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「なにもかもやらせてごめんなさい、ロランドさん」
「いえいえ、いつものことですから」

 厨房でお湯を沸かすロランドに、ランは頭を下げた。

「それよりレクス様が活動的になってくれて嬉しいです。これもランさんのおかげですね」
「へへへ、そうですかね」
「ええ。以前は別宅で余暇を過ごそうなんて言い出さなかったですから」

 ロランドは薄く微笑みながらお茶を用意する。

「はい、ではこれを持って行ってください。その間に荷物を部屋に入れておきます」
「ありがとうございます」

 ランはティーセットを持って居間に向かった。

「レクス、お茶だよ」
「ああ、ありがとう」

 ランとレクスはソファに座ってお茶を堪能した。ロランドの淹れてくれたお茶はとても香り高い。

「ロランドさん、お茶淹れるのも上手だなぁ」
「あいつはなんでもよく出来る。俺が子供の頃から家にいるんだ」
「そうなんだ」

 てっきりロランドは王城勤務だと思っていたが、レクスの家の者だったらしい。どうりでロランドには心を開いているはずだ、とランは納得した。

「じゃあロランドさんは可愛い可愛いレクスの子供時代を知ってるんだ」
「悪かったな、ごつくなってしまって」
「あははは。オレわからなかったもん」
「ランはすぐわかった。もう少し育て」

 レクスはクッキーをランの口にねじ込んだ。

「むぐ……あのねぇ、オレはレクスと同じ位食べてるんだけど……」
「背丈は仕方ないにしても肉がまったくつかないじゃないか」
「それは体質なんじゃない?」

 レクスは過保護すぎる、とランは思った。

「それより馬見せてよ」
「ああ」

 ランはどうにもならない体型の話題から話を逸らした。

「家の裏の馬小屋にいってみよう」
「うん」

 二人は連れだって馬小屋に向かった。

「うわぁ。綺麗……」

 そこには黒と白の馬が二頭いた。

「黒い方がアドルフ、白いのはゾフィというらしい」
「こんにちは」
「どっちもおとなして賢いってさ」

 ランが挨拶すると、白いゾフィという馬が顔を寄せてきた。

「かわいいね」
「ああ、乗ってみようか」

 レクスは馬丁を呼ぶと、アドルフとゾフィに鞍をつけさせた。

「よしよし、どーどー」
「ラン、こっちに行ってみよう」
「待って!」

 先にアドルフに跨がったレクスが巧みに手綱を操る。ランは慌ててゾフィに跨がった。

「はいっ」

 ランはゾフィに乗ってレクスを追いかけた。

「いい子だね。初対面なのに」
「そうだな」

 そのままゆっくりと屋敷の周りを一周してランとレクスは馬を下りた。

「明日は遠乗りに行こうか」
「いいね」

 馬を厩舎に戻して、空を見るともう日が陰りはじめていた。
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