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第17話 伝える言葉
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自宅に着いて、ドアの鍵を開ける。母親にこっぴどく叱られる覚悟をしながら、ドアノブを静かに回す。カチャリ、と開いたドアの向こう側から、母親の声がした。
「ひかりちゃん、遅かったのね。心配したわよ。遅くなるならLINEぐらい入れなさいね」
母親は、怒ってはいなかった。だが、こちらから連絡をしないのに連絡をしてこようとはしなかったのは、何故だろう?
「ラムールで偶然お友達とでも会ったのかしら?」母親はまた早とちりの勘違いだ。
「う、うん……盲学校の頃の友達と会ったから、話し込んじゃった」母親の勘違いをいいことに、私は小さな嘘をついた。
「夕飯の写真を撮ってひかりちゃんに送ろうとしたのよ。でも、ひかりちゃんには……」言葉を選ぼうとする母親。
「お母さん。ツールがあれば私にも見えるんだよ。今度こういうことがあったら、写真送って? ちゃんと連絡するから」
母親の言う『見える』と、私の言う『見える』は、何から何まで違っているだろう。だけど、母親が私のことを気遣って連絡をしてこなかったのだということがわかって少し安心したので、私は母親を気遣ってそう言った。
***
今日も、父親の帰りは遅くなるようだった。私が障害者年金をもらい始めたのだから、ダブルワークなんか、やめてしまえばいいのに。私と会いたくないのだろうか。私と向き合いたくないのだろうか。
そんなことを考えていると、玄関で父親の声がした。酔っ払っているようだ。そうか、今日は金曜日だから、外で飲んで帰ってきたのか。
***
金曜日。彼の夜の配信がある日。
アミタニさんにどんどん惹かれている私は、悩みながらもやはり、いつものツイキャスの枠に行くことにした。
そういえば、母親はキャス主の彼の顔を見ているかもしれない。彼の配信は、ラジオではなく顔出しの配信だ。どんな顔なのかと母親に尋ねてみたところで、私には何一つ理解できそうにない。だが、勇気を出して訊いてみた。
「動画の彼? 真面目そうで優しそうな、細身の美青年よ」言葉を選ぶ母の気遣いが、痛い。
「ひかりちゃん、遅かったのね。心配したわよ。遅くなるならLINEぐらい入れなさいね」
母親は、怒ってはいなかった。だが、こちらから連絡をしないのに連絡をしてこようとはしなかったのは、何故だろう?
「ラムールで偶然お友達とでも会ったのかしら?」母親はまた早とちりの勘違いだ。
「う、うん……盲学校の頃の友達と会ったから、話し込んじゃった」母親の勘違いをいいことに、私は小さな嘘をついた。
「夕飯の写真を撮ってひかりちゃんに送ろうとしたのよ。でも、ひかりちゃんには……」言葉を選ぼうとする母親。
「お母さん。ツールがあれば私にも見えるんだよ。今度こういうことがあったら、写真送って? ちゃんと連絡するから」
母親の言う『見える』と、私の言う『見える』は、何から何まで違っているだろう。だけど、母親が私のことを気遣って連絡をしてこなかったのだということがわかって少し安心したので、私は母親を気遣ってそう言った。
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今日も、父親の帰りは遅くなるようだった。私が障害者年金をもらい始めたのだから、ダブルワークなんか、やめてしまえばいいのに。私と会いたくないのだろうか。私と向き合いたくないのだろうか。
そんなことを考えていると、玄関で父親の声がした。酔っ払っているようだ。そうか、今日は金曜日だから、外で飲んで帰ってきたのか。
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金曜日。彼の夜の配信がある日。
アミタニさんにどんどん惹かれている私は、悩みながらもやはり、いつものツイキャスの枠に行くことにした。
そういえば、母親はキャス主の彼の顔を見ているかもしれない。彼の配信は、ラジオではなく顔出しの配信だ。どんな顔なのかと母親に尋ねてみたところで、私には何一つ理解できそうにない。だが、勇気を出して訊いてみた。
「動画の彼? 真面目そうで優しそうな、細身の美青年よ」言葉を選ぶ母の気遣いが、痛い。
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