上 下
21 / 82

8話 余暇

しおりを挟む
「んー……あ、そっか。今日はここに泊まったんだっけ」

 翌朝、目を覚ましたランは、木陰に揺れる朝日に目を覚ました。

 窓を開けると、新鮮な空気が部屋に流れ込んでくる。ランが緑の風景に見とれていると、部屋のドアが叩かれた。

「ラン、起きてるか」
「レクス?」

 ランは慌ててドアを開いた。

「おはよう。早いね」
「うん、昨日遠乗りに行くっていったろ」
「あっ、そっか。ちょっと待って、すぐに着替えるから」

 ランは急いで身支度を済ませて食堂に行き、レクスと簡単にパンとミルクで朝食をすませて馬小屋に向かった。

「どうどう。今日はよろしくね」
「ブルル」

 白い馬のゾフィはランの頬にその鼻先をすりつける。

「よし、ラン行こう」
「うん!」

 二人は馬に跨がり、屋敷を出た。

「わぁ、気持ち良い」

 晩秋の朝の風が、ランの黒髪を揺らす。

「ラン、あそこの木まで競走しよう」
「いいよ!」

 ランとレクスは手綱を握り治すと、馬の腹を蹴った。駆け出す馬にリズムを合わせて二人は馬と一体になる。

「やったー! 勝った」
「負けた……」

 勝負は僅差でランの勝ちだった。

「ふう、ちょっと休憩」
「ああ」

 二人は馬を下りて、木の下に寝転ぶ。

「ラン、上手いな」
「オレの方が体重軽いからね」

 ランはそう言いつつも得意気な顔を隠さなかった。そんなランに、レクスは半身を起こしてその鼻をつまんだ。

「腹立つ顔だ」
「へへへ……」

 ふざけてそう言うレクスに、ランはへらへらと笑って見せながら、身を起こして持ってきた水筒の水を飲んだ。

「ふう。乗馬楽しい。ありがとうレクス」
「いや……また来ような」
「うん」

 少し休憩を挟んで、二人はまた馬に乗り駆け回った。

「そろそろ昼だ」
「戻ろう」

 ランとレクスは踵を返して、屋敷への道へ戻った。

「おーい、お二人とも」
「あ、ロランドさんだ」
「昼食をお持ちしました」

 屋敷の側まで来ると、バスケットを持ったロランドがこっちに向かって手を振っていた。

「ちょうどいい。外で昼食を取ろう」
「うん」

 ランとレクスは馬を置いて庭の東屋に向かい、そこで昼食をとった。

「ピクニックみたいだ」
「ああ。そういえば昔行ったな」
「うん、一回だけだけど」

 ランはレクスを連れて兄弟たちとピクニックに行ったのを思い出した。

「あのあとレクスは風邪を引いて大騒ぎになったんだよね」
「そうそう」
「それがこんなに大きくなるとはなぁ」

 ランは華奢だったレクスの子供時代を振り返った。レクスはそんなランを見て嫌そうに顔をしかめた。

「どうせ俺は可愛くないよ」
「まぁまぁ。丈夫になってなによりだよ」

 ランはふてくされたレクスの顔を見て苦笑した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

BLR15【完結】ある日指輪を拾ったら、国を救った英雄の強面騎士団長と一緒に暮らすことになりました

厘/りん
BL
 ナルン王国の下町に暮らす ルカ。 この国は一部の人だけに使える魔法が神様から贈られる。ルカはその一人で武器や防具、アクセサリーに『加護』を付けて売って生活をしていた。 ある日、配達の為に下町を歩いていたら指輪が落ちていた。見覚えのある指輪だったので届けに行くと…。 国を救った英雄(強面の可愛い物好き)と出生に秘密ありの痩せた青年のお話。 ☆英雄騎士 現在28歳    ルカ 現在18歳 ☆第11回BL小説大賞 21位   皆様のおかげで、奨励賞をいただきました。ありがとう御座いました。    

螺旋の中の欠片

琴葉
BL
※オメガバース設定注意!男性妊娠出産等出て来ます※親の借金から人買いに売られてしまったオメガの澪。売られた先は大きな屋敷で、しかも年下の子供アルファ。澪は彼の愛人か愛玩具になるために売られて来たのだが…。同じ時間を共有するにつれ、澪にはある感情が芽生えていく。★6月より毎週金曜更新予定(予定外更新有り)★

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

甘い毒の寵愛

柚杏
BL
 小さな田舎町の奴隷の少年、シアンは赤い髪をしていた。やたらと目立つためシアンには厄介な色だった。  ある日、シアンは見知らぬ男に説明もされずに馬車に乗せられ王族の住まう王宮へと連れてこられた。  身なりを綺麗にされ案内された部屋には金色の髪に紺碧色の瞳をした青年がいた。それはこの国の第三王子、ノアだった。 食事に毒を盛られて蝕まれている王子と、元奴隷で毒を中和する体液を持つ赤髪の少年の物語。

無慈悲な悪魔の騎士団長に迫られて困ってます!〜下っ端騎士団員(男爵令嬢)クビの危機!〜

楠ノ木雫
恋愛
 朝目が覚めたら、自分の隣に知らない男が寝ていた。  テレシアは、男爵令嬢でありつつも騎士団員の道を選び日々精進していた。ある日先輩方と城下町でお酒を飲みべろんべろんになって帰ってきた次の日、ベッドに一糸まとわぬ姿の自分と知らない男性が横たわっていた。朝の鍛錬の時間が迫っていたため眠っていた男性を放置して鍛錬場に向かったのだが、ちらりと見えた男性の服の一枚。それ、もしかして超エリート騎士団である近衛騎士団の制服……!? ※他の投稿サイトにも掲載しています。

【R18】番解消された傷物Ωの愛し方【完結】

海林檎
BL
 強姦により無理やりうなじを噛まれ番にされたにもかかわらず勝手に解消されたΩは地獄の苦しみを一生味わうようになる。  誰かと番になる事はできず、フェロモンを出す事も叶わず、発情期も一人で過ごさなければならない。  唯一、番になれるのは運命の番となるαのみだが、見つけられる確率なんてゼロに近い。  それでもその夢物語を信じる者は多いだろう。 そうでなければ 「死んだ方がマシだ····」  そんな事を考えながら歩いていたら突然ある男に話しかけられ···· 「これを運命って思ってもいいんじゃない?」 そんな都合のいい事があっていいのだろうかと、少年は男の言葉を素直に受け入れられないでいた。 ※すみません長さ的に短編ではなく中編です

ひとりぼっち獣人が最強貴族に拾われる話

かし子
BL
貴族が絶対的な力を持つ世界で、平民以下の「獣人」として生きていた子。友達は路地裏で拾った虎のぬいぐるみだけ。人に見つかればすぐに殺されてしまうから日々隠れながら生きる獣人はある夜、貴族に拾われる。 「やっと見つけた。」 サクッと読める王道物語です。 (今のところBL未満) よければぜひ! 【12/9まで毎日更新】→12/10まで延長

処理中です...