈴木 春斗 (すずき はると)はある日、そんな生活に耐えられずに逃げ出した!
逃げ場所は、ネットで見つけた山奥の限界集落にあるシェアハウスだった。
誰も自分を知らないところで、大自然に囲まれ、川の音を聞きながら癒される……はずだった。
こいつがくるまでは。
「すいませーん、鈴木 春斗ってこちらに来てますかー?」
こいつの名前は佐藤 陽葵(さとう ひまり)。
近所で一緒に育った幼馴染だった。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる