25 / 82
-2
しおりを挟む
次の日、ランの熱は無事下がった。
「たいしたことなくて良かった」
「心配性すぎるよレクスは」
「だって、風邪を引いて死にかけたって言ってたから」
「それはボロ屋で寝泊まりしてたからこじらせたんだ」
ランとレクスはいつものように朝食を取っていた。
「ま、とにかく良かった。まだ病み上がりなんだからいきなり無理するな」
「うん」
他にもなにか言いたげなレクスに、ランは苦笑する。まるで子供にするように過保護なのは、ランが細くて華奢なせいもあるだろう。
「ロランドさんも今日一日はまだ大人しくしてろってさ」
「そうしてくれ。さ、そろそろ俺はいくから」
「うん、じゃあいってらっしゃい」
「ああ」
レクスが出かけたのを見送って、ランはとりあえず自室に戻った。
「って言っても、することないな。散歩でもするか」
ランは念の為上着を着て、庭に出た。秋の終わりの庭は花も少なくて少しもの悲しい。
「落ち葉が気になる」
結局ランはほうきを片手に、中庭を掃除し始めた。
「ふう……キリ無いな」
小一時間ほどそうしていたが、落ち葉はあとからあとから降り注いでくる。ある程度集めたところでランは手を止める。
そこに、声をかける者がいた。アレンだ。
「やあ子猫ちゃん」
「その呼び方やめてください。オレはランです」
「ランね」
「何かレクスに用でも? 今出かけてますよ」
ランはいつかと同じ様に唐突に現われたアレンに、そう答えた。
「いや、あいつに用はない。君が庭にいるのが見えたから声をかけただけだ」
「そうですか」
「どうだ、あいつに困らされてはいないか?」
「そ、そんなことはないです」
強いて言えば過保護すぎて困るというくらいか。
「一体……何が言いたいのですか?」
「レクスはいつか良い家のアルファと番って、子を成すだろう。その時に君はきっと泣かされるだろうと思ってね」
ランは唇をぎゅっと結んだ。わかってる、元からそうだとランにはわかっているのに改めて他人から指摘されるのは辛かった。
「残念ですが、オレとレクスはそういう関係じゃないので」
「そうなのかい?」
「ええ。オレ達は『友人』関係です」
「へぇ……」
アレンはそう言うと、上から下に舐めるようにランを見た。
「ちょっと君の雰囲気が変わったように見えたからもしやと思ったのに」
「え……?」
「じゃあ、私の勘違いということか……」
アレンはもったいぶった言い方をした。そうして動揺するランの反応を楽しんでいるように見える。
ランはそんなアレンに苛立ちを覚えて、彼を睨み付けた。
「あんた、なんなんだ」
「……私はレクスと君が心配なだけだよ。じゃあね」
アレンはへらへらした笑みを顔に貼り付けて、庭を立ち去った。
「……」
ランは一人、庭に取り残されて俯く。
「そんなの言われなくてもわかってる……」
このまま側にいればきっと傷つく時がくる。それでも、ランはレクスの側を離れがたかった。
「たいしたことなくて良かった」
「心配性すぎるよレクスは」
「だって、風邪を引いて死にかけたって言ってたから」
「それはボロ屋で寝泊まりしてたからこじらせたんだ」
ランとレクスはいつものように朝食を取っていた。
「ま、とにかく良かった。まだ病み上がりなんだからいきなり無理するな」
「うん」
他にもなにか言いたげなレクスに、ランは苦笑する。まるで子供にするように過保護なのは、ランが細くて華奢なせいもあるだろう。
「ロランドさんも今日一日はまだ大人しくしてろってさ」
「そうしてくれ。さ、そろそろ俺はいくから」
「うん、じゃあいってらっしゃい」
「ああ」
レクスが出かけたのを見送って、ランはとりあえず自室に戻った。
「って言っても、することないな。散歩でもするか」
ランは念の為上着を着て、庭に出た。秋の終わりの庭は花も少なくて少しもの悲しい。
「落ち葉が気になる」
結局ランはほうきを片手に、中庭を掃除し始めた。
「ふう……キリ無いな」
小一時間ほどそうしていたが、落ち葉はあとからあとから降り注いでくる。ある程度集めたところでランは手を止める。
そこに、声をかける者がいた。アレンだ。
「やあ子猫ちゃん」
「その呼び方やめてください。オレはランです」
「ランね」
「何かレクスに用でも? 今出かけてますよ」
ランはいつかと同じ様に唐突に現われたアレンに、そう答えた。
「いや、あいつに用はない。君が庭にいるのが見えたから声をかけただけだ」
「そうですか」
「どうだ、あいつに困らされてはいないか?」
「そ、そんなことはないです」
強いて言えば過保護すぎて困るというくらいか。
「一体……何が言いたいのですか?」
「レクスはいつか良い家のアルファと番って、子を成すだろう。その時に君はきっと泣かされるだろうと思ってね」
ランは唇をぎゅっと結んだ。わかってる、元からそうだとランにはわかっているのに改めて他人から指摘されるのは辛かった。
