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20 アリシアとの対話①

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 商品と食料品の仕入れ契約を業者と結び、手持ちのホーリー金貨の一部をイースティアで使えるようにドラクム銀貨に両替し終えるまでには、丸三日かかった。
 二日目の時点で、すべての仕入先の候補から見積もりを取り終え、どの業者からどの品目を仕入れるのかは決まっていたのだが、商会支部で勅諭状を受け取るまでは、契約を結ぶわけにはいかなかった。万が一、なんらかの理由で勅諭状が発行がされなかった場合、業者との間に莫大な違約金が発生してしまうからだ。
 三日目の朝に商会支部へ向かったところ、勅諭状は無事発行されていた。結果的に取り越し苦労となったわけではあるが、半日待つだけで違約金のリスクがなくなるのなら、対価としては安すぎるくらいだろう。

 その間、アリシアとの会話はほとんどなかった。
 宿での夕食の際に毎日顔を合わせてはいたのだが、普段は特に気にせずとも出てくるような軽い雑談が生じず、重い雰囲気の中で食卓を囲んでいた。見兼ねたザリアードやヴァヴィリアから、私とアリシアの会話を促すような話題が提供されたこともあったが、それに対しアリシアは一言返すだけで、会話のキャッチボールを拒否していた。
 ただ、あくまでも彼女が拒否していたのは雑談だけで、仕事に関する会話には快く応じてくれた。具体的には、船上でドラゴンを呼び出す手筈の確認や、船での部屋割りに関する確認の際は、以前と同じように話すことができた。
 一通りの仕入れを終え、後は業者が私の買い付けたものを集めるのを待つばかりとなった今、このままではアリシアと次に話すのは、三日後、船に乗り込む際になってしまうだろう。
 この気まずい関係のまま船で過ごしたのは避けたかった私は、どうにかしてアリシアに話を聞いてもらおうと決意し、夕食の席に着いた。
 しかし、口火を切ったのはアリシアだった。

「明日、二人で話がしたいんですけど、時間ありますか?」

 席に着いてすぐ、アリシアはそう切り出した。
 私と同じ問題意識を、アリシアも持っていたらしい。

「明日から二日間は、一日暇してますよ」

「なら、明日の朝八時に、この前に入ったカフェで待っています」

 あえてこの場で話そうとしないのは、ヴァヴィリアとザリアードには聞かれたくない話をするつもりなのだろう。

「わかりました」

 それっきり、この夕食中に会話が発生することはなかった。
 この無言の責任は私にあると感じていたので、同席していたヴァヴィリアとザリアードには、後日何かお詫びの品を渡したいと思う。
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