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第5話 雨の中での出会い
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私はあれからもずっと、町内を白杖で歩く練習を続けていた。母親は最初は驚いていたが、それでも私が着ている服の色を毎日教えてくれていた。「その服ならこの帽子はどう? 紺色のニット帽よ」などと説明を付けてくれるようにもなった。
私なりにオシャレをして駅前までを徘徊するだけの日々だったが、気持ちはとてもウキウキしていた。今日はどこに行こうかな、と、今までツイキャスの枠を選んでいたときのような気持ちになれていた。
オフラインにも楽しいセカイがあることに気付き始めていた。
***
家から15分ほど歩いたところで、突然雨が降り始めた。しまった、『今日は雨予報だ』と彼が言っていたのに、どうして私は傘を持っていないのだろう。そもそも傘を売っているところがどこにあるのかすらわからない。
――初めて、勇気を出して、白杖を高く掲げてみた。
土砂降りの雨に打たれながら白杖を掲げている私に声をかける者はいない――と諦めてずぶ濡れのまま家に戻ろうとした瞬間、優しい声が聞こえた。
「すみません。間違っていたら申し訳ないのですが、なにかお困りでいらっしゃいますか?」
「えっ……あ、はい。困っているときはこうするって私は知ってるんですけど……誰も知らないのか見て見ぬ振りなのか、ずっとこうしてて……」
「もっと啓蒙しないといけないね。とりあえず、寒いだろうから喫茶店で休もうか。僕の傘に入って、もしイヤじゃなければ僕の肩に手を当てて歩けるかな?」
「あっ……ありがとうございます。じゃあ遠慮なくお願いします」
***
好みの声の人との相合い傘。すごく恥ずかしい。私のニット帽はぐしょぐしょに濡れてしまっているし、服もずぶ濡れなのに、一体この人はどういうつもりだろうか。喫茶店ではなく、どこか変なところに連れて行かれてしまう可能性だって――ないわけじゃない、と思う。
そんなことを考えながら終始無言で歩いていると、「ここからは屋根があるから傘をたたむよ。すぐ先に階段が2段あるけど、上がれるかな?」と声をかけてくれた。
とん、とん、と階段を2段上がると、自動ドアの開く音が聞こえ、スイーツの甘い香りがただよってきた。本当に喫茶店に連れてきてくれたんだな、と、思わず泣いてしまった。
私なりにオシャレをして駅前までを徘徊するだけの日々だったが、気持ちはとてもウキウキしていた。今日はどこに行こうかな、と、今までツイキャスの枠を選んでいたときのような気持ちになれていた。
オフラインにも楽しいセカイがあることに気付き始めていた。
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家から15分ほど歩いたところで、突然雨が降り始めた。しまった、『今日は雨予報だ』と彼が言っていたのに、どうして私は傘を持っていないのだろう。そもそも傘を売っているところがどこにあるのかすらわからない。
――初めて、勇気を出して、白杖を高く掲げてみた。
土砂降りの雨に打たれながら白杖を掲げている私に声をかける者はいない――と諦めてずぶ濡れのまま家に戻ろうとした瞬間、優しい声が聞こえた。
「すみません。間違っていたら申し訳ないのですが、なにかお困りでいらっしゃいますか?」
「えっ……あ、はい。困っているときはこうするって私は知ってるんですけど……誰も知らないのか見て見ぬ振りなのか、ずっとこうしてて……」
「もっと啓蒙しないといけないね。とりあえず、寒いだろうから喫茶店で休もうか。僕の傘に入って、もしイヤじゃなければ僕の肩に手を当てて歩けるかな?」
「あっ……ありがとうございます。じゃあ遠慮なくお願いします」
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そんなことを考えながら終始無言で歩いていると、「ここからは屋根があるから傘をたたむよ。すぐ先に階段が2段あるけど、上がれるかな?」と声をかけてくれた。
とん、とん、と階段を2段上がると、自動ドアの開く音が聞こえ、スイーツの甘い香りがただよってきた。本当に喫茶店に連れてきてくれたんだな、と、思わず泣いてしまった。
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