「残念ですが、オレとレクスはそういう関係じゃないので」
「そうなのかい?」
「ええ。オレ達は『友人』関係です」
「へぇ……」
アレンはそう言うと、上から下に舐めるようにランを見た。
「ちょっと君の雰囲気が変わったように見えたからもしやと思ったのに」
「え……?」
「じゃあ、私の勘違いということか……」
アレンはもったいぶった言い方をした。そうして動揺するランの反応を楽しんでいるように見える。
ランはそんなアレンに苛立ちを覚えて、彼を睨み付けた。
「あんた、なんなんだ」
「……私はレクスと君が心配なだけだよ。じゃあね」
アレンはへらへらした笑みを顔に貼り付けて、庭を立ち去った。
「……」
ランは一人、庭に取り残されて俯く。
「そんなの言われなくてもわかってる……」
このまま側にいればきっと傷つく時がくる。それでも、ランはレクスの側を離れがたかった。
4
お気に入りに追加
2,216
あなたにおすすめの小説
BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました
厘/りん
BL
ナルン王国の下町に暮らす ルカ。
この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。
ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。
国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。
☆英雄騎士 現在28歳
ルカ 現在18歳
☆第11回BL小説大賞 21位
皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。
虐げられ聖女(男)なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました【本編完結】(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
出来損ないのオメガは貴公子アルファに愛され尽くす エデンの王子様
冬之ゆたんぽ
BL
旧題:エデンの王子様~ぼろぼろアルファを救ったら、貴公子に成長して求愛してくる~
二次性徴が始まり、オメガと判定されたら収容される、全寮制学園型施設『エデン』。そこで全校のオメガたちを虜にした〝王子様〟キャラクターであるレオンは、卒業後のダンスパーティーで至上のアルファに見初められる。「踊ってください、私の王子様」と言って跪くアルファに、レオンは全てを悟る。〝この美丈夫は立派な見た目と違い、王子様を求めるお姫様志望なのだ〟と。それが、初恋の女の子――誤認識であり実際は少年――の成長した姿だと知らずに。
■受けが誤解したまま進んでいきますが、攻めの中身は普通にアルファです。
■表情の薄い黒騎士アルファ(攻め)×ハンサム王子様オメガ(受け)
転生するにしても、これは無いだろ! ~死ぬ間際に読んでいた小説の悪役に転生しましたが、自分を殺すはずの最強主人公が逃がしてくれません~
槿 資紀
BL
駅のホームでネット小説を読んでいたところ、不慮の事故で電車に撥ねられ、死んでしまった平凡な男子高校生。しかし、二度と目覚めるはずのなかった彼は、死ぬ直前まで読んでいた小説に登場する悪役として再び目覚める。このままでは、自分のことを憎む最強主人公に殺されてしまうため、何とか逃げ出そうとするのだが、当の最強主人公の態度は、小説とはどこか違って――――。
最強スパダリ主人公×薄幸悪役転生者
R‐18展開は今のところ予定しておりません。ご了承ください。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします。……やっぱり狙われちゃう感じ?
み馬
BL
※ 完結しました。お読みくださった方々、誠にありがとうございました!
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、とある加護を受けた8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、下ネタあり。出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
螺旋の中の欠片
琴葉
BL
※オメガバース設定注意!男性妊娠出産等出て来ます※親の借金から人買いに売られてしまったオメガの澪。売られた先は大きな屋敷で、しかも年下の子供アルファ。澪は彼の愛人か愛玩具になるために売られて来たのだが…。同じ時間を共有するにつれ、澪にはある感情が芽生えていく。★6月より毎週金曜更新予定(予定外更新有り)★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる